【本】『人間昆虫記(全2)』手塚治虫

人間昆虫記とはまさに手塚治虫氏のことを指すのではないか。
同時期(七〇年〜七一年)に連載された『きりひと讃歌』と対をなす大人向け手塚氏大人向け漫画。この二年後の七三年に虫プロ倒産、そして『ブラック・ジャック』連載開始。この作品の前後からそれまでの手塚氏にないキャラクターの内面変化が顕れる。この作品前後の虫プロ倒産のゴタゴタなどが手塚氏の脱皮するおおきなきっかけになったと思われる。
僕には、様々な職業の恋人から才能を吸収し脱皮していく主人公の十村十枝子の姿が、様々なトラブルや新人漫画家からさえも貪欲に新しいものを吸収していった手塚氏自身と重なってしかたないのだ。