日別アーカイブ: 2015年5月10日

【本】夏目漱石『行人』

描かれている出来事のレベルで言えば、電話や鉄道、車……現代と基本的には変わらない。
しかし変わらないところが多いとよけい現代との微差が気になる。

主人公の兄が悩んでいることが現代的……おそらく現代なら考えても仕方のないことだと一笑に付されるようなことを真剣に悩んでいる。
(結婚した相手が本当に自分を愛しているのか?)
逆にそれまで(鎖国時代以前)の日本的価値観でもそれはそういうものだと割り切っていたのではないか。
兄は、急激な西洋文化の流入とそれまでの日本的価値観の対立の犠牲者?

僕が今たまたま平行して読んでいる宮部みゆき氏(現代の大衆文学)と違い、実は主人公がどう考えているのかという完全な答えは最後まで明示されない。
主人公を誘うような素振りを見せた兄嫁、それは主人公の自意識過剰だったのか、本当に誘っていたのか。

ニーチェやテレパシーの概念のような物を扱っている。
ギリギリ江戸時代生まれの人が、明治時代の末期に書いた小説に最先端の(同時代の)言葉が出ていることに驚き。
当時は時事ネタを取り入れた流行作家、現代で例えば伊坂幸太郎みたいな感じだったのだろうか。

【日記】15年05月10日(日) 体重61.5kg

エンタメばかり読んでいると、文章の奥にある意図を読み解く能力は上がらないことを実感。

五時起床。
朝食後、粘り気の強い眠気に負け、布団に潜り込みまた二度寝してしまう。
九時ふたたび起床、昨日の続きで夏目漱石『行人』を読み始める。
ギリギリの時刻までかかってようやく読了、読み返して吟味する余裕はない。
一三時半に慌てて家を出て電車に飛び乗る。
電車の中でも読み返しているがなかなかに難しい。

一五時に四谷の喫茶店で文学の読書会。
若者から中高年までの男女が集まって感想を言い合う。
いろんな人の話を聞かないと多様な捉え方を知ることができないと実感。
本をそれなりに読んできたつもりだが、自分の文学的素養の浅さに愕然とするばかり。

一七時前に読書会が終わり三鷹のクロッキー会に向かう。
間に合うつもりで時間を組んでいたのに、人身事故があったため中央線が止まり動かない。
総武線の各駅停車に乗り換え、地を這うようにノロノロ移動。
当然ながら遅刻。
出鼻をくじかれ、クロッキーする手がうまく動かない。
二〇時より懇親会、思っていることがうまく話せないもどかしさに身を焦がす思い。
二二時会場を出て二三時帰宅。
今日の出来事に興奮して寝付けず、午前一時就寝。

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