【本】『 太陽・惑星』上田岳弘

『ニルヤの島』同様去年末からSF界隈で話題になっていたので読んでみる。
なるほど『ニルヤの島』と似ているところもある。
物語を時系列順に描かず、シャッフルしながら絵を構成するように並べていく。

絵画と違って小説は一度に情報を出すことが出来ないので、時系列がバラバラの情報を線条的に読み取っていかざるを得ない。
頭のなかで再構成しなければならないから厄介だ。

二つの短編が収録されているが「太陽」と「惑星」に直接的な関連はない。
二編とも、物語の最初から最後まで把握している神の視点の誰かが時系列をシャッフルされた状態で提示される。
カート・ヴォネガットと語り口が似ているかもしれない。
「太陽」は叙述そのものにギミックはない。
神の視点である作者が、連想ゲームのように環状に情報をつなぎバランスをとりながらラストまでに読者に伝えなければならない情報を伝達する。
「惑星」は時間軸がバラバラであることにSF的ギミックがあり、それ自体がラストに繋がる。
表現は似ているが方法論は違う、逆に言えば方法論は違うが表現は似ている。
どちらかといえば著者の上田氏の中では表現が先にあって方法論が後のような印象。

内容自体は極めて僕が好きなタイプの小説。
個人的な内面のことと究極の外の世界がアクロバティックなアイデアで結び付けられる。
いわゆるSF小説ではないが、SF的な物の考え方で書かれた小説だ。
SFはもうジャンルでなく、物の考え方になっていることを実感する。

最近、好きなSFなのに理解することができず悲しい思いをすることが多い。
ハヤカワSFコンテストに入選した『ニルヤの島』が理解できなかっただけに、この本は素直に面白く感じることができ嬉しかった。