【本】『幼年期の終わり』アーサー・C・クラーク

ファーストコンタクトテーマに、(ニーチェ的な)人間から直線的に延びる超人思想が絡んでくるのはクラーク氏の個性なのだろう。

同じ地球に住む人類同士ですら場所や時代が違えば理解し難い断絶ができるし、まして昆虫や植物など違う生物種でコミュニケーションできるかどうかはさだかですら無いのに、はるか隔絶した文明を持ち進化の先にいる異星人オーヴァーロードが、人類と価値観を共通していることに驚く。

いかにも欧米文化圏に住む人の発想らしい。

未来について「国が消滅して」「英語を話さない人はいなくなった」という描写にも強烈な違和感。
人間には、他者から独立したい←→他者に取り込まれたい(所属したい)、という相反する本能があって、どんな未来になってもどちらか完全に寄ることはなくその中間を揺らぐだけ。
将来、国の垣根がなくなっても、民族や文化のアイデンティティが強まり、方言や言語が完全に消滅することはない。
そもそも翻訳機が発達すれば、英語を話すことができないハンデもなくなるだろう。

欧米の、人間的な価値観が、宇宙や未来にまで及ぶと思っていた頃の懐かしい寓話。