【本】『SFマガジン700【海外篇】』山岸真・編

七〇〇号を数えたSFマガジンで今まで掲載されたものの中から、単行本未収録作品中心に編まれた短篇集。
発表期間が最初と最後では六〇年以上開いているので、一冊の本として通して読むには頭の切り替えが大変で、手こずる。四時間かけて読了。

メモ:
「遭難者」 アーサー・C・クラーク
3点。
プロットむき出しで投げ出されたのような。六〇年代より前のSFはこういう科学的なセンス・オブ・ワンダーむき出しのものが多かったような印象。

「危険の報酬」 ロバート・シェクリイ
6点。
達者なエンターティンメント。当時なら申し分ないが、現代ならオチにあと一工夫必要。発狂したというラストはもはや、夢オチのように定型化している。

「夜明けとともに霧は沈み」 ジョージ・R・R・マーティン
3点。
センス・オブ・ワンダーと物語が結びついていない。これは地球上でも何なら日本の山奥でも成り立つような話。

「ホール・マン」 ラリイ・ニーヴン
7点。
キャラクター、ストーリー、センス・オブ・ワンダー全てが上手く絡み合っている。

「江戸の花」 ブルース・スターリング
7点。
前情報がなければ、日本人が書いた時代小説風ホラーと思ってもおかしくない。よく調べられているしエンターテイメントとしても面白い。魔物が『ファウスト』における悪魔の取引のように文明の象徴。西洋という文明の出会い。サイバーパンクが新しいテクノロジーの出会いを描いているとするならば、一見無関係に見えるこの物語もそういう意味ではサイバーパンク的だとか。

「いっしょに生きよう」 ジェイムズ・ティプトリー・ジュニア
9点。
今まで読んだティプトリーの中で最もわかりやすかった。希望のある展開がうれしい。しかしぎゃくにティプトリーにしては無邪気すぎることの謎は残る。取り込まれることの恐怖をあえて書かないことの意味は?

「耳を澄まして」 イアン・マクドナルド
4点。
次の世代の可能性? よくわからなかった。

「対称(シンメトリー)」 グレッグ・イーガン
3点。
空間の上下、時間の上下がない世界。よくわからなかった。

「孤独」 アーシュラ・K・ル・グィン
7点。
大長編を読むのに匹敵するほどのボリューム。男女間の問題にここまで固執する部分がよくわからない。が、時代が時代なら誰もが考えていたのだろうか。

「ポータルズ・ノンストップ」 コニー・ウィリス
7点。
筒井康隆っぽい。こういうSFっぽくないワンアイデアものは何も考えず読むことができるのでよい。途中まで実在のSF作家を架空の作家と誤読していた。

「小さき供物」 パオロ・バチガルピ

7点。
物語的な云々そのものより、発想とイメージが全てを上回るぐらいにインパクトがある。

「息吹」 テッド・チャン
10点。
興味深い。センス・オブ・ワンダーと物語が切り離すことができないぐらい結びついている。宇宙の熱的死のメタファー。ルネサンス期の人体解剖、天文学的な発見……人間社会の風刺、隠喩もあって、SFの優等生のような物語。そして希望もある。

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