こんな本を読んだ!」カテゴリーアーカイブ

本を読むことはあまり得意じゃないのですが、頑張って読んでいます。
 
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【本】『ハードボイルド』フランク・ミラー&ジェフ・ダロウ

ストーリーがわかるようでわからない。
自分が人間だと思っていた男が実はロボットで、それを認めることができなくて大暴れする、といったところだろうか。
とにかくわかりにくい。

大友克洋氏、メビウス氏とも似ているが、描線に特徴があり、ミリペンで描写したかのごとく線に抜きがない。
抜きがないことと関係しているかもしれないが、効果線やスピード線の表現がない。
連続した絵を何枚も重ねることで動きを表現する。

表情や服を陰影でなくしわで表現、歯茎まできっちり描くところ、釋英勝氏の『ハッピーピープル』を彷彿とさせる。

圧倒的に魅力があるのは、細部まで描き込まれた一枚絵の破壊シーンだ。

ちゃんとカラリストがついているのに、塗り方が雑で選択範囲がずれていたり、全体的に中間色で補色関係の配色が多くて気持ち悪い雰囲気になっていることが残念。
もっとスタイリッシュにできたはずなのに。

【本】『まっすぐ天へ』的場健 金子隆一(監修)

国でなく民間で、宇宙エレベーター建設に懸ける男達を描いた漫画。
兄弟で宇宙を目指す点、宇宙兄弟に似ていると言えなくもないが、扱う題材がちょっとマイナーなのと抑え気味の演出が明暗を分けたのだろうか。
物語が半ばで終わっていることが非常に残念!

今までいろんな漫画を見てきたが、耳の中を描かない表現で描く作家を初めて見た。
描線でなくベタで陰影を表現する絵柄なので、光が強く照らすことによってコントラストが上がって耳の陰影は消えてしまうという解釈なのだろうか。
ほかの漫画も読んで確認してみよう。

前述のように陰影をベタで形をとって描く硬い絵柄なのに、漫画として動きがある。
相当デッサン力がないとできない。

【本】『RAINBOW―二舎六房の七人(1~3)』安部譲二 (原作) 柿崎正澄 (画)

昭和三〇年、少年院の同じ房「二舎六房」で出会った七人の少年が歩むことになる波瀾万丈の人生(の物語)。

絵が不思議。
描線の流し方が凄まじく達者なのにキャラクターの顔の描き方がデッサンでなく記号なので、『ドラえもん』に細かい陰影をつけたような、『ブラック・ジャック漫画秘話』を流麗にしたような、アンバランスな印象。

【本】『ヨルムンガンド(3~11:完結)』高橋慶太郎

武器商人にボディーガードとして雇われた元少年兵は、いろんなトラブルに巻き込まれながら成長していく。

絵が画面全体の面積のほんの一部だけピンポイントで詳細に描写されていて、その周囲には描かれていない空白が広がっている。
そのバランスが巧みなので、ストレスなく読み進めることができる。

物語も絵と同じように、細部をリアルに描きこんでいる情報と飛ばしている情報のギャップが激しい。
リアル過ぎるとリアリティラインが上がり物語作りが難しくなるが、抜きすぎるとリアリティラインが下がって途端に絵空事になる。
絵と同じく、タイトロープを渡るかのような優れたバランス感覚で、物語を最大限面白く演出している。

おそらく作者は、読者が脳内で補完する部分を計算する能力に長けているのだろう。

僕はこういうミリタリーものを普段読まないのだが、楽しみながら読むことができた。
普段読まないからこそかも知れないが。

【本】『拳闘暗黒伝セスタス(2~3)』技来静也

ローマ帝国、コロシアムで拳奴として戦う主人公が闘いながら成長していく……という話。

皇帝ネロと旅芸人、徒手格闘兵団訓練校のエピソード。

物語作りが安定してうまいことはもちろん、動きのある格闘シーンが抜群に達者。
特に、連続するコマ送り映像を一枚絵で見せる演出は、実際に動いている映像を観るかのようだ。

【本】『牙の旅商人(1~6)』七月鏡一 (原作) 梟 (画)

文明崩壊後とおぼしき世界で盗賊団に両親を殺された少年は、武器商人の娘に助けられ、一緒に旅をすることになる。

物語の構成が優等生的にクオリティが高い。
世界観がもう少しオリジナリティがあればなお僕好みなのだが、一般的には共有最大公約数的に共有しやすい世界観のほうがいいのかもしれない。
同じように絵の方も抜群の描画力なのだが、この作家固有の個性がそこにあるのかはわからない。逆に言うと、ここまで作家性がなく絵を上達させるモチベーションが僕には見当つかない。

たまたま高橋慶太郎『ヨルムンガンド』と平行して読んでいたのだが、どちらも世界観こそ違えど武器商人モノ。
武器商人ジャンルというものが存在する?

【本】『珈琲時間』豊田徹也

ゆるやかに共通する世界で進行するコーヒーに関する物語を集めた短篇集。

SFや日常モノ、ハードボイルドなど扱うテーマは広いが、『童夢』以前の大友克洋氏の作品のような……日常をのある瞬間を切り取った物語が多い印象。

前作『アンダーカレント』では女性キャラクターが女性に見えなくてはじめは混乱したものだが、今作では完全に安定していてむしろ女性キャラクターが魅力的で、幅広く細やかな描き分けがなされている。

あえて見せ場が淡白に演出されているのだろう、抑制の効いた表現から逆に鮮烈な印象を受ける。

【本】『夢から覚めたあの子とはきっと上手く喋れない』宮崎夏次系

SFと言ったらいいのかファンタジーといったらいいのかジャンル判別が難しい短篇集。
過剰なまでに情感豊かなことは確か。

自分の中でこの作家をどう捉えたらいいのか整理がつかない。
第一印象で湧き上がってきた感情は恐怖?

幼いころに読んだ怪奇漫画があまりにおぞましく手元に置けなくてもう二度と読めないようグルグル巻きに縛り土手に捨てに行った……この本を読んでいると、そんな忘れかけていた記憶と感情がよみがえる。

【本】『記憶の技法』吉野朔実

華蓮がパスポート手続きのため取り寄せた戸籍抄本には謎の記載があった。彼女は真偽を確かめるため、修学旅行と偽り福岡へ向かう。

ラストまで後ひと捻りあるかと思いきや、意外とストレートに終わる話だった。
まあ……そこで漫画『サイコドクター』のようなミステリ的などんでん返しがあったらテーマがぶれてしまうから、女性向け漫画としてはこれが正しいのだろう。
個人的には少しだけ拍子抜け。

【本】『ちーちゃんはちょっと足りない』阿部共実

ちょっと足りない女の子ちーちゃんと周辺で起こった小さな事件、連作短編から始まってゆるやかにひとつの物語に繋がっていく。

背筋から腰に冷たい柱が突き刺さり、そこから力が抜けていくような、鮮烈な印象を受ける。

自分の醜い心の動きを読まれてしまったような、居心地の悪さ、救われなさ、恥ずかしさ、いたたまれなさ、さまざまな感情がトラウマとともに身体中を駆け巡る。
個人的には古谷実『ヒミズ』と極めて似た読後感。

人の心を激しく揺さぶる力のある稀有な作品。

【本】『ブラックギャラクシー6』阿部共実

ブラックギャラクシーという正体不明のサークルに所属する六人の生徒が織りなす学園コメディ。

作者は徹底して人と人とのコミュニケーションの距離に(笑いであれ涙であれ)興味があるのだろう。
作品自体はギャグ漫画だが(コミニュケーションの難しさを扱った様々なバリエーション)、笑いそのものが自己目的化していない。

【本】『ゴーグル』豊田徹也

短篇集。

氏の長編『アンダーカレント』はあまりピンとこなかったのだが、短編はかなり僕のツボ。
独特の空気があって、ささくれだった物語であってもどこか清涼感が漂う。

表題作『ゴーグル』が物語として一番好み。『とんかつ』の女性キャラクターも新鮮。

【本】『ナサ』浦沢直樹

浦沢直樹氏の初期短篇集。

大友克洋氏、あるいは坂口尚氏、あるいはバンド・デシネ(フランスのコミック)の影響が見え隠れする。
『パイナップルARMY』やこの辺の絵柄の方が僕は今より好みなのだけれども。

デビュー作「Return」の達者なことと言ったら。
浦沢氏の高い漫画偏差値に驚く。

個人的には表題作「N・A・S・A/ナサ」が興味深い。
『下町ロケット』的なことを今から三〇年前に描いていたその先見性に乾杯!

【本】『度胸星(全4)』山田芳裕

人類初の火星探査隊から連絡が途切れた。
急遽、救出クルー編成のため宇宙飛行士が募られる。
三河度胸は父の遺志を次ぎ、候補生として応募するが……

めちゃくちゃ面白くて、さらに面白くなりそうだったのに、途中で唐突に打ち切られて物語は放り出される。
そのありさまは、テセラックによって火星に取り残されたままの隊員とイメージが重なる。

きっと、この現実世界と繋がった二次元空間で、隊員たちは連載再開を待ちながら今も漂い続けているのだろう。

【本】『ジュリエットの卵(全3)』吉野朔実

世にも美しい二卵性双生児の兄妹はいびつな愛で結ばれていた……

単行本の最後までページがまだあるのに、それぞれのキャラクターが一応の幸せを手に入れそうな展開に。
そうなってくると逆にいやな予感しかしない。
「こんな早い段階で幸せが成就したら後は転落するしかないやん……」

果たしてそのとおり、ページがあるぶんだけ中盤をピークにして物ごとがどんどん悪い方へ転がっていき悲劇的なラストにつながっていく。

もっとぎりぎりのページで幸せになったら、その段階で物語が完結したのに!

【本】『スリム美人の生活習慣をマネしたら 1年間で30キロ痩せました』わたなべぽん

タイトルまんまの内容。

具体的なダイエットのノウハウはこの本において、実はあまり意味がない。
生き方のパラダイムシフトを変えることによって継続的に太らない生活を送る、ということが主眼なのだ。

その太らない生活とは「女子らしさ」を追求すること。

近藤麻理恵『人生がときめく片づけの魔法』と同じ考え方。
ときめく生活(女子らしい生活)をするように心がけるとだらしのない生活から必然的に離脱する→スリム美人が日常になる。
だからそこに興味のない人はこの本を読んでも意味がない。

僕は女子力をつけるためできるかぎり頑張ることにした。

【本】『サイコドクター(全8)』亜樹直 (原作) 的場健 (画)

精神科医の主人公が心理分析を駆使して様々な事件やトラブルを解決する話。

精神科医が主人公なので、人間の内面を掘り下げていく文学的な要素がある内容なのかと思ったら、精神分析自体はさほど意味がなく、謎解きが物語の主眼だった。

そうなってくると『MMR』『サイコメトラーエイジ』『金田一少年の事件簿』とあまり構造が変わらない。

一巻ではベタまで使って描き込まれていた耳が徐々に描き込みが消えていって、二巻の第三話から耳の中が完全に真っ白になった。
(ただしカラー原稿は最後まで耳の描きこみあり)

【本】『人を惹きつける技術』小池一夫

「キャラクターの起てかた」について具体的な方法を指南している本。

僕は漫画家なのに、キャラクターという概念がよくわからない。
笑いや絵や物語にはフェティッシュな興味があるのだが、アイドルやキャラクターに執着したことがない。
フィギュアも買わないし、ポスターも貼らない。
RPGは人並みに好きなのである程度はキャラクターを理解しているつもりなのだが、RPGを構成する要素の中ではもっとも興味が薄いことも確か。

僕は今まで小池一夫氏の漫画をパラ見こそしたことあれキッチリと読んだことがなかったので、これを機にちゃんと勉強してみようと思う。

今更!

【本】『プラネテス(全4)』幸村誠

宇宙開発時代のあけぼの、地球の大気圏上でデブリ回収に携わっていた日本人ハチが人類初の木星探査隊の参加を目指す。

この漫画を初めて読んだとき、僕が何より驚いたのは、宇宙を舞台にしている物語なのにセンス・オブ・ワンダーがなかったこと。
宇宙飛行士が主人公なのにSFでないものが描かれる時代になったのか……と感慨深かった。
漫画でこれと類型のあるものがなかったので、大きなパラダイムシフトが始まっているのかも、と僕は思った。

もちろんその内容に説得力を与えるのは緻密な宇宙船/基地内部の描写だ。

そしてこの漫画以降、宇宙を舞台にしたSFでない作品がいろんな作家によって描かれることになる。

その先鞭をつけたという意味でもこの作品は重要だ。

最初は、キャラクターの目の位置が真ん中よりやや上で不安定に上がり下がりしていたが、後半は安定して真ん中になって、読んでいてホッとしたことも思い出す。

【本】『ST&RSースターズー(全5)』竹内良輔(原作) ミヨカワ将(画)

銀河からの呼び声に目覚めた子供たちは宇宙を目指す……

『宇宙兄弟』のような宇宙飛行士モノ(職業モノ)と思っていたのだが、三巻ぐらいから怪しくなってくる。

いつまで経っても地球で訓練ばかりしているだけだと少年誌的にはつまらないから舞台が宇宙に変わるのは理解できるにしても、火星探査船に乗りこんだ次の回には火星に到達してしまい(地上での過酷な訓練、試験の意味がなくなる)、その後はもうヤケクソなのか今どきSFとしてもありえない展開……期待していただけに残念。

原作者もこういう漫画を企画するわけだからそれなりにSFは知っているはず。
なのにどうしてこうなってしまったのか、真面目に聞いてみたい。

【本】『ふたつのスピカ(全16)』柳沼行

日本初の有人宇宙船「獅子号」の墜落した街で育った、「獅子号」と少なからぬ因縁をもった少女アスカは宇宙飛行士を目指す……

何年ぶりかの再読。
何度も何度も繰り返し泣いてしまう。

親子の関係、友達の関係が繰り返し描かれている。
恥の多い人生で、僕はこういうことを真っ正面から語る言葉を持ち合わせていない。
(作者の)この感性が眩しくて、僕は日光に照射された吸血鬼のように、どろどろの涙で崩れ落ちそうだ。

宇宙を目指す漫画なのに宇宙について具体的なことは何ひとつ描かれていない。
余分な要素を刈り取っている潔さが格好いい。

【本】『オンノジ』施川ユウキ

気が付くと少女ミヤコは、この世界と同じだが自分以外に誰もいない世界をさまよっているのだった……

ないことのアルアル。
少しずつ進行する事態。
……いろんな要素がある、ギャグという枠にはならないスリリングな思考実験。

SFをギャグでどう表現するか、というひとつの答え。

【本】『MOONLIGHT MILE(1~23)』太田垣康男

学生クライマー、吾郎とロストマンはエベレスト登頂の際、空に見た国際宇宙ステーション……そしてその先の月を目指す。

全巻通して読むと一貫した線で物語がつながっているとはいえないが、宇宙を舞台にした混沌を描いている、という意味では一貫して正しい。

僕の中で絵と物語は比例するもので(原作ものも含め)、物語が過剰になれば同じように絵が過剰になることも必然。
物語に負けないぐらいの混沌とした絵……これだけタッチの違う絵を混在させて成り立っていることがこの漫画のポテンシャルの深さをあらわしている。

漫画表現の新しい可能性。

【本】『脱デブ』岡田斗司夫

レコーディングダイエットの細かいコツを一〇〇の項目に分けて掲載……

示唆に富む記述も多いが、リバウンドしないことを本書でこれだけ強調しているのに、今現在の岡田氏が太っている映像を目の当たりにすると 全てが空々しい。

せめて一〇年、岡田氏がスマートさを保守できたらこのレコーディングダイエットは一過性のブームで終わらず定着したのに……ブームの火付け人がリバウンドしているということは根本的な解決法ではなかったということか。

体重を落とすためだけのダイエットは、ダイエットで儲ける人たちを肥やせるだけ。
遠回りになるけれども、ずっと死ぬまで持続できる「生活習慣」を考えなければ意味がないというわけか。