こんな本を読んだ!」カテゴリーアーカイブ

本を読むことはあまり得意じゃないのですが、頑張って読んでいます。
 
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【本】『ブッダ(全14)』手塚治虫

大学卒業後僕に上京して集めた漫画のほとんどを実家に置いてきてしまったので、これも学生時代以来の再読。

ブッダの生涯を描いたものだが、ブッダが生まれる前そしてブッダの幼年から青年時代にかけては何巻もかけてじっくりと描写されているのだが、悟りを得てからの描写が駆け足過ぎる。
特にブッダの影=シャドウとしてのダイバダッタが弱い。
(キャラクターとしても、実際に対決してからも)
悟りを得たブッダが、間断無く襲い来る現実の苦難を、それまでとどう違う乗り越えかたをするのか見たいわけで……もう少しじっくりと対決を描いて欲しかった。

仏教画に準拠するためかブッダが加齢とともに太っていくのだが、それが漫画的に微妙な影響をもたらす。
何故ならば漫画の苦悩表現は、やつれていること。
悩み苦しんでいるのに太っていると、深刻なシーンでも「陰でええもん食ってるんちゃうか!」と(僕に)勘ぐらせてしまう。

「先のことを考えるから悩むのだ」とブッダは言うが、そもそも先のことを考えることができるのは人間の脳の前頭葉という部位が発達しているからで、これが人間が人間たらしめているところだ。人間と動物の一番大きな違いが前頭葉の発達と言われている。
最近、炭鉱事故で前頭葉を破損した人についてのドキュメンタリーを観たのだが、先のことを考えられなくなっていると同時に衝動的な行動をしがちになり、ビックリするぐらいの短気になって人格が崩壊していた。

前頭葉に傷を与えるロボトミー手術は患者の苦悩を軽減することに成功したが、副作用として感情、意思、人格の鈍化が見られたという。

前頭葉を持っているから先のことが不安になるが、前頭葉を失うと自制心がなくなる。
つまり悩むから人間なので、悩まなかったら人間でないのだ。
人間でありながら悩みを自分の中で解決するとは、人間であって人間でないこと。ブッダが言っているのは二重に難しいことだ。
人間を超えなければ出来ない……だから解脱というのか。

【本】『MW(全3)』手塚治虫

毒ガス兵器MW(ムウ)によって人生を狂わされた二人の男の話。
『ブラック・ジャック』と同時期に連載。手塚氏のストリーテラーとしての魅力が爆発。
(手塚氏が絵に思い入れが少ない頃なのか)全体的に描線は雑だが、漫画の構成がノリにノッている。
手塚氏の青年漫画のなかで最も成功した部類に入ると思う。
同性愛、猟奇殺人の描写が注目されることもあるけれども、手塚氏自身は「流行ってるから描いてみました〜こんなん受けるかな?」程度のものでそんな思い入れは無いと思う。それでここまでの作品を描くことができること自体が天才過ぎる。

個人的にMW(ムウ)はムウ大陸からとったと思う。そんなん流行っている頃だったし。

【本】『グリンゴ(全3)』手塚治虫

日本からはるか離れた異国の極限状況で「日本人とは何か」を問う。
抜群の面白さでジェットコースターのように物語が二転三転突き走る。
最後の六話ぶんは病室のベットで描かれたとのことだが、正直言って入院前後の絵柄や物語の変化が全くわからない。
冒頭から面白さのテンションが時間に比例して上昇する途中で、前兆もなくプツンと途切れる。手塚氏の死去による唐突な絶筆。
戦後漫画の成長とともに自ら進化し、しかも絶筆になった作品がさらに成長していく過程だった……手塚氏の存在そのものが人類の至宝なのだから、もっと自分を大切にして頻繁に健康診断を受けて欲しかった。

【本】『ブッキラによろしく(全2)』手塚治虫

テレビ局のスタジオに住み着いた妖怪ブッキラとダメアイドルのトロ子のドタバタ談、悪役を演じることが多いロックが珍しくいいもん(主人公たちを助けるキャラクター)として活躍。
残念ながら週刊少年誌で九話打ち切り。

一〇年以上前、ドキュメンタリー番組で手塚氏がこう語っていた。
「あと40年ぐらい書きますよ。アイデアだけはバーゲンセールしてもいいくらいあるんだ」
そのバーゲンで買ったアイデアが『ブッキラによろしく』だったらがっかりするなあ……

妖怪を主人公にテレビや芸能界など現代的な要素を入れ、いまの子供にはこういうものが受けるだろうと作ったら、子供だましに終わってしまった印象。

【本】『アトムキャット』手塚治虫

あとがきにて、世の中リメイクブームなのでそれに乗っかろうと思い『鉄腕アトム』をリメイクしてみましたとのこと。
現在、ハリウッドでもリメイクブームで、日本の漫画業界も昔懐かしの続編が盛んに作られているから、きっとこういう周期(あるいは雰囲気)が定期的にあったのだろうな、と思う。
『Dr.スランプ』のターボくんみたく、交通事故に遭った猫を宇宙人が鉄腕アトムのように改造するという他愛のない内容。

ちょっと面白かったのは、空をとぶことをなじられたアトムキャットが「ゾウが空とぶ時代じゃんか」と抗弁するシーン。
ゾウが空とぶ時代なんかあったことがないし、ディズニーの『ダンボ』のことならそれは一九四〇年代の映画だ!

【本】『どついたれ(全2)』手塚治虫

手塚氏の自伝的漫画の一つ。手塚氏以外のキャラクターもはっきりとしたモデルがいるらしい。
大阪大空襲の焼け野原から大阪を舞台に、手塚氏と彼に邂逅した男たちが戦後どう生きていくかを描こうとしたもの、読者の反応が芳しくないため途中で未完に終わっている。これから面白くなりそうなところでバッサリ終わっている。逆に言うと退屈とまではいわないが、この時点では面白くなりそうな取っ掛かりだけしかない。
この作品が幸せな形で完結することによって、その先に凄みのある私小説的作品を手塚氏がいくつも手掛けることになったのではないかと思うと、未完で終わったことが悔しい。

【本】『冒険ルビ』手塚治虫

なんかすごいラストだった。

友だちのY君がビル管理人のバイトをやっていたとき、「このビルのテナントの鍵を全部渡せ!」とヤクザに恫喝された。
Y君は管理会社の上司に相談してその件は何とか事なきを得たのだが、そのときにヤクザの言い分が
「ワシはY君を試そうと思ったんや」
「Y君がワシの口車に乗ってそんな悪いことをする男やないってわかってた」
……いけしゃあしゃあとのたまっていたらしいのだが、この漫画はまさにそんな感じのラスト。

宇宙人から不思議なヘルメットとスーツをもらった小学生のルビオとクリコは宇宙怪物ゾンダと戦う。
アニメを原作とした漫画、タイアップで幼年誌に三本同時連載されたが結局アニメ化されることなく失意のうちに打ち切られたのこと。
手塚治虫漫画全集『ふしぎなメルモ』には 『小学一年生』版が併録されている。そのあとがきにて原稿を紛失してしまって一番面白くないものだけが残っていた……とのこと、おそらくこの本に収録されたもののほうが手塚氏のお気に入りなのだろう。
面白いかどうかは別にしてラストにはビックリさせられた。

【本】『流星王子』手塚治虫

タイトルから流星王子という異星のプリンスが活躍する物語かと思いきや、そういうタイトルの映画にエキストラ出演しているイガグリ頭の太っちょ少年が主人公。ただし、少年の正体は……というところでちょっとしたひねりがある。

併録された『おお! われら三人』のほうが、完結してはいないがキャラの立ちかたという意味で面白かった。
これから、というところで残念ながら打ち切られておしまい。

【本】『大地の顔役バギ』手塚治虫

表題作『大地の顔役バギ』は雑誌の休刊で未完となっている。
動物と人間のそれぞれアウトサイダー同士が、より悪いものと対決するというシリーズもの。似た運命を背負っているものは種を越えて共感できるという手塚氏独特の動物観。

併録作『緑の果て』
種子を植え付け子孫を増やそうとする植物の惑星に不時着した人間、主人公を本当に好きになった植物のとった行動は……
人間は自分がよかれと思ったことを相手にしがちだが、本当に好きな相手なら意を汲んだ優しさをかけてあげることができるのだろうか。優しさというより想像力の問題かもしれないけれど。

【本】『ピロンの秘密』手塚治虫

カストル星の王子ピロンは大臣の謀反により星を追われ地球へ逃げてきたが……
ラスト一ページの暴力的なハッピーエンドに仰天。
併録『お山の三五郎』
山奥のタヌキの学校に転校してきた少年とタヌキの交流を描く。
当然の帰結でわかってはいるが切ないラスト。

【本】『あらしの妖精』手塚治虫

悲劇的なラストと思いきや、わずか半ページで暴力的なハッピーエンドに!
手塚氏の五〇年代の幼年誌、少女誌はこんな感じの取って付けたようなラストが多い。
併録「こけし探偵局』
主人公パコちゃんの「こわい」ということを全然知らないというキャラクターが面白い。

【本】『チッポくんこんにちは』手塚治虫

ネズミに味方するネコ、チッポくんの活躍譚。初連載の五七年から七三年まで三度間をあけながら、雑誌を変え、形式を変え(最後は絵本)続けられた。
動物世界で当たり前と思われる(ネコがネズミを食べる)ことを、主人公が違うアプローチで突き崩そうとし、最後にその常識を覆す。動物世界が人間のメタファーでありどういうことを指しているのか比較的わかりやすいが、これを幼年向けの漫画や絵本で表現できる手塚氏の漫画力と志の高さ……

【本】『落盤』手塚治虫

比較的初期の短編が集められている。
表題作『落盤』は芥川龍之介『藪の中』風な物語。
収録作『羽と星くず』について。
赤旗新聞に連載されたSF絵物語。人間によって天使や妖精と思われていた半気体の生命体が落としたエンゼル・ヘアー(ごくまれに空から落ちてくる謎の物質)をひょんなことから裏町に住むカズオくんが拾う、そこから始まるドタバタ。
カズオくんが強制労働の星に送られてしまうあたり、最後はどう考えてもやり過ぎ……というより話に収拾がつけられなくなっている。とってつけたようなラストに脱力。

【本】『ガラスの城の記録 』手塚治虫

冷凍睡眠にとり憑かれた一家の物語。

この漫画のポイントは三つあって、
●冷凍睡眠している時期と期間によって家族の年齢が違う。娘が母親より歳上になったり。兄弟も年齢がバラバラ。
●冷凍睡眠を長期間続けると脳細胞に障害が起きて人格が壊れてしまうらしい。
●主人公一家のエスカレーションしたかたちとして海底で二千年眠った女(超古代文明時代の由来か?)ヒルンが登場する。

人格が壊れてサイコパスとなった長男一郎は殺人を繰り返しながら、ヒルンと逃避行。
未来世界の処刑(人間狩り)から一郎はたくみに逃れ、かつての政府要人たちが冷凍睡眠している「ガラスの城」と呼ばれる施設へ乗り込む途中で雑誌の休刊、いきなり物語は放り出される。
僕個人はこの物語の暗いテイストに心惹かれるのだが、続きを完成させるほどのモチベーションを手塚氏が持ち得なかったということか。

【本】『森の四剣士』手塚治虫

チャカチャカして読みづらかった。
僕にとって戦後まもなくの漫画は読むことに慣れが必要で、ちょっと時間をおくともうリズムがわからない。
そもそも元ネタであるグリム童話の『二人兄弟』を僕は知らない。
そしてどうしてもグリム兄弟の『二人童話』かと思ってしまう。

【本】『HHhH (プラハ、1942年) 』ローラン・ビネ

一気に読むには情報量が多過ぎるので、頭の中を整理しながら少しずつ読み進み、一週間かけてやっと読了。
ナチの高官ハインリヒの暗殺事件を、現代から作者がいかに描写するかという葛藤を交えリアルタイムに再現したもの。
膨大な量の資料をいくら集めても結局、当事者の内面は本人しかわからないわけで、どう描いても憶測になる。
どうすれば作者の主観を廃した純粋な歴史物語を描くことができるのか……
そのこだわり、僕としてはどうしても筒井康隆氏の小説『筒井順慶』を思い浮かべる。
『筒井順慶』はラストで作中の筒井氏の前に歴史上の人物である筒井順慶が現れ対談するというSF的帰結だったが、ローラン・ビネはいかにもポストモダンな割り切れない現代進行形の帰結。

この小説はたしかに野心的な試みだが、一方で「こいつ面倒くさいやつだな!」とビネ氏に対して思ってしまう。

【本】『七色いんこ(全7)』手塚治虫

登場人物が脈絡なく
「日本の国土ッ!」
と叫ぶ。
びっくりして読み返すが、どうも話の流れと関係ないようだ。
その後も何回か
「日本の国土ッ!」
と繰り返されるに至って、おそらく手塚氏が当時流行らせようとした一発ギャグだろうと解釈する。
法則性がわからないため、どういう意味でいつ使うものなのかはわからないが。

代役専門で舞台役者七色いんこは実は泥棒で……
現実を舞台にした人情話、シリアスな作風、プロフェッショナルが常識外の要求をして活躍する……などブラック・ジャックとキャラクターにいくつか共通項が見いだせる。

僕はリアルタイムで読んでいて(しかしエピローグのみ)、作中の「何もしない演技」ってどうやるんだろう……と想像したものだった。今回読み返してもこの漫画の白眉はエピローグで、僕にとってそれまでの名作劇に引っ掛けた内容の物語はその前振りにしか過ぎなかった。

ところで初読からずいぶん後に手塚氏が語った
「何も考えずに描いていたら、エピローグで偶然それまで張っていた伏線が回収できて我ながらよく出来た!」
そんな意味の文章を見かけた。
だとしたら手塚氏が本腰入れて描いていたのはそれまでの前振り部分で、エピローグこそ適当だったってこと?
当初の意図に反しているけど結果オーライだからいいの?
それはすごいの?
すごくないの?
と混乱した記憶がある……
「日本の国土ッ!」

【本】『時が新しかったころ』ロバート・F・ヤング

恐竜時代の地層に人間の化石を発見された。トリケラトプス型のタイムマシンで調査に向かった主人公は、二人の子供(姉弟)に出会う……

自分は一読して、これは作者のヤング氏が現実に実現できない少女趣味を、SFというギミックをつかって達成しようとするリアリティのない話だ、とため息をつき本を置いた。
『夏への扉』を初めて読んだ頃の僕なら、抵抗もなくこの物語を受け止めることができたのだろう。
しかし今の僕がこの物語を肯定することはかなりの困難。
ご都合主義でがっかりするのは、隔絶するほど離れた時代や場所で暮らしている人類の行動パターンや外見が同じなことなどのセンス・オブ・ワンダー部分でなく、恋愛に対しての作者のヤング氏が持っている浅薄な姿勢。まるで中学生のようにてらいがなくすれっからしていない。

しかし時間を置いてもういちど読み返してみると泣けて仕方がない。特にクライマックスからラストに向けてのエピソードが僕の心の奥底に強く訴えかけてくる。
この「てらいのなさ」こそがヤング氏の最大の弱点であり、そして魅力なのだろうと思う。

全く、大人になるに従ってつまらないものの見方になるものだ……先入観と偏見の濁った眼で初読を楽しめなかった自分に失望する。

【本】★『 陽だまりの樹(全11)』手塚治虫

あとがきにて手塚氏は、幕末で曽祖父の手塚良仙が学んだ適塾を、氏の虫プロダクションと重ねたという。
「みなぎる活気とうらはらに誰もが貧しく、秩序も統制もないばらばらの個性の衝突、混沌の中に試行錯誤を続けたあの時代」……適塾を入れ子構造にしてさらに日本の維新と重ねあわせたのだろう。
手塚良仙は快楽主義でいい加減、武士の伊武谷万二郎を無骨で真面目……二人の主人公を描き分けることによって新しい時代をどう生きるかを象徴的に描いている。
二人の共通項は理想主義だが、若さは理想を伴うもの、そしてこの物語は青春ものとしても素晴らしい。
初読時はラストをあっけなく感じたが、今読み返してみると人は自分のピリオドのつけかたを運命に委ねるしかなく、この唐突さが歴史の流れの無常さをうまく表現していると思う。手塚氏自身の死がそうだった。

【本】『ルードウィヒ・B(全2)』手塚治虫

手塚氏は天才を描くのがうまい。自分と重ね合わせて描くからだろうか。
主人公ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェンは理想主義、芸術を至高のものと考えている。
「ルートヴィヒ」と名の付くものを憎む貴族フランツは現実主義、芸術を何かをなすべき手段として用いる。二人の対立を軸に物語は進むはずだったが、手塚氏の逝去により未完に終わる。

最後回は手塚氏が末期癌で入院して代筆せざるを得なかったとのことだが、本人とアシスタントの絵の差がわからない。いい意味で解釈すると極めて汎用性の高い絵柄ということなのだろう。

【本】『プライム・ローズ(全4)』手塚治虫

はるかな未来の地球、戦争しているグロマン人とククリット人はお互いの国の王子と王女を交換する。元はグロマン王女だったエミヤが主人公。しかし対比して描かれるはずのピラール(元はククリット王子)が、中盤から登場するタンバラ・ガイのキャラクターによってうまく機能しないまま物語が終わってしまう。
手塚氏の考えによると、イースター島には二つの民族が敵対していて、戦争で勝った民族が負けた民族を奴隷にしてモアイを作らせた。モアイのような無意味なものを強制的に作らせることにより反逆を殺ぎ、民族淘汰に利用したのだ……そんなこの物語のキーとなるはずだったエピソードも途中で放棄されている。
『ブルンガ2世』『未来人カオス』『アポロの歌』など手塚氏の漫画に繰り返し現れる、人間を試し駒のようにもてあそぶ超越した存在が今作にも「悪魔」として登場する。この未来世界の創成に関わる「悪魔」とも決着をつけることはない。
いろんな伏線をほったらかしてタイムマシンでなかったことになりました!というラストに憮然としてしまう。

手塚氏いわく「SFを意識して描くと、必ずといっていいほど失敗する」ので、今作は「SFをあまり意識しないで描こう」としたとのことだが、読んでみると出だしからいかにノリノリのSF。だから失敗した?

P.S.グロマンって言葉、よく考えるとすごい。

【本】『地球大戦』手塚治虫

併録作『ワンダーくん』ともに動物が活躍する未来SF。五〇年代に描かれたものでコマ割りと絵の密度が高くて読みづらい。
表題作『地球大戦』、悪液を注射されたら悪人になるという設定が面白い。
ウラメシアという名前の国、特に幽霊と関係がない。せっかくだから引っ掛けたらよかったのに。
ラスト一ページまで主人公及び日本はのっぴきならない状況に追い込まれ、もうどうしようもないと思ったら何とラスト数コマで強引なハッピーエンド! 

【本】『ゴブリン公爵(全2)』手塚治虫

手塚氏が少年誌で連載したSF漫画としておそらく最後の作品。
『魔神ガロン』を中華風アレンジしたもの?
殷王朝が守護神として造った巨大な人間型ロボット「燈台鬼」の行動が、操る人の状態によって善と悪の狭間で揺れる。原子力など文明の利器が、戦争にも平和にも使われることの象徴。
タイトル由来のゴブリン公爵、名前の根拠は単に自分で名乗っているだけ。公爵は徳川宗家など貴族の中でもきわめて高い地位。自分で名乗るなんてイイ根性だ。
中国人も日本人も話す言葉が混沌としているところが、現在のリアリズム表現(言い回しや字体で変えたりする)からすると違和感がある。英語や宇宙語などもっと遠い言語ならカタカナ表現にするのが手塚氏の話し方リアリズム。

燈台鬼の顔が『こち亀』の両さんに似ている。http://ecx.images-amazon.com/images/I/51%2BPHKrZjfL.SS500.jpg

【本】『ペン&インク』クローディア・ナイス

例として掲載されているペン画はすごいが、肝心の著者クローディア氏のお手本はショボイ。
この手の技法書はデッサンを重視して絵を写真から起すことをあまり推奨しないものだが、クローディア氏はグリッドを用いるという古いやり方で写真からペン画を起こす。
写真を使うなら今はライトボックスでトレースだろう。僕ももう二〇年近くグリッドを使っていない。
クローディア氏は何故か製図ペン(ロットリング社の)中心でペン画を描く。それもひとつの方法だが、日本ではつけペンかミリペン中心で、製図ペンは主流ではない。寡聞にして知らないがアメリカは製図ペンが主流なのだろうか…… 
僕から見て少しピントがずれているこの本が去年(一三年)新装版が発行されて二ヶ月で二刷。売れてる! 何故?

【本】『ペン画の基礎技法』アーサー・L・ガプティル

基礎がちゃんと抑えてある数少ないペン画の技法書。
この本でペン画を学び上達させることはじゅうぶん可能だと思う。
ただし著者のペン画は古くさく感じる。五〇年以上描かれたものなので仕方ないのかもしれない。そこは新しいペン画を参考にしながら……

【本】★『すごい! 時間管理術』戸田覚

理論的なことより具体的な方法中心。
サプリメントみたいに気軽に読めてしまうだけに、ちゃんとメモをとっておかないとサプリが尿から流れていくがごとく記憶からすぐに排出されそうだ。

メモ:
●先の予定ほど優先的に入れる
●必ず予備時間を入れる
●打ち合わせに伺う時間を自分から提案する。スケジュールにイニシアチブを!
●作業に優先順位はない。内容より時間で決める。時間のかかるものから作業を始める。
●終了する時間から逆算してスケジュールを作る。
●自分がどのくらいで作業ができるか見極めないと正確なスケジュールを組めない。

【本】★『フリーで働く! と決めたら読む本』中山マコト

癖の強いフリーランス論。
ここまで個性のある考え方を持っている人がフリーランスの中でどのくらいいるのか疑問だが、こういう心構えでいようということだろうか。
自分にの甘さを考えると学ぶところが多そうだ。

メモ:
●フリーランスとは「自らの人生に常に主導権を持つこと」
●専門性が不足していては駄目
●仕事を分解してどのパーツが自分に特化しているかを調べる

●金銭的リスクヘッジ
└借金をしない
└極力、オフィスは持つな
└通勤をしない
└スタッフを抱え込まない
└リースを組まない

●何をしたいかではなくて「どう見られたいか」をイメージする
●問題解決力を売る
●徹底して狭く、とことん深く
●キャッチフレーズを作る→オリジナル肩書き
●差別化をしない、先鋭化する。
●コンパクトに生きる
●柱になるクライアントを作らない
●ガイドラインを徹底する……自分の線引をはっきりさせる
↓キャッチフレーズを作ると自然にガイドラインがはっきりする

●名刺
└何をしているのかはっきりさせる
└メールアドレスをひたすら目立たせる
└名刺を相手に合わせてカスタマイズする

●メールの署名に営業させる

●価格で争わない
└戦略的値下げ→仕事を継続するということに目を向ける
└ただ働きをしない

【本】『ミッドナイト(全6)』手塚治虫

タクシー運転手ミッドナイトと乗客にまつわるヒューマンドラマが集められている。
基本的にはテンションの低い絵、今までの手塚氏にはない派手に描きとばしている雑な絵もある。
逆に物語に関しては、珠玉の、といってもいい短編がいくつも入っている。最終巻で主人公がエスパーであることを匂わせる展開が連続するが、これは何かの伏線にするつもりだったのだろうか。残念ながらこの全集版は最終話もおさめられてもいず(別に編まれた単行本では入っているものもあるらしい)、打ち切り同然で終わっている。

それにしてもこの漫画の主人公ミッドナイトがタクシーのライセンスを持っていない理由がよくわからない。
ブラック・ジャックが医者免許を持っていないのは医師連盟に加盟すると決められた料金しか請求できなくなる(真意の程は別にして)……など、物語中でいろんな説明がなされているし、実際に医師免許を取るためのハードルは高いのでのでわからなくもない。
けれどもミッドナイトの場合、普通二種免許を取得する難易度はそんなに高くないはず。面倒くさいから? 免許を取るための時間とお金がもったいないから? それにしてもちょっとした事情聴取で確実に無免許運転で逮捕されてしまうリスクを抱えるほどのことだろうか。

【本】★『入社3年までに習慣づけるスケジュール&時間管理』松尾梓司

時間管理法の中で公式化されているものを集めて項目化している。
この本を読んだだけでは何故こうしなければならないかを把握できたとは言い難かった。自分の行動に定着させるためには何故こうしなければならないのか理屈が書いてある本をさらに読まなければ……

メモ:
●5つのステップで計画をたてる
1:やるべき行動を決める

2:難しいことは細かい行動に分解する
(一つ一つのやるべき行動は難しいものではないから)

3:分解された行動から優先順位を決める
 緊急性高い 納期が迫った緊急トラブル         
 重要性高い 将来に向けた改革
 緊急性低い 連絡事項
 重要性低い 雑談

予定時間を見積もる
(具体的に効率を見定め、予備時間も込み)

「いつから」と「いつまでに」を決める

●4つのステップで計画を守る
1:「いつから」を守る

2:本来期待されている水準を作ってからそれ以上のものを仕上げる

3:定期的に計画を見直す

4:途中で確認する
(中間点を設定する)

●目標を可視化することの重要性

●それでも時間が足りない人は
└細切れ時間を活用
└ついでながらで処理

【本】『夜よさよなら』手塚治虫

七〇年前後から八〇年代にかけて描かれた短篇がとりとめなく集められている。

表題作『夜よさよなら』、少年とテレパシーで話せるサボテンとの交流。
サボテンに対して主人公が努力していない。一方的に搾取する関係。もう少しサボテンに対して主人公が主体的に動けなかったのか。
そしてサボテンがそこまで主人公に一途になる理由がわからない。
異郷の地で孤独と戦う主人公が見た、どんなことがあっても絶対的に自分を愛してくれるものの象徴としてサボテン、ということならいっそうサボテンの顛末は救いがない……