【本】『オン・ザ・ロード』ジャック・ケルアック

足掛け一〇日、一五時間以上かけて読了。
段落もなく、四〇〇ページぶっ通しの文章を読むことはかなり困難だった。
一冊の本では僕の人生の中で最も時間がかかった部類に入る。

地図帳を買ってきて横に開き地名を確認しながら風景を思い浮かべて読む。
ただの文字情報なのに、この本と点で接している自分の中に広がる記憶が、実際にあった出来事のように追体験させる。
逆に言うとこの小説に描かれていることも点だが、その奥に膨大な量の人生と世界が広がっているのだ。

僕も、主人公の憧れのニールのような友達がいたことを思い出す。
高校卒業後の彼との二人旅、どれだけ楽しかったことか。
旅の途中、僕に対する彼の態度が悪くなったときは、自分の不完全さ足りなさを呪った。
それから徐々に自分の憧れが幻想だということを気づいていくわけだが、それが決定的になったのは二〇〇八年末、東京に訪ねてきた彼に会ったとき。
何のときめきも感じなかった。
おそらく彼の中に自分の可能性を託していたからで、それが消えたということは、そのとき、三六歳にして僕の青春が終わったということだったのかもしれない。