【本】『タイタンの妖女』カート・ヴォネガット

大学院在籍時(二五歳前後)以来の再読。

途方もないスケールのナンセンスSF。
半村良『妖星伝』のアメリカ版のような。
『妖星伝』はもがきながら生きる市井の人々に日本的な(仏教的な)優しさが向けられているように感じられたが、『タイタンの妖女』は(神からの天罰に対する恐怖のある)キリスト教的価値観がバックグラウンドにあるためかもっと容赦ない筆致だ。

運命と自由意志についての物語。
主人公のとっている行動が実は自由意志でなくコントロールされたもので、舞台が変わるたびさらに外側へマトリーショカのごとく、入れ子構造で主人公を操る存在が現れる。

僕も自分の意志だと思っているほとんどのことは、外側の何かによってコントロールされていると思う。
それは主に食欲と睡眠欲と性欲で、あとは高次元のはざまから僕を見守ってくださっている大暗黒陰神様に違いない。