こんな本を読んだ!」カテゴリーアーカイブ

本を読むことはあまり得意じゃないのですが、頑張って読んでいます。
 
このカテゴリーの目次はこちら→こんな本を読んだ!

【本】『夢みる宝石』シオドア・スタージョン

家出少年のホーティがもぐりこんだのは、見世物小屋のカーニヴァルだった。少年はそこで自分の出生にまつわる奇妙な宝石のことを知る……

一四歳で初めて読んで以来、何回目かわからない再読。

今回は四カ所で涙。
1:ハディの渡した派手なハンカチ
2:ハバナのためにホーティが歌う
3:ソーラムの書いた文章
4:ホーティがある女性と結ばれるところ

中学二年で初めて読んだときは泣かなかったと思うが、泣くという感情はいろんな経験を経て感受性が広がっていくらしい。
年々、涙ポイントが多くなっていく。

自分がこの本を読んだきっかけは世界SF全集に収録されていたからだが、いま、この小説を偏愛しているポイントはむしろセンス・オブ・ワンダーでない部分かもしれない。

自分が偏愛している部分は世間からはみ出したもの達が必死に生きようとするところ。
マイノリティーの悲しみ。
ホーティが、ハバナに共感してもらえて号泣してしまうところが象徴的で、僕はこの気持がひどくわかるのだ。

これと同じ感情を筋肉少女帯大槻ケンヂ氏が書いた歌詞の中に見た。

【本】『ニューアベンジャーズ:コレクティブ』ライアン・マイケル・ベンディス (原作) スティーブ・マクニーブン  フランク・チョウ マイク・デオダートJr.(作画)

何かの続編で、出来事が起こった後からストーリーが始まるのだが、最後までどういう話か把握できなかった。
理解するためのハードルが高過ぎる。

作画も僕があまり好きでない人中心で描かれている。
下品な彩色も好きじゃない。

【本】『アルティメッツ』マーク・ミラー (原作) ブライアン・ヒッチ (作画)

マーブル漫画のヒーローが集合し、ナチの黒幕だった宇宙人と戦う……
映画『アベンジャーズ』の元ネタ的な漫画。

絵は素晴らしい。
刺激になった、が……
登場するヒーローがみな精神的に何らかの障害がある(わざと?)ため、感情移入しにくい。

暴力的なのは精神的におかしいキャラクターだからではなく、アメリカ的な思考ではこれがノーマルなのかもしれない。
あるいはさらにそれを俯瞰して、そういうキャラクターの思考を茶化して描いているのかもしれない。
この本単独では読み取ることができなかったが。

【本】『脱デブ』岡田斗司夫

レコーディングダイエットの細かいコツを一〇〇の項目に分けて掲載……

示唆に富む記述も多いが、リバウンドしないことを本書でこれだけ強調しているのに、今現在の岡田氏が太っている映像を目の当たりにすると 全てが空々しい。

せめて一〇年、岡田氏がスマートさを保守できたらこのレコーディングダイエットは一過性のブームで終わらず定着したのに……ブームの火付け人がリバウンドしているということは根本的な解決法ではなかったということか。

体重を落とすためだけのダイエットは、ダイエットで儲ける人たちを肥やせるだけ。
遠回りになるけれども、ずっと死ぬまで持続できる「生活習慣」を考えなければ意味がないというわけか。

【本】『MOONLIGHT MILE(1~23)』太田垣康男

学生クライマー、吾郎とロストマンはエベレスト登頂の際、空に見た国際宇宙ステーション……そしてその先の月を目指す。

全巻通して読むと一貫した線で物語がつながっているとはいえないが、宇宙を舞台にした混沌を描いている、という意味では一貫して正しい。

僕の中で絵と物語は比例するもので(原作ものも含め)、物語が過剰になれば同じように絵が過剰になることも必然。
物語に負けないぐらいの混沌とした絵……これだけタッチの違う絵を混在させて成り立っていることがこの漫画のポテンシャルの深さをあらわしている。

漫画表現の新しい可能性。

【本】『オンノジ』施川ユウキ

気が付くと少女ミヤコは、この世界と同じだが自分以外に誰もいない世界をさまよっているのだった……

ないことのアルアル。
少しずつ進行する事態。
……いろんな要素がある、ギャグという枠にはならないスリリングな思考実験。

SFをギャグでどう表現するか、というひとつの答え。

【本】『ふたつのスピカ(全16)』柳沼行

日本初の有人宇宙船「獅子号」の墜落した街で育った、「獅子号」と少なからぬ因縁をもった少女アスカは宇宙飛行士を目指す……

何年ぶりかの再読。
何度も何度も繰り返し泣いてしまう。

親子の関係、友達の関係が繰り返し描かれている。
恥の多い人生で、僕はこういうことを真っ正面から語る言葉を持ち合わせていない。
(作者の)この感性が眩しくて、僕は日光に照射された吸血鬼のように、どろどろの涙で崩れ落ちそうだ。

宇宙を目指す漫画なのに宇宙について具体的なことは何ひとつ描かれていない。
余分な要素を刈り取っている潔さが格好いい。

【本】『ST&RSースターズー(全5)』竹内良輔(原作) ミヨカワ将(画)

銀河からの呼び声に目覚めた子供たちは宇宙を目指す……

『宇宙兄弟』のような宇宙飛行士モノ(職業モノ)と思っていたのだが、三巻ぐらいから怪しくなってくる。

いつまで経っても地球で訓練ばかりしているだけだと少年誌的にはつまらないから舞台が宇宙に変わるのは理解できるにしても、火星探査船に乗りこんだ次の回には火星に到達してしまい(地上での過酷な訓練、試験の意味がなくなる)、その後はもうヤケクソなのか今どきSFとしてもありえない展開……期待していただけに残念。

原作者もこういう漫画を企画するわけだからそれなりにSFは知っているはず。
なのにどうしてこうなってしまったのか、真面目に聞いてみたい。

【本】『プラネテス(全4)』幸村誠

宇宙開発時代のあけぼの、地球の大気圏上でデブリ回収に携わっていた日本人ハチが人類初の木星探査隊の参加を目指す。

この漫画を初めて読んだとき、僕が何より驚いたのは、宇宙を舞台にしている物語なのにセンス・オブ・ワンダーがなかったこと。
宇宙飛行士が主人公なのにSFでないものが描かれる時代になったのか……と感慨深かった。
漫画でこれと類型のあるものがなかったので、大きなパラダイムシフトが始まっているのかも、と僕は思った。

もちろんその内容に説得力を与えるのは緻密な宇宙船/基地内部の描写だ。

そしてこの漫画以降、宇宙を舞台にしたSFでない作品がいろんな作家によって描かれることになる。

その先鞭をつけたという意味でもこの作品は重要だ。

最初は、キャラクターの目の位置が真ん中よりやや上で不安定に上がり下がりしていたが、後半は安定して真ん中になって、読んでいてホッとしたことも思い出す。

【本】『人を惹きつける技術』小池一夫

「キャラクターの起てかた」について具体的な方法を指南している本。

僕は漫画家なのに、キャラクターという概念がよくわからない。
笑いや絵や物語にはフェティッシュな興味があるのだが、アイドルやキャラクターに執着したことがない。
フィギュアも買わないし、ポスターも貼らない。
RPGは人並みに好きなのである程度はキャラクターを理解しているつもりなのだが、RPGを構成する要素の中ではもっとも興味が薄いことも確か。

僕は今まで小池一夫氏の漫画をパラ見こそしたことあれキッチリと読んだことがなかったので、これを機にちゃんと勉強してみようと思う。

今更!

【本】『サイコドクター(全8)』亜樹直 (原作) 的場健 (画)

精神科医の主人公が心理分析を駆使して様々な事件やトラブルを解決する話。

精神科医が主人公なので、人間の内面を掘り下げていく文学的な要素がある内容なのかと思ったら、精神分析自体はさほど意味がなく、謎解きが物語の主眼だった。

そうなってくると『MMR』『サイコメトラーエイジ』『金田一少年の事件簿』とあまり構造が変わらない。

一巻ではベタまで使って描き込まれていた耳が徐々に描き込みが消えていって、二巻の第三話から耳の中が完全に真っ白になった。
(ただしカラー原稿は最後まで耳の描きこみあり)

【本】『スリム美人の生活習慣をマネしたら 1年間で30キロ痩せました』わたなべぽん

タイトルまんまの内容。

具体的なダイエットのノウハウはこの本において、実はあまり意味がない。
生き方のパラダイムシフトを変えることによって継続的に太らない生活を送る、ということが主眼なのだ。

その太らない生活とは「女子らしさ」を追求すること。

近藤麻理恵『人生がときめく片づけの魔法』と同じ考え方。
ときめく生活(女子らしい生活)をするように心がけるとだらしのない生活から必然的に離脱する→スリム美人が日常になる。
だからそこに興味のない人はこの本を読んでも意味がない。

僕は女子力をつけるためできるかぎり頑張ることにした。

【本】『ジュリエットの卵(全3)』吉野朔実

世にも美しい二卵性双生児の兄妹はいびつな愛で結ばれていた……

単行本の最後までページがまだあるのに、それぞれのキャラクターが一応の幸せを手に入れそうな展開に。
そうなってくると逆にいやな予感しかしない。
「こんな早い段階で幸せが成就したら後は転落するしかないやん……」

果たしてそのとおり、ページがあるぶんだけ中盤をピークにして物ごとがどんどん悪い方へ転がっていき悲劇的なラストにつながっていく。

もっとぎりぎりのページで幸せになったら、その段階で物語が完結したのに!

【本】『度胸星(全4)』山田芳裕

人類初の火星探査隊から連絡が途切れた。
急遽、救出クルー編成のため宇宙飛行士が募られる。
三河度胸は父の遺志を次ぎ、候補生として応募するが……

めちゃくちゃ面白くて、さらに面白くなりそうだったのに、途中で唐突に打ち切られて物語は放り出される。
そのありさまは、テセラックによって火星に取り残されたままの隊員とイメージが重なる。

きっと、この現実世界と繋がった二次元空間で、隊員たちは連載再開を待ちながら今も漂い続けているのだろう。

【本】『ナサ』浦沢直樹

浦沢直樹氏の初期短篇集。

大友克洋氏、あるいは坂口尚氏、あるいはバンド・デシネ(フランスのコミック)の影響が見え隠れする。
『パイナップルARMY』やこの辺の絵柄の方が僕は今より好みなのだけれども。

デビュー作「Return」の達者なことと言ったら。
浦沢氏の高い漫画偏差値に驚く。

個人的には表題作「N・A・S・A/ナサ」が興味深い。
『下町ロケット』的なことを今から三〇年前に描いていたその先見性に乾杯!