僕には、一九二〇年代と言う時代か、フランスという場所か、ラディゲ氏という作家の個性か……そのどれが理由かわからないが、どこまでが意図的なのかわからなかった。
物語が心の動き中心に描かれてはいるが、リアリティを感じることができず観念的に思える。
そのあと、ラディゲ氏によって先行して書かれた『肉体の悪魔』を読んで少し理解が進む。
『肉体の悪魔』がA面ならこれはB面の関係。
あちらはリアルタイムの心情の変化を描いていて(ルポルタージュや実況中継のように)、こちらはチェスのようにコントロールされた状況下での心情の変化を描いているのだ。