【映画】『テンダー・マーシー』

落ちぶれたカントリー歌手の穏やかな回復を描いた映画。
前夜の『フィールド・オブ・ドリームス』同様、僕が主人公と年齢が近づいたからこそ共感できる部分が多い。
一〇代二〇代ならわからなかったかもしれない、浮き沈み、前向きだけではいられない人の弱さ、繰り返される因果……人生の機微がいちいち身に沁みる。
こういう人生の歩み方もあるのかもしれない。
激しい絶望もない、飛び上がるほどの喜びもない、淡々とした日常の繰り返し。

ラスト、地平線のかなたまで見える広野をバックに、家庭菜園を耕しながら「神の意志」を問う主人公……そのあと義理の息子に呼ばれ家の前でボール遊びを始めるまでのシークエンスがこの映画の全てを象徴しているようで、激しく号泣するわけでもないがじわりと湧き上がる感動に浸っている。