主人公の「イ・ジュング」とライバルの「イ・ジャンソン」。
お互いイ理事と呼ばれ、名前も姿(薄い顔、オールバック)も似ているので区別がつかない。
人間関係も複雑で、最初はとっつきにくい。
韓国映画はこういうところがあるが、それを乗り越えると面白い。
江戸時代、封建体制が完成した日本で、もともと生まれながらの主君に尽くすという考え方「二君にまみえず」が、澱のように僕らの価値観に積もりたまっている。
赤穂浪士のように、不合理であっても最初に所属していた組織に忠誠を誓うことが美徳とされている。
物語上、損得や情で立ち位置を変えることはあまりよいことではない。
もとの組織を裏切るなら、その登場人物がよっぽどひどい目にあったときだが、それでも相応の因果が降りかかる。
しかし、大陸では封建主義でない考え方も一方では受け入れられているようで、この韓国映画の主人公は潜入捜査で黒社会に潜入した後、ずっと立ち位置が揺らぎ続けている。
最終的に決意してからやっと所在なさ気だった主人公の顔つきが変わる。
その決断に、実は少なからず僕は動揺してしまったのだが、その動揺に自分の日本人的な部分を見てしまったようで、映画を観て自分の立ち位置を知ったという次第だ。