【本】『手塚治虫対談集(4)』 手塚治虫

バラエティに富んだ対談集。

僕は個人的に哲学者鶴見俊輔氏との対談が興味深かった。

手塚氏にとって悪人は煩悩に溺れている存在とのこと。
ある感情に捉えられて身動きがとれない、ひとつの特徴が強調されるから悪人になる。
逆に言えばいろんな悪人を足していけば平凡なひとりの人間になる。

鶴見氏いわく、この数百年イギリスは自分が悪いとこともやっていると思ってやってきたとのこと。イギリスは古い民主主義の国で、政治が腐敗することは自明の理だということがわかっている。自分の犯した悪をどう向き合うか、そのやり過ごし方がわかっている。
ヒトラーも自分の悪い部分はわかっていて、その悪をひきうける覚悟だった。
一方アメリカは無邪気に自らの正義を確信している。日本も戦前はそうだった。
逆に今の日本は価値相対化が進んで、悪のレッテル張りが難しい。

手塚氏いわく、だから勧善懲悪の物語を作ることが難しいとのこと。