こんな映画を観た!」カテゴリーアーカイブ

映画の見方がわからない人が感想を書いています。ばんばんネタバレしていきますよ〜!
フェイバリット映画は『遊星からの物体X』。
時々アニメやドラマやドキュメンタリーの感想も入ります。
(特に記載がない場合はDVDでの鑑賞です)
 
このカテゴリーの目次はこちら→こんな映画を観た!

【映画】『パーフェクト・ワールド』

学生時代以来二〇年ぶりに鑑賞。
今までクリント・イーストウッド監督の映画にあまりはまらなかったのだが、初めてオモシロイと思った。

ただ……
脱獄囚ブッチ(ケビン・コスナー演じる)が母親に対して子供のしたいことをさせるよう要求を出すのだが、
「子供をハロウィンに参加させろ」
と言うのがよくわからない。

子供の気持ちはわかるけど、ハロウィンに参加させないのは親子がエホバの証人の信者であるからで、そう簡単なものではない。
ヒンズー教徒に
「牛ぐらい食べさせろ」
と言うようなものではないのか。
そもそもハロウィンじたい宗教だ。

アメリカは宗教に敏感なことはもちろんなので、あえてこういう描写を入れたイーストウッド監督の演出意図はどうだったのだろうか。

【映画】『ミス・ブロディの青春』

生徒によきこととしてファシズム教育するブロディ先生。
ファシズムに歴史的評価がされていない一九三〇年代が舞台なので、周囲もその危険性に気づかない。
そもそも僕らがファシズムが危険性を知っているのは歴史を知っているからで、これは後出しジャンケンのようなもの。
ミス・ブロディの考え方がおかしいと思うことができるのは結果論、同時代なら気づくことは困難だ。

映画を観ているときは映画を支配する価値観によってコントロールされてしまう。

ブロディ先生のバランスが明らかに崩れているということがわかるのは、彼女がよきこととしてファシズムを主張しだしてからで(一方的な情熱の象徴としてファシズム)、鑑賞している最中は、肯定的、否定的、どちらで観ればいいの判断しがたかった。
クライマックス、生徒のサンディとブロディ先生の対決で問題点が言語化されてはじめて映画の意図が理解できた。

こんな読解力では、この現実で新たな危険思想が生まれても疑問を抱く前に僕は毒されてしまうことだろう。

【映画】『コズモポリス』

あまりにも理解し難い内容だったので二回繰り返して鑑賞。

脈絡のない展開がずっと続いているようだが、全部通して観ると出来事が進行していることがわかる。
セリフの抽象度が高く、その瞬間のセリフ単体では何が意味のある情報か理解しがたいことが、映画のわかりにくさに輪をかけている。

主人公がセックスぐらいでは現実感を感じることができず、痛みを感じることによって現実感を取り戻そうとしている……だから全体的に夢の中のような空想世界のような浮遊感、非現実感に支配されているということなのだろうが、それを表現することによって面白さを削ってしまったら、映画として退屈でしかない。

クライマックス、明確に自分に対して敵意を持っている相手との対話すら抽象的で問答みたいな会話。
具体的なことをいわない。
最後の一瞬だけは期待を裏切る展開で、そこは作家性だな〜と思うけれども面白いかどうかはまた別。

僕の中でクローネンバーグ監督は『イースタン・プロミス』までは面白かった。
『危険なメソッド』以降は今ひとつ。

【映画】『パラノーマン ブライス・ホローの謎』

現代でクレイアニメを作るとこうなるのか……素晴らしい!
CGとアニメがうまく混ざり合い独特の世界観を醸しだしている。
3DCGアニメにありがちな軽さがない。
重みがありそこに存在しているかのような実在感に、僕は耽溺してしまう。

キャラクター造形も僕好み。
内面もよく描けている。
一面性だけでない深みがある。

さかさまにした『シックス・センス』のような話だが、物語と独特の世界観を持った映像が混ざり合って相乗効果を上げている。
悪と正義、単純でないものの見方も素晴らしい。

たまたま高速バスで観て大当たりだった。

【映画】『ロラックスおじさんの秘密の種』

センス・オブ・ワンダーにあふれてはいるが、ピンと来ない。
設定が特殊すぎて自分の周囲にあることに当てはめることができず、別世界で起こっている興味のないことを傍観しているような気分。

全てが作り物の街の設定がうまく生かされていない。
オヘア氏は面倒臭い人だなあと思うけれど、そこまで横暴でもないし。
作り物の街も、一見するとみんな楽しそうに生活していて、その不都合な点が伝わってこない。
そもそもこの映画で描かれている本物の木がこの現実世界にある本物の木とかけ離れすぎ、ともすれば人工的に見えてしまい、それなのに種ごときで何故あんな大騒動になるのかうまく飲み込むことができない。

【映画】『レッド・オクトーバーを追え!』

ジョン・マクティアナン監督が乗りに乗っていた頃、『ダイ・ハード』直後に撮った映画。
さすがにその手腕は冴えていてずっとハラハラドキドキ。

ソ連の描写が悪すぎて、ショーン・コネリー演じる艦長ふくめ誰も信じることができない。
「モンタナに住みたい」と話していた腹心の部下さえ本音を話しているように見せて実はショーン・コネリーの意図を探ろうとしているKGBのスパイかと疑ってしまう。

窓がないのに高速で移動する潜水艦、よく考えたらそんな乗り物、普通ありえないよなあ。
周囲が全く見えず音を反響させて位置を知るその独特な航行方法に、潜水艦の設計をした人はこういうことを前提につくったのだろうか……こんなことができる人間の適応力ってすごい!と今更ながら思う。

【映画】『エクスペンダブルズ3 ワールドミッション』

冒頭、脱税で収監されたウェズリー・スナイプスが脱獄して仲間に合流したり、アントニオ・バンデラスが「仕事をくれ!」と叫んだり、現実とこの映画の中の話がごっちゃになっている。
メタ構造を持ったアクション映画。

物語としては非常にゆるい印象を受ける。
たとえばケルシー・グラマー演じる傭兵斡旋業者が傭兵を探す道中、スタローンと会話するエピソード。
「(検診で)肺に影があった……」
同情するスタローン、しんみりした雰囲気の中、
「全部嘘だ!」
といってケルシー・グラマーは笑い飛ばす。
普通ならこれから起きるであろう彼の悲しい死の伏線なのだが、その後観続けていても特に何も起こらない。
何、この意味のないエピソード……ただ単に嘘をついただけ?

この意味がありそうでないエピソードも、実はメタな視点で俯瞰すると現実で起こったエピソードとかかっていて、僕が知らないからこういうよくわからないのではないか、と後で勘ぐってみたり。
そう考えるとこの映画の、一見ゆるく見える部分も現実とリンクする何かがあり、実は緻密に作られた映画なのかもしれない。

【映画】『アフターショック』

パニックムービー。
誰と誰が助かるのかと思って観ていたら、予想に反し感情移入すべき登場人物こそ容赦なく死んでいく。
どうしようもない金持ちのボンボンだと思っていた男が実は登場人物の誰よりも善人で、でもアッサリ死んでしまったり、リアリズムというより制作者側の悪意が伝わってくる。
ラストの美しいが絶望的な光景は当然の論理的帰結。

【映画】『新しき世界』

主人公の「イ・ジュング」とライバルの「イ・ジャンソン」。
お互いイ理事と呼ばれ、名前も姿(薄い顔、オールバック)も似ているので区別がつかない。
人間関係も複雑で、最初はとっつきにくい。
韓国映画はこういうところがあるが、それを乗り越えると面白い。

江戸時代、封建体制が完成した日本で、もともと生まれながらの主君に尽くすという考え方「二君にまみえず」が、澱のように僕らの価値観に積もりたまっている。
赤穂浪士のように、不合理であっても最初に所属していた組織に忠誠を誓うことが美徳とされている。
物語上、損得や情で立ち位置を変えることはあまりよいことではない。
もとの組織を裏切るなら、その登場人物がよっぽどひどい目にあったときだが、それでも相応の因果が降りかかる。

しかし、大陸では封建主義でない考え方も一方では受け入れられているようで、この韓国映画の主人公は潜入捜査で黒社会に潜入した後、ずっと立ち位置が揺らぎ続けている。
最終的に決意してからやっと所在なさ気だった主人公の顔つきが変わる。
その決断に、実は少なからず僕は動揺してしまったのだが、その動揺に自分の日本人的な部分を見てしまったようで、映画を観て自分の立ち位置を知ったという次第だ。

【映画】『ポリス・ストーリー/レジェンド 』

『ミッション:インポッシブル』と『ダイ・ハード』と『羅生門』を足して3以上で割ったような印象。
スリリングで(ジャッキー・チェン映画にしては)新鮮な表現があって面白い。

犯人があまりに妹に執着するため、実は妹の恋人が兄だった……という近親相姦的な内容かと思っていたのだが、さすがにジャッキー映画、そこまで非道徳的なことはやらないようだ。

ジャッキーの回想で登場する誘拐犯と銀髪の男が本筋と何の関係もないことに驚かされる。
伏線すぎる伏線ってのは今まであったけど、伏線っぽく出してはぐらかすとはジャッキー映画にしては高度なことをする!

ジャッキーにしてはシリアスな内容だったが、相変わらずクライマックスはここまでやるか!と思うぐらいのサービス過剰な演出の連続。
滑り台で地下へ降りていくシーンには爆笑してしまう。
そしてエンドロールのNG集……やっぱりいつも通りのジャッキーで安心。

【NHK放送のドキュメンタリー】『プロフェッショナル仕事の流儀 特別編 映画監督 宮崎駿の仕事』

NHKで放送されたドキュメンタリー番組。
前編と後編にわかれていて、放送した前編を中心に再編集したものが後編。

後編は「引退の真相について明かされる……」というようなあおりが入るが、決定的な引退のきっかけになる出来事はなく、宮﨑氏が口にする引退を意味するキーワード中心に構成したもの。
前編と重複する情報が多く、取材の総量は多くないのではないか?と疑ってしまう。

アニメーターを罵倒したり、震災直後に声を荒げて怒ったかと思うとパンを差し入れしたり、髪をかきむしってコンテに悩んだり、老いについて自問したりする宮﨑氏。
同じスタジオジブリを扱った『夢と狂気の王国』に比べると、宮﨑氏のむき出しのエゴが出ている点でポイントが高い。

【映画】『こわれゆく女』

そもそも画面に出てきた瞬間から女がおかしい。
『こわれゆく女』というより『最初からこわれていた女』あるいは『もっと!こわれゆく女』だ。
明確な出来事がきっかけでこわれたわけでなく、主人公の嫁であるこの女がもともと持っていた不安定さによって、日常の些末事がストレスになって徐々におかしくなっていったということだろうか。

ドキュメンタリのように物語に起伏がなく、出来事がメリハリなくつながっている。
だからこそリアリティというか、心の動きや臨場感がこの映画の見せ場なのだろうが、僕の中ではあまりリアリティを感じることができなかった。
おかしい人は一見もっと普通で、なにか不用意に出た言葉が決定的におかしくて恐怖を感じるものだが、この映画では作為的なものを強く感じる。

ラストは物語の中で決着がつかずそのまま放り投げ出され、現実に残された僕に居心地の悪さだけが残った。

【映画】『ローン・サバイバー』

海兵隊とタリバンの銃撃戦が素晴らしい。
新鮮な表現でなおかつ凄まじいリアリティの戦争描写、僕の中では『プライベート・ライアン』の分水嶺を越えている。

しかしそれ以降の展開はよくあるハリウッド映画のパロディのように予定調和になっていく。
子供を使ったいい演出によい意図を感じない。
そしてこの後起きるかもしれないすさまじい悲劇の可能性に関して映画内ではあまりにも触れなさすぎて、違和感がある。
前半の容赦なさに対して、アメリカ人観客に対して安心させる要素(アフガニスタンでおこなった行為の正当化)を若干でも与えたかったためだろうか。

【映画】『特攻大作戦』

途中まで観て、この映画と『特攻野郎Aチーム』を自分が混同していたことに気づく。
ならず者ばかりを集めた部隊という点が被っていて、途中まで違和感を打ち消しながらも思っていた展開にならずぐんにゃりした気持ちになる。

このならず者部隊で生き残ったのがたった一人というのが、そもそも悪人だから因果応報で全員合わせて一人分しか生き残る価値がなかったということだろうか。

それにしても連合軍の、敵国とは言え家族など戦闘員でもない人を非戦闘地域でだまし討ちし焼き殺す作戦ってどうなんだろう。
そういうことををならず者にさせるところが責任転嫁っぽくて、そういう無神経さと戦争だから仕方ない正当化しているところがまさに欧米。
この映画がが皮肉で作られているのか大真面目に作られているのかは、五〇年近く前の映画なので僕には判断できない。

【映画】『テンダー・マーシー』

落ちぶれたカントリー歌手の穏やかな回復を描いた映画。
前夜の『フィールド・オブ・ドリームス』同様、僕が主人公と年齢が近づいたからこそ共感できる部分が多い。
一〇代二〇代ならわからなかったかもしれない、浮き沈み、前向きだけではいられない人の弱さ、繰り返される因果……人生の機微がいちいち身に沁みる。
こういう人生の歩み方もあるのかもしれない。
激しい絶望もない、飛び上がるほどの喜びもない、淡々とした日常の繰り返し。

ラスト、地平線のかなたまで見える広野をバックに、家庭菜園を耕しながら「神の意志」を問う主人公……そのあと義理の息子に呼ばれ家の前でボール遊びを始めるまでのシークエンスがこの映画の全てを象徴しているようで、激しく号泣するわけでもないがじわりと湧き上がる感動に浸っている。

【映画】『フィールド・オブ・ドリームス』

初めて観た時は学生の頃、登場人物が歳上なうえに興味のない野球選手の話で誰に感情移入したらいいのかわからなかった。当然面白くなかった。
それから二〇年以上振りに鑑賞、現在の自分はケビン・コスナー演じる主人公とほぼ同世代になり同じく人生の曲がり角、重なる部分が多いことに気づく。
野球選手にも、自分に当てはめるとこういうことを指しているのだなと思い観ていると、こちらにも自分と重なる部分が多くて泣きたくなってくる。

レイ・ブラッドベリ小説のような印象。
妄執にとりつかれた登場人物が、周囲の人には不合理としか思えない行動を続け何かを達成しようとする。その行動が知らない間に世界に波及し、常識とらわれている人たちは世界に取り残されてしまう(場合によっては偏見から解放されたりもする)……

地味だけれども心を打つ演出が素晴らしい。
現在流行りのスタイリッシュなCGでさとうきび畑から人が出入りしたらさぞかし興ざめなんだろうな。
ラスト、キャッチボールに誘うところに涙がツーっと頬を落ちていく。
僕はまだ親が生きていることに感謝して、帰郷した際に少しだけ優しく接しようと思った。