【本】『ジョナサンと宇宙クジラ』ロバート・F・ヤング

今回で再読四回め。学生のとき五冊一〇〇円で購入、一〇代、二〇代、三〇代とことあるごとに読み返してきた。
読んでいて懐かしさがこみ上げくるが、それは大学時代の初読時もそうだったので、きっとこの作品には人を普遍的にそういう気持ちにさせる何かがあるのだろう。
ノスタルジックなものに対する思い入れの強さは、ジャック・フィニイ氏と似ている。物語作りはフィニイ氏のほうが確実に達者だが、「たんぽぽ娘」のような、少女がらみ(あるいはボーイ・ミーツ・ガール的な)の題材は確実にヤング氏のほうが現代の日本人に受けるだろうと思うし、昨今の出版ラッシュはそれを裏付けている。
表題作「ジョナサンと宇宙クジラ」について、ギリシア神話と聖書をうまく引用して作った話だなあと感心する。最近、自分が神話を集中的に読むことが多かったので余計そう思ったのだが。ヤング氏はそんなに複雑なプロットを駆使しないぶん、こういうところに凝っている。

メモ:
九月は三十日あった:家庭教師ロボットが過去の古典の改変テレビドラマに怒り狂う。
魔法の窓:九月は三十日あった、と内容的に似ている。窓の外。画家。少女。
ジョナサンと宇宙クジラ:宇宙クジラを一七歳の少女に擬人化させるその発想がいま現在の日本の読者向けすぎ。今の日本人と場所も年代も違うのにどういうシンクロニシティ?
サンタ条項:悪魔が「サンタが本当に存在したら」男の願いをかなえると……少しこじつけすぎに思う。星新一氏のような。
ピネロピへの贈りもの:
雪つぶて:アンブローズ・ビアス 『アウル・クリーク橋でのできごと』的なもの? 着陸した宇宙人の円盤に向かう兵士、幼いころの雪合戦の記憶が交差する。
リトル・ドッグ・ゴーン:瞬間移動する犬。
空飛ぶフライパン:ピーナッツバター作戦のような。
ジャングル・ドクター:少女のように見える精神科医の宇宙人が誤って地球に転送され、妻を亡くしたアル中男のもとへ。
いかなる海の洞に:海辺で拾われてきた巨人族の彼女、その姉、大金持ちの主人公。ラストが切ない。