【本:漫画】『廃墟少女』尚月地

自分のフェティッシュな嗜好に対して忠実に向き合う作者の姿勢に感動する。
決してひとりよがりでなく、商業的に抑えなければならない部分と折り合いをつけている。
漫画自体は僕の好みにドンピシャなわけではないが、独創的な画面作りに何度も本を開いては読み耽る。

描きたいことと、興味のないことのギャップが大きい。
物語的にも緻密な設定を作るところと描かないところの差が激しい。
描きたい背景と、手前のキャラクターの中間が全くの空白なのに違和感を覚えさせないテクニック……あるいはそういう画面作りの妙というべきか。
漫画家の絵と物語のこだわりは比例する……僕がいつも思うこと。

あとひとつ、デジタルで仕上げているのにアナログっぽい画面作りが素晴らしい。
ゲームの話に脱線するけれども、
FINAL FANTASY6から7へ移行するとき(スーパーファミコンからプレイステーション)、3DCG中心になって天野喜孝要素が消えていった。
今思うとハイスペックなマシンで何故2Dを極めるような方向に進化しなかったのか。
アナログ的な天野喜孝要素を活かす方向だったら、現在の日本のゲーム界でどんな表現を観ることができただろうかと夢想する。
あれが日本のCGの分かれ道だったと思う。

逆に、アニメ監督の高畑勲氏は『ホーホケキョ となりの山田くん』『かぐや姫の物語』で、(いかにもCGアニメらしい表現ではない)CGを使うことによって本来の絵の持ち味をより活かす、かえって新鮮な表現を創りだした。
それをこの漫画の中に見る。