【本】『賢者の石』コリン・ウィルソン この物語には筋らしいものはほとんどない。 主人公の思考の流れを追っているだけ。ここで起こっていることは全て主人公の主観から見た出来事なので、事実かどうかはっきりしない。 行く手を阻む巨大な力と主人公は対峙するが、それ自体全てが主人公の妄想に過ぎないかもしれないのだ。 もっと言うと、そこまで見越して著者が書いているのか、その本気度すらも推し量ることができない。 奇妙な、しかし一生に何度も読むことができない、途方もないとしか言いようのない小説。