【本】『どろんこ先生』手塚治虫

手塚氏には数少ない学園モノ……というより教師モノ。
手塚氏の弱点はいくつかあるが、記号的でない身の回りの日常/リアルを蓄積させていくものがそのうちのひとつ。サービス精神が旺盛ということもあるだろうけれども、リアルさよりもドラマチックな方向へ物語が進みがちなので、ふとした感情や機微は、大きな物語の流れの中に吸収されていく。そういう要素は無いというわけではないが、大きな要素ではないようだ。
せっかく学園モノっぽい微妙な心の機微で登場人物が揺れる展開から始まっても、最後はフィクション色が強いオチになってしまい、どうもしっくりこない。