【本:漫画】カート・ビュシーク(作) アレックス・ロス(画)『マーベルズ』

アレックス・ロス氏の絵は技術的には素晴らしいが、僕はどうしても水彩画のタッチに物足りなさを感じる。
透明度の高い水彩という画材の問題(ガッシュも使っているらしいが)で、絵の中で真っ黒な部分を作れず、全体的にメリハリのない中間調子の多い色づかいになってしまう。
自分がこれほど白黒はっきりしたペンのアウトラインに思い入れがあるなんて思わなかった。

物語に関しては、マーベル・コミックスの世界で活躍するヒーローの物語が、すべて同じ時間軸にあったという体で、ジャーナリストが実際に体験したこととして、(世界で起こった事件とも絡め)編年順に描くというものだ。

「あの出来事の裏にはこういうことがあって、物語につながりがあったのか!」
マーベル・コミックスを読んでいる人にはそれなりに読み応えがあるものなのかもしれないが、知識のない僕はあまりピンとこなかった。
一番不満を感じたのは、この物語の主人公(語り手)が完全な傍観者で大きな物語のムーブメントにほとんど関わってこないということだ。
逆にマーベルコミックを知っている人からすれば、この語り手に思い入れなどないからこの程度の描写でじゅうぶんなのだろうけれど。