こんな本を読んだ!」カテゴリーアーカイブ

本を読むことはあまり得意じゃないのですが、頑張って読んでいます。
 
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【本】『黄色い鼠』井上ひさし

オーストラリアに住む邦人が、戦中の日本人収容所虜囚の手記をもとに小説に再構成した……という体の物語。
この小説を書いた当時、作者の井上ひさし氏がオーストラリアに移住していたことをあとがきで知る。それを踏まえると井上氏が実在した手帖をもとに再構成したノンフィクションという設定のメタフィクションなわけで、あとがきから読んでいたらより楽しめたのに、と残念に思う。

異郷の地で日本人とは何かを考える主人公。
フランス人ならフランス語、ユダヤ人なら宗教……日本人は?「答えはたぶん〈同じ血〉だ」
井上氏もオーストラリアで日本人とは何か考えたのだろう。僕も宮古島からさらに離島へ向かうフェリーの中で、日本人とは何かと考えながら読み続ける。

アボリジニの死生観が興味深い。双子はカンガルーなど他の動物の魂が間違って入ったもの。間違えて入った赤ん坊を間引きする。
捕食したもの、殺したものに生まれ変わる。
蛇に噛まれて死んだら蛇に、太陽に灼かれて死んだら太陽に、自殺して死んだら本人(人間)に生まれ変わる。

そして僕にとって日本人とは何か、自分にはまだ現実感がなく、わからない……

【本】『誇りある沖縄へ』小林よしのり 企画・編著

沖縄の平和運動のその偽善について。
小林よしのり氏の思想の是非はともかく、自分の頭で考えて行動するところは尊敬できる。
宮古島の旅館の本棚にあったということは、宿の人が読んでいたということなのか。この本を読んでどう思ったのか聞きたいところ。

沖縄とひとくくりに言っても、沖縄本島、宮古諸島、八重山諸島ではアイデンティティが異なり、たとえば八重山諸島のなかでも石垣島と与那国島、波照間島など島ごとに豪族が覇権を争っていた……ってフラクタル理論
http://ja.wikipedia.org/wiki/フラクタル
みたいな話だなあ。

【本】『賢者の石』コリン・ウィルソン

この物語には筋らしいものはほとんどない。
主人公の思考の流れを追っているだけ。ここで起こっていることは全て主人公の主観から見た出来事なので、事実かどうかはっきりしない。
行く手を阻む巨大な力と主人公は対峙するが、それ自体全てが主人公の妄想に過ぎないかもしれないのだ。 
もっと言うと、そこまで見越して著者が書いているのか、その本気度すらも推し量ることができない。
奇妙な、しかし一生に何度も読むことができない、途方もないとしか言いようのない小説。

【本】★★『脳の時間割』築山節

著者の『脳が冴える勉強法―覚醒を高め、思考を整える』をサラリーマンの一日のスケジュールで例えてマニュアル化したもの。

メモ:
●音読……朝の習慣としてお勧め。目から入力した情報を口から出力することで、情報を自分の中に刻みつける、脳の準備運動になる。

●脳を元気にする食事“まごたちはやさしい”
ま……豆類大豆や枝豆とか豆腐
ご……ごま、木の実類
た……卵類
ち……乳で乳製品
は……ワカメ・海草類
や……野菜、果物
さ……魚、貝、肉類
し……しいたけ、キノコ類
い……芋類

●仕事の前に机の整理

●脳の活動のピーク
朝一一時と夕方四時から五時→難易度が高い仕事を当てる。

●仕事のスタートは難易度の低いものから→
スムーズに進めるほど脳は喜ぶ。

●仕事にはひとつずつ、締め切りを設定する。

●五〇分働いたら一〇分休むリズムを作る。

●脳を上手にだます→作業、勉強するときは「これは自分に役に立つ」と考えるようにする。

【本】★『何者』朝井リョウ

自分はTwitterに関してあまり積極的でないし、周囲の人々が別アカウント作ってまでつぶやいていることに違和感を持っている。
アカウントを作ることによって自分とは違う何者かになりたい、という気持ちはわからなくもないのだが……そこまでしてコミュニケーションとりたい相手がいない。友達を渇望していない。

気持ちがわかる、わからない、がグルグル回っている。

ラスト周辺、創作者として自分に跳ね返ってくる言葉が多い。
何かしようとしている人を揶揄するのはよくない、というのも原則としてはわかるのだが、そうなってくると何も言えなくなるわけで……言うのなら創作者として跳ね返ってくることを覚悟して正々堂々と言え、ということか。小林よしのり氏みたいに。

【本】『アジア三国志』ビル・エモット

日本人や中国人、韓国人のアジア観は読むことが多いけれども、欧米の知識人が日本を、そしてアジアがどう捉えているのかはあまり目にしてこなかったので、大変興味深い。
上から目線が大変気になる。さんざん世界を破壊してきたイギリス人のくせに。

中国について
これからすっと巨大になり、大きなミスをしない限りその勢いが止まることはない。
中国政府の求心力はイデオロギーではなく、経済発展。

日本について
すでに老境の域に入っている。
バブル時代は日本は必要以上に自分を大きく見せていて、今が相応の地位。
歴史修正主義者に注意しろ。もっと歴史を直視して、ドイツを見習え。

インドについて
矛盾に満ち混沌としているが、少しずつ未来へ向かって前進している。
ただしあと五〇年は中国に追い付くことはできない。

韓国はアジアのノイズにしか過ぎない。他のアジア諸国も同じく。

【本】『成功する人の時間術―人生を変える5パーセント効率化のすすめ』ユージン・グリースマン

成功する人というか、成功した人にしか許されない方法が多い。

秘書がブロックしてアポイントが取りにくい相手には早朝、あるいは深夜、秘書がいない時間に電話をかけましょう。
……相手は余計気を悪くしないか心配だ。

面談が終わりだ、と思ったときは途中で後ろを向いて自分のデスクに向かう。
「私は、後ろを向くことで、会話を切り上げようとします。不作法にするつもりはないのですが、あえてそうするのです」
……ちょっと自分にはそれが許される人間関係が想像できない。

ただ、目標が曖昧なままだと成功から遠ざかる、ということは心に留めておくべき。

【本】『脳に効く「睡眠学」』宮崎総一郎

冒頭から滋賀医大の「睡眠学」を推している。

メラトニンは睡眠を促す効果のほか、性的成熟を抑制するはたらきもある。北極圏のエスキモーは昔、冬場に月経が止まっていた。春に生まれる子供が多くなるので生き残る確率が高くなる。
メラトニンには抗癌の作用もある。先進国で夜間に働いている女性の乳ガン率、発展途上国の四倍。
メラロニンはトリプトファンで作られる。
トリプトファンの多い食材は、納豆など大豆加工食品、乳製品、ナッツ、魚、肉、鶏卵、バナナ……朝食で摂取することが夜のメラロニン分泌に最適。

メモ:
●学習の後になるべく早く睡眠をとる。その後に気分転換にテレビを観たりすると忘れてしまう。

●夜に明るい画面を見ていると交感神経が刺激されてしまう。

●仮眠を一五分以上とらない。

●昼寝は二時から四時の間を狙う。逆に一九時から二一時の間はもっとも交感神経が活性化しているので眠れないし、眠っては駄目。

●寝る二時間以内の時間に激しい運動をすると眠りを妨げられる。

●夜遅く食事を摂ると体温が上がり、睡眠を阻害する。

『睡眠の質を高める七つの習慣』
1:「眠る時間」より「起きる時間」にこだわる

2:部屋のカーテンを一〇センチ開けて眠る

3:朝食と昼食を一日のスケジュールから外さない

4:テレビニュースは朝に見る

5:夜遅い食事は少なめに摂る

6:眠たくなってからベッドに入る
(※睡眠薬を飲んだ場合には、すぐに床に入る)

7:それでも眠れないときは、軽いストレッチ

【本】『時間の波に乗る19の法則』アラン・ラーキン

クリントン元大統領がこの本を読んで夢を叶えたとあとがきに書いてある。それは最高の賛辞だ。僕もアメリカ大統領になってブスな実習生とHしたい。

独自のルールが多く、なかなかに実行は困難。もっと余裕のあるときに読みなおそう……

【本】『あなたの1日を3時間増やす「超整理術」』高嶋美里

ビッシリ改行がない長いプロフィールをカバーと奥付の二箇所、同じ内容が貼り付けられている。おそらく著者の知ってほしい物語なのだろうけど、自画自賛臭がすごい。
今までの時間術、整理術の中でここまでデジタル化について言及している書籍は少ないのに、「財布に会員カードが大量に入っている状態は、財布の中が整理されていない状態であり、金運も下がります」のくだりのアナログ臭に転びそうになる。
ちなみに「私のアドバイスでこれを行った受講生さんは、翌年金運が上昇して、貯蓄が200万円増えました」とのことだが、そんなことイチイチ報告に来る人が本当にいるのだろうか。もしいたとして、収入が上がったことと財布の中を整理したことを関連させる人って、どうなんだろう。

メモ:
1:デスクの整理
●机の中に入れていい文房具は20個まで。(何処に何があるか把握できるように)
●持ち運ぶセットを作る。(透明なメッシュのポーチ)

2:書類の分類
●今日やること 
●五分でできること
●期日があること
●期限がないこと
四つに分けてケースに入れる。

●今日やることは毎日空にする。

●五分でできることリストを作って隙間時間にどんどんやる。

●期日があることは、期日ケースに入れてすぐ忘れる。(自分で設定する早めの期日)

●期限がないことフォルダのものは、定期的に半日以上のまとまった時間をとって整理。

3:紙のデータ化
●名刺はスキャンして全部捨てる

●その場ですぐ整理する。

5:データの分類
●ルールにしたがってフォルダを作る。

●ファイル名には検索ワードをすべて盛り込む
140712ミリオンナックルズ

●整理できなフォルダはとりあえずフォルダに、一週間に一度、スケジュールに組んで整理する。

……………………………………………………

●データの索引を作る

●定型化で時間を生み出す
メールは定型文→短文登録

●雑務は全て隙間時間に終わらせる。

●整理された状態を習慣化すること。
一日の終りに状態をチェック→一日の始まりもする仕事をチェック

●時間を決めたら絶対に先送りしない。

【本】『手塚治虫のえほん館(全4+別2)』手塚治虫

『もえよドラゴン』
『ねずみじょうど』
『空とぶラビ』
『かわいそうなぞう』
きわめて項数の少ない短編のオムニバス。それぞれあまり共通項がない。
人を喰ったような、絵と関係のない字だけのどんでん返しで唐突に終わったり、どういう意図か理解に苦しむものもある。

別巻について
『びいこちゃん』
『ビス・ビス・ビス星ものがたり』

『びいこちゃん』は五八年、『ビス・ビス……』は六三年頃で手塚氏の比較的初期の作品。
びいこちゃんは単独の読み切り絵本としては最も完成度が高い。絵の具が色あせているところ、が妙にノスタルジックな気持ちをかきたてさせる。
『ビス・ビス……』は前半は普通にSF風絵本だったのに、後半は『ハトよ天まで』や『オズマ隊長』のような絵物語に作風が変わる。ほぼ普通の漫画、カラーですらない。ところがラストはまた冒頭のような絵本に戻る。時間かページ数の都合? 
ひねりがあって起伏に富み、手塚氏の絵本の中では一番僕好み。

【本】★『みずは無間』六冬和生

みずははあくまでも象徴としての存在で、直接物語に絡んでくるわけではないのな。

何が起こるかわからないこういう物語だから、意識や記憶という概念は、現実のみずはと何処かでつながっていて、何らかのSF的トリックでみずははずっと生き続けていて、最後は主人公と彼女が再会する、みたいなハッピーエンドを想像していた。
ところがこういう物語にも関わらず、最終的なこの小説のリアリティラインは意外と高かった。自分が思っていたよりはるかにシビアな結末になってしまい、ちょっと不思議。
好きな部分、そうじゃない部分も含め、実にオリジナルな小説。
実はこうなんじゃないのか? いやこうくるのか……と展開を読んだりや裏を邪推したり、刺激的で、知的な遊びを楽しむことができた。

【本】『手塚治虫エッセイ集(1) 手塚治虫自伝』手塚治虫

鉄腕アトム』がアメリカで大ヒットし、ウォルト・ディズニー氏と会い、人生の頂点で自伝はいったん終わっている。
その後の虫プロ倒産からの『ブラック・ジャック』の成功による復活を経た手塚氏の自伝を読んでみたいところ。

作風の広さは、幼い頃からの好奇心旺盛な気質を反映したものだろうか、落語、演劇、昆虫、映画、医学、漫画、アニメーション……手塚氏は実にいろんなものに興味を持ち、手を出し、それが漫画に反映されている。
人生において何でも無意味なことはないのだ、と力づけられる反面、手塚氏ほど情報処理能力が高いからこそ役に立ったわけで凡人である自分は無駄なことは無駄……と思ったり。

【本】『手塚治虫小説集』手塚治虫

主に一九五〇年代から六〇年代までに書かれた、日本ではまだ商業的なジャンルとしてSFが成立していなかった頃の小説が集められている。
江戸川乱歩や海野十三を彷彿とさせるような懐かしい匂い。
冒頭の長編『蟻人鏡』は、当時の少年もの読み物の水準を鑑みればじゅうぶんだと思うけれども、現在のリアリティラインから考えると、あまりに異人種の人間と同じすぎる情緒にかえって感情移入できない。もう少し蟻人独特の考え方、価値観が反映されていればよかったのに……って二〇年以上前に亡くなった人が六〇年前に書いた小説にいま何言ってんだ俺。

【本】『手塚治虫のまんが専科』手塚治虫

小学生が漫画家を目指して編集部、漫画家と会い、大人になってからもその夢を忘れず、アシスタントを経て持ち込みを続け、漫画家になる。

人気の上にあぐらをかき堕落していくアシスタント先の先生。
芸術家肌で現実離れしたことばかりいう漫画家崩れの人々。

主人公は打ち切り、連載漫画のアニメ映画化、盗作騒ぎ、信じていた人の裏切り、様々な経験をしてあらたな選択をする……

漫画入門にこういう余分な物語性と個性を入れることが、手塚氏らしくて興味深い。

【本】『手塚治虫シナリオ集』手塚治虫

『100万年地球の旅 バンダーブック』等のアニメや芝居の脚本。
完成したものはどれも未見。

ハリウッド映画は自分と違う人種、宗教を持つ国家を異質なものとして見たてそれが映画に反映されている。『猿の惑星』の猿は日本、『スター・ウォーズ』における帝国軍は画一的な思考、クローンなどから連想する共産主義……
しかしそういう作話術からしても手塚氏の描く異人種はあまりに人間的すぎて、現代からみるとそれが古臭さや垢ぬけない印象を想起させるのかな、と思う。

『ユニコ魔法の島へ』はシノプシスだが本当によく出来ていて、あらすじだけなのに涙が出そうだ。

【本】『手塚治虫エッセイ集(2)』手塚治虫

アニメ一般論、初めてのアニメ作りの苦労、海外のアニメ概況……などなどアニメのこと中心のエッセイ集。

考えてみれば手塚氏は、日本初の週一で放映するアニメーションを作ったわけで、そういう意味ではパイオニアだ。
漫画→アニメという流れだけでなく、アニメ→漫画……アニメ先行企画のタイアップ漫画も本人が描いていたわけで、本当に何でもやるなあ。

【本】『手塚治虫対談集(1)』手塚治虫

さまざまな職業の人との対談集。手塚氏の文化人的な一面を見る。
横尾忠則氏との対談……僕が美術系大学に通っていた頃、氏の講演で伺ったことと同じことを手塚氏にも言っていてちょっと受ける。

「宇宙意識に目覚めないと、いまの世界は変わらない」
もう四〇年近く前から言っているねんな。
宇宙意識、宇宙意識。

【本】『手塚治虫エッセイ集(3) 』手塚治虫

いろんなメディアに掲載されたこまかいエッセイを集めている。
多角形の宝石のように切り取られた、手塚氏のいろんな面を知ることができる。

「転向マンガ家」
何度も何度も漫画を方向転換して(転向して)、そのたび非難を浴びながらも生き残って来た自負を書いている。
しかし今翻って手塚氏の漫画全集を読みかえすと、細かい表現の違いはあるけれども、物語に対するフェティッシュな愛情、読者への過剰なまでのサービス精神……など手塚氏が手塚氏たる核の部分は終生かわることがなかった、ように見受けられる。
ということはおそらく、その細かい表現の違いが、漫画の本質に関わることなのかもしれない。

【本】『手塚治虫対談集(2)』手塚治虫

二つのロング・インタビューが収録されている。
その二つとも鼎談相手の中に松本零士氏が入っている。そういえば対談集(1)にも松本氏が入っていた。エッセイの中でも何回か松本氏に言及している。
今まであまり意識しなかったけど、藤子・F・不二雄氏、藤子不二雄A氏、石ノ森章太郎氏、赤塚不二夫氏……などトキワ荘のメンバーより松本零士氏の方が手塚氏と関係が深かったのかな。
どうも僕の世代は『まんが道』の影響が強すぎて、手塚氏をトキワ荘に君臨する神のように思ってしまう。

巻末の「日本SFマンガの変遷」は、別冊奇想天外のバックナンバーで手元に持っていた。

【本】『手塚治虫漫画の奥義』手塚治虫

漫画の歴史と、手塚氏自身の歴史についてのロングインタビュー。
「マンガの将来を考える」の章は、手塚氏がいまの漫画の現状をどうとらえているのかを知ることができる貴重な資料。

「キン肉マン」に言及する手塚氏ってなんか面白い。

【本】『手塚治虫エッセイ集(4) 』手塚治虫

紀行文中心のエッセイ集。
宇宙観から地球観へ、そして徐々にピンポイントで世界の各地を旅した話に移行していく。
手塚氏が、南米やイースター島へ精力的に旅行していた頃、古代宇宙飛行士説を唱えたデニケンの超古代文明本がベストセラーになっていて、手塚氏の旅行記もそれを意識したものになっている。
同時期に発表した『三つ目がとおる』は超古代文明にまつわる漫画だったが、手塚氏は超古代文明ブームをフィクションと捉えており、あくまでそれを現代文明の比喩として描いたことがこの旅行記の眼差しではっきりとわかる。

【本】『手塚治虫対談集(3)』手塚治虫

漫画家、クリエイター中心の対談集。また松本零士氏と対談している!

●この本でも『キン肉マン』に何度も言及。

●星野之宣氏、大友克洋氏の絵は麻薬だが、描きやすいとも言う。疲れたらつい、大友氏のタッチがでてしまうとも。

●ラスト、石ノ森章太郎氏との対談、手塚氏の死後に掲載されたもの。対談中に胃を全部切除したことなど話している。脾臓の調子も悪いとか。
こういうものを描きたい、まだ描きたいことがたくさんある……手塚氏はこれから自分が描く予定の作品をずっと語っている。
それは自分の末期癌である容態を知らされていなかったからというよりも、死が近いことを薄々気づいているからこその焦りと無念のように見受けられる。
石ノ森氏と二人して憂いていることが、漫画のファッション化。最近の漫画家は気楽に描いて鬱憤がないように見えるとのこと。核戦争後を描くことはむしろ簡単、陳腐。白紙にはなんでも描ける。ファッションとしての舞台だ。近未来こそ描くことが難しい……

【本】『 手塚治虫エッセイ集(5)』手塚治虫

キネマ旬報、パンフレットなど映画関係のエッセイ中心。
『人類創成』のアノー監督との対談を取材風に手塚氏自身が描いているのだが、人間性が垣間見えて、非常にイイ。

(アノー)「黒澤明はすばらしい!」
(手塚)「日本だからって提灯持ちはいいよ」
(アノー)「いや、ほんとだ。ぼくは『デルス・ウザーラ』のすごさにひかれて、『人類創成』を思い立ったくらいだ。(中略)」
(手塚)「『将軍』はどうですか」
(アノー)「いや……もうとても」と、アノーは顔をしかめて「最悪!」

【本】『アニメーターズ・サバイバルキット』リチャード・ウィリアムズ

レッスン1! 音楽を聴きながらの創作をやめよう! 
でも昨日読んだ手塚治虫氏のエッセイでは、仕事場で流す音楽のため音響設備にどれだけ金をかけたかということが書かれていて、まあ人それぞれだよね、と思う。
どんなジャンルであれ、意識を高く持つことが必要という象徴的な事例で、解釈は人次第ということか。

走る、歩くという基本的な動きの説明だけで全体の半分近く費やされている。ここで、漫画を描く上でも参考になるいくつかの素晴らしい示唆を発見することができた。

僕は今まで漫画を描いてきたにも関わらず、絵に動きという概念がないまま何となくやってきたので、目からウロコが落ちる思いだった。

【本】『何をやっても続かないのは、脳がダメな自分を記憶しているからだ』岩崎一郎

僕はアルコールもタバコもギャンブルもやらないが、それは依存症になりやすく弱い自分を自覚しているからであって、何かのきっかけがあれば負のスパイラルに入って抜け出せなくなる。今もそういう状態だ。

この書籍は、どうすれば依存や悪い習慣から抜け出すことができるか、自分でコントロールする方法について、脳科学の見地から具体的に書かれている。

タイトルからもっとスピリチュアルな、あるいは自己啓発的なものを想像していたのだが、その手の本が「前向きに考える」「悪口を言わない」などを前提に話を進めていくことにくらべ、この本は脳の機能を詳しく調べるとそういう「前向き……」なことをしたほうが脳のダメージが少なくて済むという結論に至る……そんな逆の流れが興味深い。

昨今の脳科学の進展は、目覚ましいものがあると感慨深い。アハ!

メモ:
●行動の九割は意志と無関係。

●習慣は、特定のシグナルがくると自動的に反応する。
朝→シャワー→着替え 

●習慣を変えるためには、潜在意識に訴えるのがよい。

脳は、目にした字の影響を受けやすい
味の強さは自体は変わらないが、味の心地よさは変えることができる。
EX.味の素を、
グルタミン酸ナトリウム→味気なく
濃厚でおいしい→味の心地よさが高くなる

EX.ダイエットなら
・食事のときにお気に入りの食器に移し替えてみる
・よい思い出の音楽や自然の音など
など五感に訴える環境で食事する。

●習慣に根性論はいらない。
EX.マシュマロの実験
1:歌を歌う、一人ゲームをする、目を閉じるなど、注意を別の方向に向ける。
2:マシュマロを塩辛い硬いものだと思ったり、頭の中でイメージを操り、工夫して誘惑に負けないようする。
∴「意志力」を鍛えるためには、「根性」よりも「想像力」を使ったほうが、余り無理をしないで習慣や行動を変えることができる。

●考えは紙に書くだけで扱いやすくなる。
自分の考えを紙に書く→
捨ててしまう:比較的忘れやすくなる
取っておく:意識に残りやすくなる

●苦手なこと
自分主観で想像する:苦手意識が強くなる
客観的な第三者視点で状況を想像する:苦手意識を取り除きやすい

●新しい習慣は、二〇〇回繰り返さないと身につかない

●習慣化するためには、脳が快になるような達成感が得られないと難しい

●ドーパミンが習慣化を促進:アミノ酸のチロシン→チーズ(パルメザンチーズ)、納豆、カツオ→習慣化を促進したい、ストレス状況下で集中したいときに有効。

●三日坊主をなくす方法
1:行動をきっかけにする。(逆に時間をきっかけにするのは有効でない)

2:きっかけ行動にする行動はわかりやすく特徴的なものを。
EX.起床、お風呂、食事……

3:行動の流れに注意を払う。
EX.電車に乗ったら英会話を聞く、など。流れ作業にしやすいもの。

4:協調計画を作る。
EX.ダイエットのとき、甘いモノを食べない→半分だけ食べる。美味しいものは週三回のご褒美の日に……など。

5:メッセージを使う。
定期的にメッセージを確認する。

6:自分の行動を管理する、もしくは記録をつける。

●計画を達成しやすいように前日あるいは事前に用意をする。

●人が行動を変えるときじゃアクション六〇秒以内の反応が大切。
早起きそのものが快になるよう、六〇秒以内に脳に刻みこむようにする。
EX.起きたらすぐに好きな音楽を聞く。
EX.スタンプカード方式

●習慣逆転法:癖をしていないときは褒めてもらう。
・アメとムチでなく、アメとアメなし
・イメージトレーニング→自分の癖が出る場面をイメージしてやめるところもイメージ。

優先順位
1:誘惑のない環境を作る。

2:その習慣ができないように別の行動をする。

3:詳細な記録をつける→自分を客観的に見る行為。

●自分のあやまちを認め、人を赦せる状態になると、痛みやストレスなどの感覚が和らぐ→依存症などの習慣を断ち切るためには、人生の意義を見い出し納得することも必要。

●海馬は一日七〇〇の細胞が新しくなる。

●習慣を変えるには身体を動かすことが一番。ただし、自発的でないとストレスホルモンが分泌される。

●脳を変える秘訣は、運動・食事・人間関係・考え方の四つ。
運動:有酸素運動は脳を活性化する。

食事:頭がよくなる食べ物オメガ3→魚に含まれている。逆にジャンクフードは麻薬と同じ。

人間関係:悪口は猛毒…子供のとき悪口を頻繁に聞く環境ほど、不安、鬱が多い。

考え方:感謝すると脳の厚みが増す。感謝日記をつけてみる。

【本】『ハリウッド脚本術』 ニール・D・ ヒックス

僕が映画について知らないことが多いせいもあると思うが、翻訳された文章が(日本語として)ぎこちなくて、何を言わんとしているかわからないことが多過ぎて、読んでいてちっとも頭に入ってこなかった。
とりあえずあと一年、もう少し映画を観てから再チャレンジしてみよう。
就職活動や大学入試などで失敗した人が何度でも挑戦できる社会でよかった!

【本】『手塚治虫エッセイ集(6)』手塚治虫

家族のこと、自分の体験談など身近に起こったこと中心のエッセイ集。

虫プロ倒産前後のエピソードが痛々しい。しかし結果論だが、才能以上のものを得るために必要な経験だったのではないか。
全集を通して読むと、その前後で手塚氏の作風が変わっていることが理解できる。類型のないキャラクターが造形、物語作りの深化、一時期荒れていた絵柄も徐々に新しい段階に入っていく。

それにしても手塚氏はいろんなことに手を出している。本業の漫画だけでなく、映画、アニメ、文学、演劇、科学……それ以外もアナウンサー試験に合格したり、落語家に噺を習いに行ったり、もちろん医者としては医者博士号を持っているわけだし、全くこの人はどれだけ引き出しがあるのだろう。

【本】『手塚治虫対談集(4)』 手塚治虫

バラエティに富んだ対談集。

僕は個人的に哲学者鶴見俊輔氏との対談が興味深かった。

手塚氏にとって悪人は煩悩に溺れている存在とのこと。
ある感情に捉えられて身動きがとれない、ひとつの特徴が強調されるから悪人になる。
逆に言えばいろんな悪人を足していけば平凡なひとりの人間になる。

鶴見氏いわく、この数百年イギリスは自分が悪いとこともやっていると思ってやってきたとのこと。イギリスは古い民主主義の国で、政治が腐敗することは自明の理だということがわかっている。自分の犯した悪をどう向き合うか、そのやり過ごし方がわかっている。
ヒトラーも自分の悪い部分はわかっていて、その悪をひきうける覚悟だった。
一方アメリカは無邪気に自らの正義を確信している。日本も戦前はそうだった。
逆に今の日本は価値相対化が進んで、悪のレッテル張りが難しい。

手塚氏いわく、だから勧善懲悪の物語を作ることが難しいとのこと。