【本】『珈琲時間』豊田徹也

ゆるやかに共通する世界で進行するコーヒーに関する物語を集めた短篇集。

SFや日常モノ、ハードボイルドなど扱うテーマは広いが、『童夢』以前の大友克洋氏の作品のような……日常をのある瞬間を切り取った物語が多い印象。

前作『アンダーカレント』では女性キャラクターが女性に見えなくてはじめは混乱したものだが、今作では完全に安定していてむしろ女性キャラクターが魅力的で、幅広く細やかな描き分けがなされている。

あえて見せ場が淡白に演出されているのだろう、抑制の効いた表現から逆に鮮烈な印象を受ける。