こんな本を読んだ!」カテゴリーアーカイブ

本を読むことはあまり得意じゃないのですが、頑張って読んでいます。
 
このカテゴリーの目次はこちら→こんな本を読んだ!

【本】『千の顔をもつ英雄(上下)』ジョセフ・キャンベル

この本で扱われている、前提となる世界の神話が身近でない。
専門用語も難しい。
読み進むことが非常に困難。
でも頑張る。

上巻と同じく難解だけれども、読み進んでいくうちに情報の重複部分が増え、スポンジに何度も絵の具を染み込ませるように、自分の理解が少しずつ深まったことを実感。
現代まで残った神話は必然があって語り継がれたということで実話、創作を論じないところが興味深い。

【本】★『英雄誕生の神話』オットー・ランク

メモ:
重要なのは第三章、心理学的解釈における平均的な伝説の図式。

a.英雄は、高位の両親、一般には王の血筋に連なる息子である。
b.彼の誕生には困難が伴う。
(禁欲、長期にわたって子宝に恵まれない、外部からの禁止や妨害、長期にわたって子宝に恵まれない)
c.予言によって、父親が子供の誕生を恐れる。
d.子供は、箱、かごなどに入れられて、水に捨てられる。
(父親かもしくはそれに代わる者の命令で)
e.子供は、動物とか身分のいやしい人々に救われる。彼は、牝の動物かいやしい女によって養われる。
(いやしい人々はたいてい牧人。養われるとは乳を飲ませてもらうこと)
f.大人になって、子供は貴い血筋の両親を見出す。
g.子供は、生みの父親に復讐する。
h.子供は認知され、最高の栄誉を受ける。

神話においては、英雄と父親・母親の正常な関係が阻害されている。
子供は神話と同じような空想をする。(自分の本当の親に認められたい)
その空想は、幼少期の過大評価されていた時代への愛惜の念を表現している。
(成長過程で、子供は両親の庇護によって生まれた幸せな時期が消えてしまうから)
子供の空想(夢)、神話は密接に結びついている。
共通項はこの世界に生まれた理由。
アイデンティティについて語られているという点は同じだが、その差は個人か集団かということ。

【本】『遊ぶ脳みそ―パズルで鍛える! 記憶、知覚、認知 』リチャード・レスタック  スコット・キム

記憶について書かれた部分が心に突き刺さる。

人の記憶のほとんどが意味記憶。
それに対してエピソード記憶があるが、それが優勢になると、その人の人生は悲惨になる……って僕じゃないか! 
勉強も意味として覚えないで授業で先生が喋ったことやノート、教科書に記述した場所で覚えていた。
ささいなことと重要なことを区別化したり一般化することが難しかった。

オスカー・ワイルドいわく「神々は我々を罰したいとき、祈りにこたえてくれる」
つまり人は経験したことを全て覚えておきたいわけではなく、厳選した部分だけを残しておきたいのだ。

【本】★『脳は眠らない』アンドレア・ロック

(再読)

メモ:
第1章 夢研究の誕生―何でもありの時代
第2章 フロイトはまちがっている?―脳幹の役割
第3章 夢はどこから生まれるのか―「自然の実験」からわかること
第4章 夢の機能―生存のためのリハーサル

ユングによれば、私達が見る最も重要な夢は「集団的無意識」から生み出される。
遠い祖先から受け継がれてきた人類の経験的な記録。
人間の胎児に見られる尾骨の名残のように身体には進化の歴史を物語る形跡がある。
心も「それを内包するからだがそうであるように歴史をもつ」
夢だけでなく歴史を通じて神話やお伽話宗教的な儀式に見られる

フォウクスの実験

九歳から一一歳になるまでは、夢の内容も見る頻度も大人のレベルに達しないことがわかった。
九歳未満の子供がレム睡眠中に起こされて夢を思い出せる確率は三〇%余りに過ぎない。
九歳という節目を過ぎると大人と同じ八〇%前後になる。
子供たちが話す夢の内容が大人と異なっていた。
五歳未満の子供の夢は短い平板なイメージで構成され、動物がよく登場する。

夢をよく見る子供は色つきのパターンの積み木で同じ物を作らせると点数が高い
視覚、空間認識のテストで高い点数を出した
視覚的なイメージ作りは徐々に発達する能力であり、夢を見るための重要な前提条件になる。

自分自身が夢のなかに登場するのは七歳以降
それまでは子供には自分という認識がない。

前頭葉にダメージ↓夢を見ない

前脳基底部核に損傷を受けると起きていても夢を見る

夢の中で 扁桃体が刺激される
「闘うか逃げるか」

前頭葉皮質だけが取り残される。
論理や理性を司る。
現実と妄想をチェックする機能が働かない。

外界の視覚情報を最初に受け取る覚醒時よりも一次視覚野は活発になる。
長期記憶の処置中枢は活発に動いているのに、現在の体験を記憶するのに必要な領域は活発ではない。
(実際には刻まれているが、思い出すきっかけがないだけ)

夢は意識下の底にある願望から生まれる(フロイト)

視覚連合野
夢を見ているときは視覚空間系の脳が活発化
↔違い
統合失調症は、聴覚言語系が活性化

長期記憶の領域は普段より活性化

短期記憶の領域は寝ている

感情の部分が活性化
大脳辺縁系(長期記憶の領域)

神経生理学

心理学

実は性的な夢が出てくる割合は一割にしか過ぎない
最も頻繁に見るのは追いかけられている夢

子供たちは空想の中では自分が主人公だが
空想の中ではなりたい自分
夢の中では本当の自分

脳は覚醒時以上にエネルギーを使い、身体は麻痺
全く無防備

夢は生き残るためのリハーサル

日々の体験で得た情報が統合され反復学習

仮想現実

虎もネコも夢を見る
夢と現実を区別するように
短期記憶を残さない
夢は覚えておくものとして作られていない
比較的新しいことなので読む書く計算する夢を見る事はほぼない

●第5章 夢と記憶―体験を整理する

記憶をするとまず海馬に取り込まれる。
隣接する扁桃体は経験次の感情的な反応
一旦保留されてから新皮質に移動していく。

手続き記憶と宣言的(陳述)記憶の二種類。
宣言的(陳述)記憶は意味記憶とエピソード記憶

脳はインターネットの閲覧ソフトのような役割。
夢はエピソード記憶のアクセスが絶たれた状態で観る。
ゆるやかに夢の中に吸収されていく。
夢の中の日中の残滓は半分に満たない。

「夢のタイムラグ効果」…特に女性によく見られる

PTSD
三日後がピーク、次のピークは一〇日後。
海馬がその情報を処理して新皮質に配信するまでの時間
海馬はメモリの役割
新皮質がハードディスク
もともとは生存に必要なスキルのリハーサルだったが、人間はさらに上の複雑な層が重なる

●第6章 夢は心を癒す―自分でできる精神分析

感情を整理する脳の役割
感情的にバランスのとれた人が気持の良い日を過ごしたとき六〇対四〇
深刻な悩みを抱えている人は九五対五
ネガティブな感情のほうが多い
夜のうちにそういう感情を処理しておくため?

最初のレム睡眠で見る夢が最もネガティブ
二回目、三回目と回数を重ねるごとに
よりポジティブになっていく。
より古いイメージが混ざり合った複雑なものになっていく
※ただしうつ病の夢のパターンはこれと大きく異なる

●第7章 左脳の解説者―脳が紡ぎだすストーリー

脳は全くデタラメなイメージからストーリーを紡ぎ出す
右半球 幾何学的な図形や空間認識
左半球 言語能力、文章、計算
右で世界を認識、左でそれを分析、問題を解決。

睡眠中、脳の不完全なイメージから推測したものが夢
あうれでてくるイメージから即興的に作られたものが夢
睡眠中に生理的な変化で脳の作業ルールが変わるため

妄想じみた夢が生じるレム睡眠中は、神経伝達物質ノルエピネフリンの分泌が大幅に低下
(ノルエピネフリン…ニューロンが同時発火したときにノイズを締め出し、奥亭の信号に的を絞る皮質の能力を高める)

背景が変わるだけでなく、登場人物も変わる
しかし人が物になったりその逆のパターンは報告されていない
↓人と物を扱うのは別の領域

言語能力や記憶力に問題がなくても空間認識のテストが著しく低いと夢を見ない

●第9章 明晰夢の世界―自分の夢をコントロールする

明晰夢とは、レム睡眠期に入り脳の生理的な状態が変わっても、強い意志が働いているために意識が保たれている状態。

夢を見ているときは普通「私は夢を見ている」という自覚がない。
明晰夢では何らかの作用で自己意識が生まれる。

筋書きや設定の意外なひねりで夢の呪文が解け、明晰夢に入る。
きっかけ 何年も前に死んだ人との再会、あまりにも奇妙な風景に「これは現実だろうか?」と疑問を持つ

明晰夢を見ているとき、眼球の動きを操ることができる
眼球を特定のパターンで左右に動かせば、レム睡眠中に無意識に起きる眼球運動とはっきり区別できるはず

半数、ある調査では八割が明晰夢を見たことがあると答えている。
一ヶ月に一度以上見る人は一割から二割

明晰夢を見るのはほとんどレム睡眠中、睡眠時間の後半、明け方から朝にかけて見る確率が高い
朝に近づくにつれ体内時計にあわせて体温が上昇、あらゆる睡眠段階で脳の動きが活発になる
睡眠時間の後半はレム睡眠の時間が長くなる。
明晰夢でなくとも鮮やかな夢を見やすくなる。

明晰夢を見るためには自己意識が生じるよう皮質が高度に活性化しなければならない。
(おそらく言語能力を司る左脳の側頭葉のスイッチが入る必要がある)
「これは夢だ」と認識しなければならないから。

明晰夢を見る人の二五%は夢を見ていることに気づくだけで操作できない

想像するより夢の中で行動する方が脳の動きが活発になる。

夢の中がリアルなのは
外から入ってくる情報がニューロンを刺激するのと同じような反応が脳内で起こる。
想像と現実を区別するために起きているときは神経伝達物質セロトニンが働く
レム睡眠中はセロトニンの低下

明晰夢を見るために
●普段よりも一〜二時間早く起き、三〇分から一時間起きてから二度寝すると確率が一五倍から二〇倍高まる。

●一日に少なくとも五〜六回「これは夢か現実か」確認する
(リアリティーテスト)
眠っているときも同じように自問する習慣をつける

●眠る前に「夢を見ているときに意識を保つぞ」と自分に言い聞かせる。

明晰夢を見る回数が五割増す

●夢を見ているとき確認すること
活字や時計を探して、それを見る。
(夢の中では活字はほぼ例外なく変化する)

夢が崩れそうになると意識を他に移す
くるくる回転する方法で夢が続く確率が二二倍

【本】★『明晰夢―夢見の技法』スティーヴン・ラバージ

(再読)

メモ:
紀元八世紀にチベットの仏教徒が夢の状態のさなかにも完全に目覚めた意識を保持することを目指す、ある形態のヨーガを実践していた。
ヨーガ志願者のための古代の手引きによれば、ある種の夢コントロール法の実践によって、想像しうるあらゆる体験の夢を見る能力を獲得できるという。
チベットのヨーガ行者にとって、明晰夢は実験の良い機会であり、それによって夢の状態が主権的なものであると気づき、その延長として目覚めている時の経験も同じく主観的なまのだということに気づくためのものなのだ。

夢状態における形状やおびただしい変化はすべて心の慰み物でしかなく、それ故蜃気楼のようにはかないものだと学ぶ。
覚醒時に五感によってちかくされるものも夢状態におけるそれらの反映と同じく、どちらも同じく輪廻によって移ろいゆくものであるという認識へと導かれる。

輪廻のうちにあっては夢と現実は同じく非現実であり、またそれ以外にありえないという大いなる悟り

一〇世紀のインドのタントラのテキストにも同じようなものが残されている
入眠しながら意識を保つ方法

サン・ドゥニ伯爵『夢及び夢を支配する法』一八六七年

夢の脳の状態
リラックスしているとアルファ波を脳波を示す(緊張していると示さない)
覚醒段階

第一段階 アルファ波が一定期間(三〇秒)の半分未満…睡眠が始まる
眼球運動が始まる、数分間、
睡眠のごく浅い段階
入眠時幻覚

第二段階 睡眠紡錘波(一二〜一四Hz)
眼球運動殆ど見られない、筋緊張いくぶん減弱
第一段階より現実的な夢

第三段階 デルタ波(一〜二Hz)が二〇%を占めるようになる

第四段階 デルタ波が五〇%を占めるようになる
(第三段階とあわせてデルタ睡眠と言う)
睡眠のもっとも深い段階
眼球運動殆ど見られない、筋緊張低い

一時間半後には第三段階から第一段階へ戻る
第一段階すなわちアルファ波が一定期間(三〇秒)の半分未満…レム睡眠、すなわち夢見の状態

レム睡眠五分から一〇分続き、また戻る
二回目以降はデルタ睡眠が少なくなり、レム睡眠が長くなり
二、三回目以降はデルタ睡眠出現せず、
第一段階レム睡眠、第二段階ノンレム睡眠のみとなる
最後はレムが一時間になることも
その間隔も短くなり九〇分から最後は二〜三〇分間隔

夢航行士

呼吸、眼球など体を傷つけない筋肉については、麻痺から逃れている。
呼吸、眼球の変化で外に合図する

明晰夢の中では文字はじっとしていない。
語句に集中しようとすると文字は象形的な判読しにくいものになる。

ライト・スイッチ現象…夢の中で照明の強さを変えられない。

夢見人が明晰夢の中で起こり得ると想定したことは、実際に起こることを一部または全部決定すること。
個人差が大きな意味を持つ。

周囲に及ぼす力
自分自身に力を及ぼす

感情に距離を保つこと
目覚めてしまう

巧妙に仕組まれた偽りの目覚め

明晰夢が消えようとしたとき
後ろ向きに倒れるかクルクル回る
新しい夢の場面に移行する

脳の前庭系を刺激、近傍のレム睡眠系の構成要素の賦活

夢想したり自分を見失わないこと

一日五回から一〇回から「私は夢を見ているのか否か?」問い続ける
早い人ならその日、続ければ一ヶ月以内に初めての明晰夢

●第一段階 アルファ波が一定期間(三〇秒)の半分未満…睡眠が始まる
微細夢
一つ、私は夢を見ている
と数えながら入眠する。

「四四、私は夢を見ている」で夢を見ていることに気づく。

慣れると数を数えるだけで入眠時に明晰夢を見ることができる。

●明晰夢誘導(MILD)

1:早朝、自然に目が覚めたら、記憶するまで何度も夢を思い出してたどる。
2:ベッドに横になったまま眠りに戻りながら「次に夢を見るとき、私は自分が夢を見ているとわかっていることを思い出したい」と自分に言い聞かせる。
3:リハーサルとして、夢の中に戻った時の自分を視覚化する。
4:自分の意図がはっきりしたと感じるか、寝入ってしまうまで、二と三の手順を繰り返す。

【本】★『ベストセラー小説の書き方』ディーン・R.クーンツ

ジャンル作家になるな、とこの本の中で口酸っぱく語られている。
筆者はSF作家というレッテルを消すために版権を買い戻し絶版にまでした。
ここまでしてもなお批評家の中には筆者をSF作家と評する人がいるという。
「まだ昔の檻からぬけだせちゃいないぞ」

かのようにジャンルものは、売上や表現の枠で制限があるので出来る限り避けるべき……にしてもそこまで言うか。

メモ:
●一般読者が小説に望むこと
1:しっかりとしたプロット
2:見せ場が多いこと
3:ヒーローかヒロイン、またはその療法が登場すること
4:変化と想像力に富み、しかも説得力のある性格描写
5:明確で自然な登場人物の動き
6:綿密な背景描写
7:わかりやすい文章(描写)
8:多少のリリシズムと強烈な印象的イメージを豊富に盛り込む。

●作家に必要なこと
思考
注意
職人気質
物語性

●報道されていることを一番に取り上げかつ面白く描くことの競争の激しさ、二番煎じの不利さ。

●古典的プロットのパターン(普遍的)
1:作家は今まさに恐ろしい困難に遭遇しようとしている主人公を紹介する。
2:主人公はその困難を乗り越えようと努力するが、更に深みにはまる一方である。
3:主人公が穴から這い上がろうとすると、色々と厄介なことが持ち上がる。多くの場合このトラブルは主人公の個性を形成している欠点や美点の相互作用から生じる。
4:恐ろしい体験と耐えがたい状況によって、深く傷つき変貌を遂げた主人公は自分自身についてあるいは人間が常に置かれている状況について何かを学び取る。彼はなすべき行動を実行する。

●最初の3ページが勝負

読者が本を買う基準
1:作家の名前
2:小説の種類
3:表紙
4:表紙に書かれた宣伝文句
5:第1ページにざっと目を通す

●注意!
物語で起こる事件は決して作者から読者に対して直接語る形で予告されてはいけない
どうしても予告したくなったときは、登場人物を通して語らせよ

●相次ぐ困難によって主人公を追いつめよ
1:主人公の課題を過酷にするためであって、時間稼ぎであってはならない
2:どんな事件も前の事件から必然的に生じるものでなくてはならない
3:偶然の一致を避けよ。
4:(主人公が欠点を持つことは構わないが)相次ぐ困難は登場人物の愚かさに起因してはならない。
5:最後の状況は最悪のものでなければならない

●作品を最大限面白くするためには、著者は可能な限りアクションと性格描写を結びつけるべきである。

●主人公の動機付けの弱い物語は駄目→よりよくするためには動機の重層化が必要

【本】『物語の法則』 クリストファー・ボグラー デイビッド・マッケナ

前作の『神話の法則』をマニュアル化したもの。
この本だけでは個々の課題がわかりづらい。
理解するためには前作ありき。
この手の創作論は日本でも良書がでているので、そういうものと並べて理解を深めるために読むぶんにいいのでは。

14年07月25日再読

【本】★『自滅する中国』エドワード・ルトワック

中国が古代からの遺産「孫氏の兵法」を重宝するがゆえに、グローバル化した世界、価値観外交に適応できず摩擦を引き起こしているという指摘はまさに彗眼。逆に同じように古代から行っている外交方法「蛮夷操作」が日本に対しては有効になっていることに歯がゆさを感じる。日本は経済的依存状態への誘導、(婚姻や)結びつきを通じ、義理の父である共産党(皇帝)に道義的に服属するよう仕向けられ、抜け出すことが困難な状況になっている。

読了時間:3時間

メモ:
●中国はその規模の大きさゆえに問題がある。
混雑したエレベーターの中で中国という肥満児が乗り込んできて、急速に太り続けていいるようなもの。礼儀正しいいいやつだとしても、自分自身の身を守るために押し返そうとするだろう。
エレベーターにはもっと太っていてやかましくさらに暴力的になることもある米国も乗っているのだが、何十年も前から乗客であるため、他の乗客もうまく折り合う方法を見つけている。最も重要なことは中国ほどそのペースは急速でない。

●古代から周辺国に行う外交は「蛮夷操作」
対等に接さず、朝貢国として扱う。
対してヨーロッパの前提は「力に差のある国家も形式上は対等だ」
1:汚職……もっというと経済的依存状態への誘導。
2:教化……婚姻や結びつきを通じ、義理の父である皇帝に道義的に服属するよう仕向ける

●中国の行動規範
1:自分たちより力を持った強い勢力に対しては、最初は譲歩できるところは全て譲歩する。そして被害を避け、できる限りの利益か、少なくともそこから得られる限りの寛容を得る。
2:強い勢力側の支配者や支配層を物的依存の罠に絡めとる。これによって彼らが元々持っていた活気や長所などを弱める。その一方で、全ての他者を排除した特権的な二極状態という対等な地位(G2)を申し出る。
3:かっての強い勢力が十分に弱体化したことを確認してから、対等な関係をやめて服従を強いる。

●「孫氏の兵法」の欠点
相手が同じ価値観を共有している文化圏なら成り立つが、他の文化圏には通用しない。
例えば二〇一〇年九月の尖閣諸島、圧力をかけた後、対中投資を続けるように日本に促す。経済的な利益よりも優先することがあることがわからなかった。あるいはインドの国境紛争。
もう一つ奇襲戦法の過剰なまでの信望。

●韓国
北朝鮮問題は自分で解決することを放棄、中国と米国に依存している。
そのストレスを日本との争いを欲する熱意という歪んだ形で現れている。
韓国は日本と争うことで自分の脆弱さをどのように癒やすかを曖昧なものにしている。
韓国は中国と米国の間のストレスを日本に対してぶつけることで発散している。
そのことで実際に脅威をもたらしている国に威嚇されやすくなっている。

【本】『ノーマン(全3)』手塚治虫

あとがきにて、当時リアル志向だった少年漫画に「あえて」背を向けて描いた冒険SFだとか。
残念ながらその試みは成功と言いがたく、五〇年代の手塚氏が先祖返りを起こしたようにいたずらに扇情的、話があっちこっちへ進み、僕達の住む現実社会との接点もないので感情移入もできず、唐突に打ち切られ納得しがたいラスト。

【本】『物語の命題 6つのテーマでつくるストーリー講座』大塚英志

大塚氏の物語創作入門シリーズ。
漫画におけるテーマは一番地味で実践することが難しい。そもそも僕の周囲の漫画家はテーマを意識して作品を描いていないような気がするし、逆にテーマを意識して描いている人はこの本を必要とするのだろうか。

【本】★『イソップ寓話集』イソップ

元祖自己啓発本。
通して読むとそれぞれの寓話は矛盾しており、一貫性はない。
だからこそあらゆる読者が自分の状況に応じて都合のよい寓話を探しだすことが出来るのだろう……という寓話ができそうだ。

読了時間:6時間

メモ:
三一 ロマンス・グレーと二人の愛人
ロマンス・グレーの男が、若い娘と年長けた女と、二人の愛人を持っていた。婆さんは、自分より若い男と語らうのがきまり悪くて、男が通って来るたびに、髪の毛の黒いのを抜き続けた。若い方は、年寄りを愛人にするのに気が引けて、白いところを抜いた。こうして、両方から代わる代わる抜かれた男は、遂に禿になってしまった。
このように、何につけ不釣合いは怪我のもと。  

三五 人間とサテュロス
ある時、人間がサテュロスと友情を結んだということだ。やがて冬が来て、寒くなった時、人間は両手を口の前へ持って行き、息を吹きかけた。何のためにそんなことをするのか、とサテュロスから尋ねられて、しばれるので手を暖めるためだ、と人間は答えた。
その後、二人が食卓を挟んだ時のこと、料理が大変熱かったので、人間は少しずつ口元へ持って行き、息で冷ました。なぜそんなことをするのか、と再びサテュロスから訊かれて、料理が熱すぎるので冷ますのだ、と答えたところ、サテュロスはこう言った。
「あんたとの友情もここまでだ。同じ口から、熱いものも冷たいものも吐き出すような奴とはな」
そこで我々も、性格のはっきりしない人との友情は避けなければならぬのだ。

六三 弁論家デマデス
弁論家デマデスがアテナイで演説をしていたが、聴衆が身を入れてきいてくれないので、イソップの寓話をはじめました。
「デメテル女神とツバメと鰻が道連れになって、川のほとりにやってきた。ツバメは空へ飛び上がり、鰻は水に潜った」
と、言ったまま、デマデスが次を言わないで黙り込んだので、
皆が「デメテルはどうなったんだ?」と尋ねました。
答えて言うには「デメテルはおまえ達に腹を立てていなさるのだ。国の問題をほったらかして、イソップの寓話なんぞを聞きたがるからのう」
寓意・このように、しなければならないことを等閑にして快楽を選ぶのは、考えのたりない人のすることである。

一〇九 ゼウスと羞恥心
ゼウスは人間を作ると、すぐにさまざまな心の動きを注入したが、羞恥心だけは忘れてしまった。そのため、どこから入れればよいか困って、羞恥心には肛門を通って入ってくれと頼んだ。羞恥心は初めは嫌がり、プライドを傷つけられて憤慨していたが、
ゼウスが強くせがむので、言うには、
「では、次の条件でなら入りましょう。もし他のものが更に入って来たなら、すぐに私は出て行きます」
.男色家が恥知らずなのはこういうわけだ。
淫らな男に対してこの話は適用できる。

三六八 川と牛皮
鼻っ柱のつよい元気者も人生の苦によって地に塗れる、ということ。
川が自分の上を流れて行く牛の皮に、
「何者だ」と尋ねた。
「堅牢無比と呼ばれています」と答えるので、流れでひたひたと揉みほぐしながら、
「別の呼び名を探すのだな。わしが今にお前をふにゃふひゃにしてやる」と言った。

四三四 鷲(ワシ)に乗った鷦鷯(ミソサザイ)
イソップの鷦鷯は鷲の肩に運ばれていたが、突如飛びおりて、先にゴールを切った。

【本】『ミクロイドS(全3)』手塚治虫

二〇年ぶり再読。やっぱり面白い。
僕はこの戦闘スーツみたいな手塚氏っぽいデザインがイイ〜!ともだえてしまうのだが、一般的にはこれが古臭くて敬遠してしまうのだろうか。
昆虫対人類の戦いは、ジョジョ第四部重ちーのハーヴェスト相手に闘うようなもので、仗助いわく「ハーヴェストに勝てるやつがいるとは考えられない」のだ! 実際にこんなことが起こったら人類はボロ負けだろう。昆虫だけは怒らせないようにしようと思った。

【本】『フライングベン(全3)』手塚治虫

超能力をもった犬の兄弟が環境の違いによって別々の生き方を選ぶ。功利主義なウルと規範主義なベン、このように手塚氏は物語の中で主人公とシャドウの対比を描くことは多い。
犬嫌いな僕は割り引いて読んでしまうためか、手塚氏がアニメ化のためパイロット版を二度も作るほど執着する意味がわからなかった。

【本】『海のトリトン(全4)』手塚治虫

この作品の中には絶対的悪が存在しない。敵組織も人間も立場が違うから主人公と対立するだけで、みな矜持を持ち、自分のルールに忠実に生きている。
はっきり勧善懲悪にならないそのグニャグニャとした世界の割り切れなさに象徴的な現実を、自分のルールに忠実な(筋の通った)登場人物に手塚氏の理想を見る。

【本】『奇子(全3)』手塚治虫

今読み返してみると、近親相姦のどろどろとした世界すらも文学的にまとめ上げてしまう、手塚氏の物語る腕の達者さが、教科書的、優等生的。
一般に言われるほどエグくない。
『楡家の人びと』『百年の孤独』『カラマーゾフの兄弟』……他の家系ものを読むとその都度、手塚氏の受けた影響と相違が新しく浮かび上がってくる楽しみがある。

【本】『火の鳥(1~2)』手塚治虫

「黎明編」猿田彦の鼻が大きくなったのはこの時代にハチに刺されたからで、生まれ変わってもつきまとう鼻が大きくなる業(カルマ)、謎すぎる!
モチーフとしての火の鳥(テーマ)が物語と絡み合い、昇華するその巧みさはシリーズの中で随一。史実、神話の織り交ぜ方もハマっているし、一〇代の初読時より楽しんで読むことができた。

【本】『火の鳥(3)』手塚治虫

「未来編」猿田博士がムーピーを実験して得たデータが何も生かされていない。そもそも火の鳥が主人公に永遠の命を与える意味がわからない。もしそうするなら、風化した肉体が元になって地球の新しい生命が生まれなければ意味が無い!
物語自体は行き当たりばったりで起伏に欠ける。しかし終わる直前からの怒涛のクライマックスと、空間と時間・因果の連鎖のテーマは手塚漫画どころか日本漫画史に残るオリジナリティと先進性。
「黎明編」と「未来編」はセットで読むべき物語だし、さらにいうと続編は全て壮大なスケールのエコー(こだま)だ。

【本】『火の鳥(4) 』手塚治虫

「ヤマト編」史実の絡め方は面白いけれど、「未来編」の続編として読むとかなり手痛い肩透かしを食らう。
輪廻を繰り返しながらも人間が上昇していくさまがあまり伝わってこなくて、また「黎明編」に引き戻されている!みたいな。

「宇宙編」一〇代で初めて読んだとき、これは推理物としてはいい加減過ぎるやろ〜と憤慨したものだし、コマ割りは斬新というより読みにくさを感じた。おそらく当時の手塚氏が新しいことをやろうとした一つの枝の先端だったのではないか。それが今となってはかえって古いが。
煉獄のような惑星で生きていくためメタモルフォーゼした人間のイメージは強烈。

【本】『火の鳥(5~6)』手塚治虫

「鳳凰編」茜丸の頭を抱くブチ。都から離れて美しい自然を眺め涙を流す我王。これを読んで感動できない奴とはわかりあうことができないと思う。
それにしてもちょっと卑怯なことをしたぐらいで未来永劫、悲惨な因果をむかえる茜丸がかわいそう。我王は素晴らしい作品を作ることができるけど大量殺人犯やんか。

【本】『火の鳥(7~8) 』手塚治虫

「復活編」『火の鳥』でこの作品がいちばん好き。
主人公が復活したとき、破損された脳を人工的に再生したため人間が無機質に見えるシーン。ロボットのチヒロと美しい自然の中でデートしている絵を人間側から引いて眺めると燃えたぎる溶鉱炉だったシーン。
何度読んでも悶えてしまうぐらい、イイ!

「羽衣編」『火の鳥』とあまり関係ない話。手塚氏の漫画、物語作りの達者さがじゅうぶん過ぎるほどわかる。

【本】『火の鳥(9~10)』手塚治虫

「望郷編」この全集版が、僕が持っていた角川ハードカバー版よりエピソードが多く、いくつかの演出が根本的に違うことに驚く。版によってここまで描き直すものなのか。
ちなみに個人的に僕は「望郷編」はグダグダなうえ感情移入できる相手がいないのであまり好きくない。

【本】『火の鳥(11~12) 』手塚治虫

「乱世編」あらかじめ決められた物語の構成(プロット)を守るためキャラクターの主体性が犠牲になっているように見える。
確かに歴史・運命は抗えないものだがそれは後で俯瞰したときにしかわからないことで、あくまでもキャラクター自身が歴史を作るのだ。そう見えないということはキャラクター造形がズレているか、歴史が間違っているかどちらか。
火の鳥「黎明編」と「未来編」の奏でる大きなエコーが途切れかかっている?

【本】★『137億年の物語 宇宙が始まってから今日までの全歴史』クリストファーロイド

宇宙が始まってから現在までの一三七億年の歴史をを二四時間(一日)で区切って書かれている。本全体の五分の四が残り一秒(人類の文明の一万年)の記述に費やされており、現在に近づくほどページ記述の密度が跳ね上がっていく。
そういえばこのまま進めば未来はすごいことになる……と物心ついたころ僕はワクワクしていたのだが、火星に人類が到達することもなく人工知能が生まれることもなく、しかしネットや携帯というものが発達して、現実というものはすごいとすごくないの間の煮え切らないところに落ち着くのだな……と思った次第。

メモ:
●カモノハシは哺乳類で唯一、電流センサーを備えている。くちばしの中。

●人口が四七五人を下回ると近親交配のおそれ。アボリジニは五〇〇から八〇〇人単位の村で生活。

【本】『ヨハネスブルグの天使たち』宮内悠介

簡易な文章なのに、それがまとまって段落になると頭に入ってこない不思議さ。
状況説明をするとスタイリッシュさを削ることになることはわかるが、スタイリッシュさを残してわかりやすくできなかったのかな。
あたかも当然のことのように状況説明を飛ばして物語だけは進んでいくから、置いてけぼりの不安な気持ちが最後まで残った。

【本】『ケン1探偵長 (全2)』手塚治虫

『透明人間』が一番映画的で面白かった。その他の話は全体的にコマ割りが細かくて読み進むのに苦労する。
途中、唐突にコマが大きくなっているページが続く。単行本化に合わせて修正したものと思われるが、話の整合性そのものより、線が太くなったり細くなったり切り抜いた修正部分のズレが目立ったり絵柄が変わったり、修正したことで目立つ絵のアラが気になって仕方がない。

【本】『おれは猿飛だ!(全2)』手塚治虫

あとがきより、連載当時すでに忍術と妖術をごっちゃにした忍者モノは(連載が)「終わってホッとするほど」「アナクロニズム(時代錯誤)のはなはだしいもの」だったということだが、よほど不本意だったのか作品発表から二〇年後の全集刊行の際に流行りを取り入れて描き直し、「奥の手ジョーズの術!」「南蛮秘術エイリアン!」「忍法スターウォーズ!」と登場人物に叫ばせている。
それがかえって「アナクロニズム(時代錯誤)のはなはだしいもの」を際立たせていると僕が思ったこの全集版が出てからさらに三〇年後のいまの話。

【本】『ザ・クレーター(1)』手塚治虫

第五話「生けにえ」はアンブローズ・ビアス「アウルクリーク橋のできごと」から着想を得たものだと思われる。
処刑される寸前の男が川に飛び込み息つく暇もない逃走劇の末、愛する妻のもとに辿り着いて抱擁する。しかしそれはアウルクリーク橋の横で今まさに処刑された男が一瞬の間に見た夢であった……というもの。
手塚氏の「生けにえ」は舞台を現代に換骨奪胎したうえ、古代アメリカというエキゾチックなパウダーをふりかけている。