【本:漫画】『キーチVS(8~11)』新井英樹

先日ようやく最終巻を読む機会を得たのでさかのぼって読み返す。
結局、最後まで読んでも主人公のキーチが具体的に何をしたかったのかわからなかった。
僕にとって新井英樹氏の漫画は難しい……どう捉えたらいいのかわからない。

大学生の頃、後輩が僕にこう言った。
「漫画を描こうと思っていたんですが、『ワールド・イズ・マイン』を読んだらそういう気持ちがなくなるぐらいショックを受けました」

『ワールド・イズ・マイン』も『キーチVS』も抜群に面白い漫画だ。
新井氏は連続して興味を引く (プロットとしての) クリフハンガー的な面白さを熟知していて、読みだすと途中で本を手放すことができなくなる。
そしていつも主人公の破壊衝動のようなものや鬱屈した感情に圧倒される。
最後は、圧倒的な迫力の前に何が起こったのか把握できずに茫然としてしまう。

おそらく新井氏は物語中の「主人公が社会と対立して起こす化学反応」に興味があって、その過程の先に何が起こるかは目的としていないのだろう。
『キーチVS』のクライマックスは、震災やオウム信者の逮捕など時事ネタが取り入れられ、臨機応変に物語が変化していることがわかる。
作中の社会だけでなく現実の社会とも化学反応しているのだ。

結論を見るために描く、その行為自体が重要。
僕の文脈にはない思考だから捉えにくい。