【本】 ケン・リュウ『紙の動物園』

アメリカのアジア人作家という意味では現代的だが、内容的には懐かしい雰囲気のセンス・オブ・ワンダー。
東洋的な部分と西洋的な部分が混じりあいそうで混じりあっておらず、一部対立しているところが興味深い。

主人公があくまでストイック。
ドラえもんで言えばのび太が主人公でない、出来杉君やしずかちゃんが主人公のような、広がらない物語が多い。
例えば表題作「紙の動物園」、主人公は生きている折り紙を使って調子に乗ることはない。
利用したり喜んだりしない。
センス・オブ・ワンダーな遊びに主人公はあくまで禁欲的な態度で接するのだ。

(いくつかの例外があるが)基本はそういうテイストの物語が多くて、そこが僕には不満だった。
もっと弾けてもいいじゃないか。
自由に物語が飛躍しない。
後天的に物語り始めた優等生が書いたSF小説のような印象。