【本】高橋和夫『イスラム国の野望』

放送大学の高橋先生の授業はここ数年繰り返し観ている。
大学講義らしくないエンタメ要素があるうえ専門家ならではの通り一遍でない見方も入り、考えされることが多い。
最近、ISIL(イスラム国)の日本人人質事件絡みでテレビに出演されることが多くなったが、この書籍はその直前に書かれた本。
だがほぼ最新のISILについての情報が書かれている。

イスラム教が指導者をルックスで決めるケースが多く、アルカイダもやISILもそうだということを知り驚く。
血筋とかルックスとか運命論じゃないか……と思いさらにイスラム教について調べてみると、奴隷から君主になった者(しかも女性)も存在していたり、それ以外の要素も複雑に絡んでいることがわかる。

日本では一部の過激派の印象で危険な宗教と捉えられることも多いが、それは信じている人の解釈の問題。
貧しかったり資源が集中していたりと地政学的に複雑な場所で現在信じている人が多いからそう見えるだけ。
人類の歴史の大きなスパンで見るとキリスト教、ユダヤ教、仏教など他の宗教(あるいは共産党などの政治思想)と変わらない。
むしろ沈滞していた中世のキリスト教文化圏より、はるかに進んでいたのは当時のイスラム圏だった。

国力が、人口と陸軍力と経済力で決まるなら、これから数十年で世界の国力分布は大きく変わるだろう。
大きな力を持ちつつあるイスラム教圏で、現在進行中「アラブの春」の段階のひとつであるISILがどうなるのか、ますます目が離せない。