【本】スタニスワフ・レム『泰平ヨンの未来学会議』

前作【本】『泰平ヨンの航星日記』スタニスワフ・レムは短編集だから設定や面白さを優先にして泰平ヨンというキャラクターを意図的に薄く描いているのだろうと思ったが、長編である今作もよくわからなかった。
レム氏の描き方がそういうものなのだろう。

それでも長編だからかさすがに泰平ヨンに恋人らしきものができてもそれにしてもそっけなすぎる。
恋人より、知り合いの教授のほうが自分にとって(世界にとって)重要ということなんだろうか。

読んでいて筒井康隆『脱走と追跡のサンバ』、眉村卓『幻影の構成』などが頭に浮かぶ。
あるいは映画『MATRIX』、『インセプション』、『トータル・リコール』、『ビューティフル・ドリーマー』……現実と夢の境界線が曖昧な、悪夢のような世界でもがく主人公、現実を何度も飛び越えても見えてくるのは新しい夢世界。
スラップスティック・コメディ風に描かれた夢は、シリアスな悪夢よりも恐ろしい。