【本】佐藤優『読書の技法』

「功利主義者なので、無駄な読書はしない」という佐藤氏の言いようにのけぞる。
全て何かを得るためだけに本を読むって逆に難しすぎる。

この世界は何か目的があってデザインされたわけでないので、どんな行動をしても生きていく限り何処かしこに無駄が生じる。
睡眠時間も無駄だし、食事も無駄だし、服を着ることだって無駄……しかし人間は無駄そのものに楽しみを見出すことができる。
だから、佐藤氏の言う「無駄な読書はしない」は、自分にとっていま無駄に思えるものを読んでも結果的には役に立つこともあるので無駄な読書などない……そんな遠回りな言い回しかと僕は思った。

だが読み進めていくうちに、佐藤氏が目的以外の読書は結構真剣に無駄だと考えていることに気づく。
(その禁欲的な姿勢が修行僧を連想させ、佐藤氏がプロテスタント神学を学んでいたことの関連性を考える)
そういう無駄をしないための『読書の技法』なら、僕は根本的に佐藤氏と考えが噛み合わない。
僕が今まで携わってきた漫画は娯楽(無駄なこと)が目的で、直接的に人に役に立つことではない。
逆に言えば、完全に役に立たないことばかり作ることも難しい。

ということで功利的な目的半分、娯楽半分ほどほどなバランスでこの本を読む。
佐藤氏の勉強法など腑に落ちるところもあったので、この本から学ぶことにする。