こんな本を読んだ!」カテゴリーアーカイブ

本を読むことはあまり得意じゃないのですが、頑張って読んでいます。
 
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【本】『ノーマン(全3)』手塚治虫

あとがきにて、当時リアル志向だった少年漫画に「あえて」背を向けて描いた冒険SFだとか。
残念ながらその試みは成功と言いがたく、五〇年代の手塚氏が先祖返りを起こしたようにいたずらに扇情的、話があっちこっちへ進み、僕達の住む現実社会との接点もないので感情移入もできず、唐突に打ち切られ納得しがたいラスト。

【本】『物語の命題 6つのテーマでつくるストーリー講座』大塚英志

大塚氏の物語創作入門シリーズ。
漫画におけるテーマは一番地味で実践することが難しい。そもそも僕の周囲の漫画家はテーマを意識して作品を描いていないような気がするし、逆にテーマを意識して描いている人はこの本を必要とするのだろうか。

【本】★『イソップ寓話集』イソップ

元祖自己啓発本。
通して読むとそれぞれの寓話は矛盾しており、一貫性はない。
だからこそあらゆる読者が自分の状況に応じて都合のよい寓話を探しだすことが出来るのだろう……という寓話ができそうだ。

読了時間:6時間

メモ:
三一 ロマンス・グレーと二人の愛人
ロマンス・グレーの男が、若い娘と年長けた女と、二人の愛人を持っていた。婆さんは、自分より若い男と語らうのがきまり悪くて、男が通って来るたびに、髪の毛の黒いのを抜き続けた。若い方は、年寄りを愛人にするのに気が引けて、白いところを抜いた。こうして、両方から代わる代わる抜かれた男は、遂に禿になってしまった。
このように、何につけ不釣合いは怪我のもと。  

三五 人間とサテュロス
ある時、人間がサテュロスと友情を結んだということだ。やがて冬が来て、寒くなった時、人間は両手を口の前へ持って行き、息を吹きかけた。何のためにそんなことをするのか、とサテュロスから尋ねられて、しばれるので手を暖めるためだ、と人間は答えた。
その後、二人が食卓を挟んだ時のこと、料理が大変熱かったので、人間は少しずつ口元へ持って行き、息で冷ました。なぜそんなことをするのか、と再びサテュロスから訊かれて、料理が熱すぎるので冷ますのだ、と答えたところ、サテュロスはこう言った。
「あんたとの友情もここまでだ。同じ口から、熱いものも冷たいものも吐き出すような奴とはな」
そこで我々も、性格のはっきりしない人との友情は避けなければならぬのだ。

六三 弁論家デマデス
弁論家デマデスがアテナイで演説をしていたが、聴衆が身を入れてきいてくれないので、イソップの寓話をはじめました。
「デメテル女神とツバメと鰻が道連れになって、川のほとりにやってきた。ツバメは空へ飛び上がり、鰻は水に潜った」
と、言ったまま、デマデスが次を言わないで黙り込んだので、
皆が「デメテルはどうなったんだ?」と尋ねました。
答えて言うには「デメテルはおまえ達に腹を立てていなさるのだ。国の問題をほったらかして、イソップの寓話なんぞを聞きたがるからのう」
寓意・このように、しなければならないことを等閑にして快楽を選ぶのは、考えのたりない人のすることである。

一〇九 ゼウスと羞恥心
ゼウスは人間を作ると、すぐにさまざまな心の動きを注入したが、羞恥心だけは忘れてしまった。そのため、どこから入れればよいか困って、羞恥心には肛門を通って入ってくれと頼んだ。羞恥心は初めは嫌がり、プライドを傷つけられて憤慨していたが、
ゼウスが強くせがむので、言うには、
「では、次の条件でなら入りましょう。もし他のものが更に入って来たなら、すぐに私は出て行きます」
.男色家が恥知らずなのはこういうわけだ。
淫らな男に対してこの話は適用できる。

三六八 川と牛皮
鼻っ柱のつよい元気者も人生の苦によって地に塗れる、ということ。
川が自分の上を流れて行く牛の皮に、
「何者だ」と尋ねた。
「堅牢無比と呼ばれています」と答えるので、流れでひたひたと揉みほぐしながら、
「別の呼び名を探すのだな。わしが今にお前をふにゃふひゃにしてやる」と言った。

四三四 鷲(ワシ)に乗った鷦鷯(ミソサザイ)
イソップの鷦鷯は鷲の肩に運ばれていたが、突如飛びおりて、先にゴールを切った。

【本】『ミクロイドS(全3)』手塚治虫

二〇年ぶり再読。やっぱり面白い。
僕はこの戦闘スーツみたいな手塚氏っぽいデザインがイイ〜!ともだえてしまうのだが、一般的にはこれが古臭くて敬遠してしまうのだろうか。
昆虫対人類の戦いは、ジョジョ第四部重ちーのハーヴェスト相手に闘うようなもので、仗助いわく「ハーヴェストに勝てるやつがいるとは考えられない」のだ! 実際にこんなことが起こったら人類はボロ負けだろう。昆虫だけは怒らせないようにしようと思った。

【本】『フライングベン(全3)』手塚治虫

超能力をもった犬の兄弟が環境の違いによって別々の生き方を選ぶ。功利主義なウルと規範主義なベン、このように手塚氏は物語の中で主人公とシャドウの対比を描くことは多い。
犬嫌いな僕は割り引いて読んでしまうためか、手塚氏がアニメ化のためパイロット版を二度も作るほど執着する意味がわからなかった。

【本】『海のトリトン(全4)』手塚治虫

この作品の中には絶対的悪が存在しない。敵組織も人間も立場が違うから主人公と対立するだけで、みな矜持を持ち、自分のルールに忠実に生きている。
はっきり勧善懲悪にならないそのグニャグニャとした世界の割り切れなさに象徴的な現実を、自分のルールに忠実な(筋の通った)登場人物に手塚氏の理想を見る。

【本】『奇子(全3)』手塚治虫

今読み返してみると、近親相姦のどろどろとした世界すらも文学的にまとめ上げてしまう、手塚氏の物語る腕の達者さが、教科書的、優等生的。
一般に言われるほどエグくない。
『楡家の人びと』『百年の孤独』『カラマーゾフの兄弟』……他の家系ものを読むとその都度、手塚氏の受けた影響と相違が新しく浮かび上がってくる楽しみがある。

【本】『火の鳥(1~2)』手塚治虫

「黎明編」猿田彦の鼻が大きくなったのはこの時代にハチに刺されたからで、生まれ変わってもつきまとう鼻が大きくなる業(カルマ)、謎すぎる!
モチーフとしての火の鳥(テーマ)が物語と絡み合い、昇華するその巧みさはシリーズの中で随一。史実、神話の織り交ぜ方もハマっているし、一〇代の初読時より楽しんで読むことができた。

【本】『火の鳥(3)』手塚治虫

「未来編」猿田博士がムーピーを実験して得たデータが何も生かされていない。そもそも火の鳥が主人公に永遠の命を与える意味がわからない。もしそうするなら、風化した肉体が元になって地球の新しい生命が生まれなければ意味が無い!
物語自体は行き当たりばったりで起伏に欠ける。しかし終わる直前からの怒涛のクライマックスと、空間と時間・因果の連鎖のテーマは手塚漫画どころか日本漫画史に残るオリジナリティと先進性。
「黎明編」と「未来編」はセットで読むべき物語だし、さらにいうと続編は全て壮大なスケールのエコー(こだま)だ。

【本】『火の鳥(4) 』手塚治虫

「ヤマト編」史実の絡め方は面白いけれど、「未来編」の続編として読むとかなり手痛い肩透かしを食らう。
輪廻を繰り返しながらも人間が上昇していくさまがあまり伝わってこなくて、また「黎明編」に引き戻されている!みたいな。

「宇宙編」一〇代で初めて読んだとき、これは推理物としてはいい加減過ぎるやろ〜と憤慨したものだし、コマ割りは斬新というより読みにくさを感じた。おそらく当時の手塚氏が新しいことをやろうとした一つの枝の先端だったのではないか。それが今となってはかえって古いが。
煉獄のような惑星で生きていくためメタモルフォーゼした人間のイメージは強烈。

【本】『火の鳥(5~6)』手塚治虫

「鳳凰編」茜丸の頭を抱くブチ。都から離れて美しい自然を眺め涙を流す我王。これを読んで感動できない奴とはわかりあうことができないと思う。
それにしてもちょっと卑怯なことをしたぐらいで未来永劫、悲惨な因果をむかえる茜丸がかわいそう。我王は素晴らしい作品を作ることができるけど大量殺人犯やんか。

【本】『火の鳥(7~8) 』手塚治虫

「復活編」『火の鳥』でこの作品がいちばん好き。
主人公が復活したとき、破損された脳を人工的に再生したため人間が無機質に見えるシーン。ロボットのチヒロと美しい自然の中でデートしている絵を人間側から引いて眺めると燃えたぎる溶鉱炉だったシーン。
何度読んでも悶えてしまうぐらい、イイ!

「羽衣編」『火の鳥』とあまり関係ない話。手塚氏の漫画、物語作りの達者さがじゅうぶん過ぎるほどわかる。

【本】『火の鳥(9~10)』手塚治虫

「望郷編」この全集版が、僕が持っていた角川ハードカバー版よりエピソードが多く、いくつかの演出が根本的に違うことに驚く。版によってここまで描き直すものなのか。
ちなみに個人的に僕は「望郷編」はグダグダなうえ感情移入できる相手がいないのであまり好きくない。

【本】『火の鳥(11~12) 』手塚治虫

「乱世編」あらかじめ決められた物語の構成(プロット)を守るためキャラクターの主体性が犠牲になっているように見える。
確かに歴史・運命は抗えないものだがそれは後で俯瞰したときにしかわからないことで、あくまでもキャラクター自身が歴史を作るのだ。そう見えないということはキャラクター造形がズレているか、歴史が間違っているかどちらか。
火の鳥「黎明編」と「未来編」の奏でる大きなエコーが途切れかかっている?

【本】★『137億年の物語 宇宙が始まってから今日までの全歴史』クリストファーロイド

宇宙が始まってから現在までの一三七億年の歴史をを二四時間(一日)で区切って書かれている。本全体の五分の四が残り一秒(人類の文明の一万年)の記述に費やされており、現在に近づくほどページ記述の密度が跳ね上がっていく。
そういえばこのまま進めば未来はすごいことになる……と物心ついたころ僕はワクワクしていたのだが、火星に人類が到達することもなく人工知能が生まれることもなく、しかしネットや携帯というものが発達して、現実というものはすごいとすごくないの間の煮え切らないところに落ち着くのだな……と思った次第。

メモ:
●カモノハシは哺乳類で唯一、電流センサーを備えている。くちばしの中。

●人口が四七五人を下回ると近親交配のおそれ。アボリジニは五〇〇から八〇〇人単位の村で生活。

【本】『ヨハネスブルグの天使たち』宮内悠介

簡易な文章なのに、それがまとまって段落になると頭に入ってこない不思議さ。
状況説明をするとスタイリッシュさを削ることになることはわかるが、スタイリッシュさを残してわかりやすくできなかったのかな。
あたかも当然のことのように状況説明を飛ばして物語だけは進んでいくから、置いてけぼりの不安な気持ちが最後まで残った。

【本】『ケン1探偵長 (全2)』手塚治虫

『透明人間』が一番映画的で面白かった。その他の話は全体的にコマ割りが細かくて読み進むのに苦労する。
途中、唐突にコマが大きくなっているページが続く。単行本化に合わせて修正したものと思われるが、話の整合性そのものより、線が太くなったり細くなったり切り抜いた修正部分のズレが目立ったり絵柄が変わったり、修正したことで目立つ絵のアラが気になって仕方がない。

【本】『おれは猿飛だ!(全2)』手塚治虫

あとがきより、連載当時すでに忍術と妖術をごっちゃにした忍者モノは(連載が)「終わってホッとするほど」「アナクロニズム(時代錯誤)のはなはだしいもの」だったということだが、よほど不本意だったのか作品発表から二〇年後の全集刊行の際に流行りを取り入れて描き直し、「奥の手ジョーズの術!」「南蛮秘術エイリアン!」「忍法スターウォーズ!」と登場人物に叫ばせている。
それがかえって「アナクロニズム(時代錯誤)のはなはだしいもの」を際立たせていると僕が思ったこの全集版が出てからさらに三〇年後のいまの話。

【本】『ザ・クレーター(1)』手塚治虫

第五話「生けにえ」はアンブローズ・ビアス「アウルクリーク橋のできごと」から着想を得たものだと思われる。
処刑される寸前の男が川に飛び込み息つく暇もない逃走劇の末、愛する妻のもとに辿り着いて抱擁する。しかしそれはアウルクリーク橋の横で今まさに処刑された男が一瞬の間に見た夢であった……というもの。
手塚氏の「生けにえ」は舞台を現代に換骨奪胎したうえ、古代アメリカというエキゾチックなパウダーをふりかけている。

【本】『 ザ・クレーター(3)』手塚治虫

ラスト「クレーターの男」が印象深い。
月にロマンが残っていた時代だったせいか手塚氏の漫画には比較的月を舞台にしたものが多い。月から仰ぎみる地球のイメージはレイ・ブラッドベリ『火星年代記』からの着想だろうか。無常感から光瀬龍氏の宇宙ものを思い浮かべたりもする。

【本】『ユフラテの樹』手塚治虫

あとがきより、「高い次元で描いた作品ではありません」のでタイトルの由来は「今は思い出せません」とのこと。
推測するにタイトル『ユフラテの樹』はおそらくチグリス・ユーフラテスからメソポタミア文明のシュメール神話の「世界樹の伝説」、エデンの園の「知恵の林檎」、イエス・キリストの「奇跡」、と当時はやっていた超能力をつなげたのではないか。
先の展開を考えずに適当に連載をはじめながら考えたらしいが、綺麗にまとめてしまう手塚氏の漫画力は尋常でない。しかも当然ながらちゃんと面白い!

【本】『ドン・ドラキュラ(全3) 手塚治虫

リアルタイムでアニメを観たことがあるのだが、『手塚治虫のドン・ドラキュラ』とオープニングが始まった時点で生理的に「ダサ!」と感じすぐにチャンネルを替えてしまった。
かように小さい子供にはわからない微妙なところを狙っていたと思う。ちなみに一〇代後半で読んだらかなり面白かった。それから二〇年以上経っていま読み返してみたらさらに面白かった。
ドラキュラのひとりむすめチョコラがかわいい。

【本】『マグマ大使(全3) 』手塚治虫

僕の持っていた旧単行本とこの全集版では後半の内容が全く違う……なんとアースやゴアよりも偉い宇宙の創造主カオスさまが争いの調停者として登場!
カオスさまが巻来功士氏の『ゴッドサイダー』に登場する「超高次元の魔神」みたく人間臭すぎて、旧単行本よりスケールが小さくなっている。
これはこれで面白いけどちょっと苦笑。

【本】『イソップ寓話の世界』中務哲郎

「人体のすべてが今と違って心を同じくせず、体の各部分がそれぞれ自分の考えと自分の言葉を持っていた時のこと」という寓話の言い回しが興味深い。
そんな時代に戻ったら自分のチンポとブレインストーミングできるのかしら。

人間の歴史として残っていないほどの過去はもっと混沌としていたから、動物や植物やはては自然物や季節が人間のように話すのも無理はない、という考え方なのだろうか。
あるいは聖書でイエス・キリストがしばしばたとえ話をするように、そういうレトリックでものを語る時代だったのか。

【本】『鉄腕アトム(1)』手塚治虫

「アトム大使の巻」地球そっくりに進化した惑星の宇宙人(船団には地球人類と同じ人口)が、地球に押し寄せてくる。問題を解決するため中立の立場であるロボットの「アトム」を会議に参加させる……ハイブローな内容のSF。後のロボットプロレス要素がない。
「気体人間の巻」成層圏に住む空気状の生物が人間に乗り移り、人間を奴隷化しようと暗躍する。ラストの情け容赦のない解決法の後、アトムの「もしあなたの近くにわるい心の人がいたら……それはきっと煙にとっつかれているんです ほんとはいい人なんですよ」とことん空気人間を悪く言い様に笑ってしまう。

【本】『鉄腕アトム(2)』手塚治虫

「海蛇島の巻」頭がなくなっても空を飛ぶし喋るし、アトムの頭の役割ってかざり?
「人工衛星SOSの巻」アトムのクラスメイトが「僕のおとうさんは人工衛星の信号係だよ」と言ったばかりに「やーい やーい 人工衛星の子やーい」といじめられる意味がわからない。この未来世界観では底辺の仕事みたいだが、人工衛星に携わる人が差別される理由が思いつかずひたすら不条理。
「ZZZ総統の巻」敵ボスの仮面を剥ぐとこの物語の重要人物●●●の顔が! こういうどんでん返しかと思って読んでいると、「いや…おれは●●●のふたごの兄だ」ってそれこそ何の伏線もない!