【本】『3001年終局への旅』アーサー・C・クラーク

映画『2001年宇宙の旅』を通じてニューエイジ世代に大きな影響を与えた象徴であるモノリスが、巻を追うごとにその神秘性が薄まり(『2010年宇宙の旅』では高機能の道具「スイス・アーミーナイフみたいなもの」と表現され)、この巻ではとうとう人類によって斃されてしまう。

『2001年宇宙の旅』のテーマ曲「ツァラトゥストラかく語りき」が象徴する、ニーチェの言う「超人への道」が新しい段階に達した。
この巻を読んでから映画と小説の『2001年宇宙の旅』を振り返ると、深い含蓄があることに改めて気づかされる。
僕にとって『3001年終局への旅』は触媒のようなもの。

モノリスを作った魁(さきがけ)種族が、木星の生物を全滅させ、人類やエウロパ人の進化を促進させたり知性を与えたり、やりたい放題。
知能が高い(道具を使いこなす)ことがよきこととして、ある星系の生命の進化を促進させたり滅ぼしたりする傲慢さ、帝国主義時代の欧米キリスト教文化圏とアジア・アフリカの関係のようだ。

『2001年宇宙の旅』でスターゲートを通過して高次元の存在となったボーマンが「人間性を剥ぎ取られた」というような描写が繰り返し出てくるけれども、そもそもクラークの描くキャラクターは元から人間性に乏しく、正直その差がよくわからない。

途中でハル9000(HAL 9000)とボーマンを区別するのが面倒くさくなったみたいで、登場人物も作者も彼らをまとめてハルマンと呼び出したことに苦笑。