【映画】『フルスロットル』

九〇年代、リュック・ベッソンには騙された!
『レオン』でカッコええ!と感動して、
次に観た『フィフス・エレメント』で本格的SF映画っぽい予告だったのに、六〇年代の石ノ森章太郎や手塚治虫氏の漫画を映像化したような映画の出来に驚愕して、
あとはもう何とやら、という感じ。

でも『TAXi 』『トランスポーター』『96時間』……リュック・ベッソン系のヨーロッパ・コープ映画はなんか観てしまう。
いかにも現実を切り取っているっぽくて風刺しているっぽいのに、実際は何も掘り下げず娯楽に徹しているところが逆に潔い。
作家性を入れる余地はいくらでもあるのにあえて「これぐらい」感で仕上げることは、逆に紛れもなく強い作家性があるということだ。
ちなみに「これぐらい」でも、やっぱりエンタメとしてはそれなりに練られているわけで、「これぐらい」のものを大量生産できるシステムを持っていること自体は尊敬はしないけれども、興味深い。

この映画も、デトロイト市の一角、スラム化して壁を作られたビル街、何かを象徴してそうなのに物語の中では形だけしかなぞっていない……そのバランス感覚に舌を巻かれる。
破壊的なまでに楽観的過ぎるラストには椅子から転がり落ちそうになる。
いやいや、そこまでこの悪役はいいやつじゃないでしょ! 人殺してたし、ヤク売ってたし。
安心して観ていられるのは、そこらへんを深く考えずに放り投げているからだろう。
この映画『フルスロットル』自体はヨーロッパ・コープ映画で作られたものをリメイクしたフランス・カナダ合作映画だが、リュック・ベッソンは原作と脚本の関わりで、やっぱりいかにもっぽくて観てしまう。