文明が滅びつつある世界を描いたIF小説かと思って読んでいたら、上巻のラストから怒涛のセンス・オブ・ワンダー爆発な展開、一気にハイブローな世界観のSFに変わる。
物語とは往々にして自分探しの象徴であることが多いが、この物語はあるポイントを越えると、主人公の行動が比喩でなく本当の意味の自分探しに変わる。
上巻に描かれていたことが、その一点を越えてから読み直すと違った風景に見えるSF的にも物語的にも途方もない仕掛けだ。
饒舌過ぎてわかりにくい部分もあるが、全部通して読むと理解できるようになっている意外と親切設計。
青春一八切符で大阪から東京へ帰る鈍行の一〇時間ですら、読み切ることができないほど長くて重い内容だったが、そのスリリングな体験は何ものにも代え難かった。