日別アーカイブ: 2015年7月21日

【本】井ノ口馨『記憶をあやつる』

でも脳科学はやっとアメフラシやハツカネズミの頭のなかがうっすらとわかった程度。
それから二〇年後の未来の人工知能なんてたかが知れすぎている……

スリリングな思考実験を提供してくれる書籍だが、腑には落ちることがない。
消化できずにノドに挟まったままのような読後感。

『ゼンデギ』と関連して思ったこと。
キャラクターは、作り手が観客に向けての共同幻想を介したローカルな人工知能のbot。
同人誌や二次創作でbotが作り手の手を離れて動き出す。

宗教そして神こそ共同幻想のbotの最たるもの。
聖書や預言者を介して神は言葉を伝える。
人工知能が神になる短編を星新一氏は書いていたが、共同幻想が本当の神を作ることもあるかもしれない。
(三浦建太郎氏の『ベルセルク』はそういう設定?)

【本】グレッグ・イーガン『ゼンデギ』

先日読んだ同じイーガン氏の『白熱光』に比べると、これはだいぶ普通の小説で肩透かし。
普通に起承転結がある、構成がさほどトリッキーでない。
しかしイーガン氏はやはり一筋縄でいかない。

舞台は二〇年後のイラン。
癌に侵された主人公が死ぬ前に自分の思考をコンピューターにアップロードする。
ヨーロッパのジャーナリストだった主人公は友達(死後、子供を引き取ろうと言ってくれた)のイラン人の倫理観が信用出来ない。
そこでアップロードされた自分の人格(人工知能)に、子供を教育させようと考える。

SF系の読書会に参加するとこの小説に対して肯定的な意見が多かったので驚愕。
善意の友達を信用できず自分の分身を作ろうとするこの小説の主人公に僕はとうてい感情移入できない。
そもそも、その行為自体が倫理的にダメではないか。

今から毛が生えたレベルの人工知能って、高度なbotにしか過ぎない。
最適な言葉を選んで言うだけで、人間のような思考ルーチンはない。
外から見て人間と変わらないリアクションをとる、というだけで魂のない存在に倫理観を託すぐらいなら、元ジャーナリストなんだから口述筆記(Siriのようなものも相当発達しているだろう)で言葉を残せばいいじゃないか。
SF的設定にするために無理に作ったプロットのような気がしてならない。

【日記】15年07月21日(火) 体重61.0kg

蒸す暑さの仕事部屋、上半身裸で作業していると、
右手でペンを握り、空いた左手は乳首へ延びてしまうのは必然。

四時四五分起床。
早寝のリズムができてきたのか、昨日に比べると目覚めがいい。

五時五分より公園を三八分ジョギング。
比較的覚醒度の高い状態で走ると、空の高さやほとばしるような森の緑が、意識の中にビンビン伝わってくる。
Tai Phongのアルバム『Windows』を聴きながら走る。
昨日はイヤホンケーブルの断線で途中から聴くことができなくなったので、今日はじっくりと全曲聴く。
リズムよりも、日本的な情緒に訴えかけるような曲が多い。
歌詞が日本語だったらそのまま八〇年代の歌謡曲みたいだ。
擬似ノスタルジックの世界にたゆたいながらゆっくりと走る。

帰宅してすぐに原稿に取り掛かり、仕上げ。
一一時に脱稿、編集者にメールで送る。
返事待ちの間に積ん読状態で放置していた本を読んでいく。
うだるような暑さ、寝室の網戸の隣に座椅子を置いて扇風機で足を冷やしながら読書。
何かと意識がそれ、思うように読み進めることができない。
二三時半就寝。

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