何が偽証なのか、物語の肝になる言葉に一四〇〇ページ読んでもまだ到達しない。
少なくともどういう部分が物語(事件でなく)の焦点なのかもう少し絞ってもよかったのではないかという気がする。
自殺/他殺された少年の真相を調べる……ということは、確かに学校レベルなら大事件だが、大人が長時間かけて読む小説としては推進力が弱い。
第I部で『カラマーゾフの兄弟』を想像したが、第II部に限って言うと『カラマーゾフの兄弟』ほど普遍性がない。
自分や自分の周囲にいる人が抱えている問題とずれたところに登場人物がいるから、ちょっと引いて見てしまう。
宮部みゆき氏というブランドがなかったらおっつかっつ読んでいなかったかもしれない。
日別アーカイブ: 2015年5月22日
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【本】グレッグ・イーガン『白熱光』
何度もイーガンを読もうとして挫折した挙句、満を持しての初読了イーガン!。
難しい!
この手の厚さの本なら三〜四時間で読破かな〜と思って手に取ってみたものの、読み終わるまで一〇時間以上かかってしまう。
国語力の問題でなく細部が理解できないことがもどかしい。
あとがきで作者自身がこの『白熱光』を読んだ人に共通の誤読があると四つあげていたが、多くの人がそう誤読してしまうのなら、書き手の問題もあるのではないか?
(SFをかなり読んできたのが)自分がジャンル小説としてのSFが苦手だということを実感する。
要素としてセンス・オブ・ワンダー要素が入っていると楽しめるが、純度の高いSF小説は読んでいて楽しさより苦痛が勝つ。
(自分はSFを好きだと思って読んできたけど、雰囲気が好きなだけで本当はもっと自分に合うものが他にあって、SFに傾けた自分の時間は無駄だったかもしれない)
好きとか嫌いは恋愛や宗教と同じなので、何がスイッチになっていきなり好悪が逆になるかわからない。
……………………
(15年06月10日付記)
上記のようなことを読了後つらつら思っていたのだが、時間が経ってもう一度考えてみると自分が好きなものは極端なモノや変なモノ。
論理と感情で、感情が勝ってしまい『白熱光』を受け入れなかった自分だが、逆に論理で考えるとこんな偏った小説は滅多にない。
自分はこんな「変な」小説と出会ったことを素直に喜ぶべきではなかったのか。
歴史に詳しくないとわかりにくい小説もあれば、文学的に高度な小説もあるだろうし、人の機微に長けていないと理解できない小説もある。
数学や物理学や天文学に精通していないと理解が難しい小説もまた「アリ」だ。
ということで三週間経って、自分の中で『白熱光』の評価が高まっている。