【本】『成田亨作品集』成田亨

僕が絵を描いたのはオバケや妖怪や怪獣の模写からだった。

小学一年のある日、模写だけで飽きたらず
「そうだ! 自分で怪獣をデザインしたらいいんだ!」
オリジナルの怪獣を描き始め、友達と怪獣ごっこしながら自分怪獣図鑑を作り、漫画(ノゾトラマン)を描いた。
これが僕の絵と漫画のルーツ。

ガラモン、ケムール人、ブルトン、ジャミラ、バルタン星人、ゼットン、ビラ星人、メトロン星人、チブル星人、エレキング……当時好きだった怪獣のほとんどが成田亨氏のデザインだったことを、後に知る。

ウルトラシリーズ以前の怪獣はゴジラなど恐竜や動物をベースにしたものが多かったが、高度なコラージュ、そして無生物的な要素の挿入、抽象化……成田亨氏は現代美術的な概念を取り入れ、怪獣の概念を大きく塗り替えていった。
ドドンゴやペスターなど、一人の人間が入って怪獣を演じるというぬいぐるみの概念の逸脱。
ガボラやケムラー、ザラガスなど形にギミックがあり段階を経て怪獣が変身する遊び心。
何よりも新しいヒーローのアイコン、ウルトラマンの創造……観る人の感情の動きを投影させる、シンプルがゆえに複雑な感情表現を可能にした菩薩像のようなマスク。

怪獣の、独特な三白眼も懐かしい。
これもよくよく考えてみれば成田亨氏オリジナルのアイコンだ。

夜行バスで半日かけて富山県立近代美術館に到着後、二時間かけて何度も成田亨展を鑑賞したあと、五〇〇〇円でこの本を購入……ことあるごとにこの本は読み返すだろう。