【本】『マコとルミとチイ』手塚治虫

手塚氏が描いた最も私小説的なもののひとつ。さわりだけ漫画家のプライベートっぽく描写しても、最後はいかにもフィクションっぽい話に着地してしまう。稀代のストーリーテラーである手塚氏はしかし細部のリアルの積み重ねが苦手なのだなとつくづく実感。
その言い訳かあとがきにて「最近のデビューしたての若い漫画家たちの作品は、大半が自分の体験(ことにキャンパスの恋愛や学校経験)を生に出した漫画で、私漫画に近いのかもしれません。それはそれでよいのですが、こういったものは体験をひととおりかい終えてしまうと、その漫画家は一発屋で終わってしまいます」のこと。
しかしこれはまさに僕自身のことを指しているようで、そういうところからずっともがいているなあと自戒も込めてメモ。

絵柄は手塚氏の何回目かのピークで、丁寧かつ動きが流麗。