五時四五分起床。
早起きして朝食を素早く作り、外出する用意。
一泊して青春18切符の残券で千葉を旅行する予定。
分単位のスケジュールを立て、準備万端の完璧なスタートで七時半家を出る。
……にも関わらず最寄り駅の改札前で青春18切符を家に忘れたことに気づき、取りに帰る。
完璧に立てた計画が初っ端から崩壊。
まず第一の目的地の土気駅に予定の三〇分遅れで到着、バスが来るまで二〇分以上あるので遅れた計画を少しでも取り戻すため、歩いて美術館へ向かう。
二五分ほどで到着。
写実絵画の登竜門 「ホキ美術館大賞」展を鑑賞。
僕もいつかは……と思っていたのだが応募資格を見ると四〇歳以下!
もう応募すらできない歳になっていたことにショックを受ける。
もう一人前の年齢なのにまだ何も為していない自分。
二時間ほどかけて鑑賞、また駅へ歩いて戻る途中、ラーメン屋に入る。
年配の男女が厨房に立っていているので夫婦でラーメン屋をやっているのかと思いきや、女性店員が仕事の出来ない男性店員をずっと叱っている。
あまり慣れない仕事をさせられているようだ。
僕が思っていたような……夫がラーメン屋の店主で妻がサポートする……風ではない。
怒られている男性店員は特に反省している様子もなく女性店員にタメ口で、バイトや新入りっぽくないふてぶてしさ。
女店長が仕切っていたラーメン屋にリストラした亭主が手伝いに来たのか、あるいは女店長の弟が手伝いに来たのか、いろいろ想像している。
土気駅に一三時過ぎ到着。
一時間半かけて今日の第二の目的地にして宿泊地の銚子へ移動。
初めて訪れた銚子の地は思ったより普通の、典型的な地方都市だった。
銚子電鉄のホームへ向かう。
二両編成の短い車両が僕が乗車してすぐ出発する。
自分の中の郷愁を刺激するような風景が車窓の向こうに広がっている。
一五時半頃、終点の外川駅に到着。
細い路地を降りた道の向こうに海が見える。
無性に嬉しくなって駆け下りていくと、海岸沿いの道に出る。
風が強い。
右手の海は夕日が反射して白金の輝き、手前の荒々しい形の磯に激しい波が繰り返し体当たり白飛沫が広がる。
しばらく道路を歩いていると、磯の側に降りる歩道を発見。
時折波飛沫が身体に降りかかるほど海に近い距離を歩く。
廃墟になった巨大ホテルの下を通り過ぎ、四〇分ほど歩くと犬吠埼とその上に聳える白い灯台が見えていくる。
僕が到着したのは一六時一〇分、残念ながら一六時ちょうどで灯台の入場は終了していた。
犬吠埼からさらに海沿いに北を目指して歩く。
砂浜を歩き、コンクリートの岸壁で波に触れてみる。
黄昏、いよいよ太陽が地平線に近づき周囲が橙色に染まった一七時過ぎ、宿に到着。
古い旅館、玄関の上の字が一文字抜け落ちている。
宿泊客は他にいない。一泊三〇〇〇円の安さだがサービスも値段並み。
荷物を置いて直ぐに夕食を食べに行くため出発。
最寄り駅「かみのけくろはえ」で電車を待っている途中、歩いていける距離によさそうな店があったので予定変更して歩いて向かう。
GoogleMapでは二〇分前後で到着する予定だったのだが、日が暮れて真っ暗になったのと慣れない土地なのと花粉症薬の副作用で眠くなってきたのとでいっこうに店に着かない。
狐のしわざかと思うぐらいなかなか着かない。
一時間近くてかけようやく到着。
僕の主観では無限に近い距離を歩いたような気持ちだった。
海鮮料理に舌鼓を打つっていると、それに合わせて地の底からゴロゴロ……という不吉な音がする
店から外を窺うと、有名人の記者会見のように稲妻が光り大音響、土砂降りで道路が川のようになっている。
雨をやり過ごすため、出来るかぎり時間をかけて食事していると花粉症薬の副作用で朦朧として今にも意識を失いそうだ。
二〇時半に店を出ると、銚子に到着したときの春の暖かさはすっかり消え失せ雨で濡れた路面から冷気が放射されている。口から白い息が出る。
震えながら銚子電鉄の最寄り駅へ向かう。
地平線の彼方で通り過ぎた雷が不気味に光っている。
最終電車の銚子電鉄に乗って移動、かみのけくろはえ駅で下車。
街灯が少ない田舎の暗い夜道を急ぐ。
進行方向、宿の近くの海の上で黄褐色に輝く稲妻。
世界の終わりみたいだ。
二一時過ぎ宿に到着、
わびしい風呂に入る。
冷暖房はお金を入れなければつかない。
一〇〇円を投入してはじめて暖かくなる部屋。
読書していると眠くなってきて二三時過ぎ就寝。
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