こんな本を読んだ!」カテゴリーアーカイブ

本を読むことはあまり得意じゃないのですが、頑張って読んでいます。

【本】『あなたは今、この文章を読んでいる。:パラフィクションの誕生』佐々木敦

メタフィクション、パスティーシュ、パロディのようなものが好きで、筒井康隆氏を始めとして相当読んできたと思う。

パラフィクションは、そのメタフィクションから派生したものらしい。
冒頭で書かれているが、著者自身もパラフィクションという事象を完全に把握しているとは言い切れないようだ。
現在進行中であるところのパラフィクションの萌芽をいち早く取り上げた、ということか。
この本でまだ全貌が明らかになっていないが、パラフィクションはそれまでのメタフィクションと違い、作家だけで完結しない読者を絡めたアプローチのようだ。

ホニョムホニョムがへチョムへチョムのような、コクーンがパージするのはパルスのファルシによってルシにされた……みたいな話だ。

ここで例題として取り上げられているテキストの半分近くはタイトルを僕は聞いたことがなかった。
仕事にかまけて読書できない期間が続き、そもそもメタフィクションの今の環境自体がわからない。
それを知らないとここに書かれていることを理解することは難しい……
勉強不足を恥じて、ここに書かれている本を読んでいこうと思う。

【本】【漫画】『地球戦争(1~3)』小原愼司

今まで僕は勉強不足のため小原愼司氏を寡聞にして知らなかった。
去年、かろうじてトニーたけざき氏(画)で小原愼司氏(作)の漫画『星のポン子と豆腐屋れい子』を読んだのみ。

初めて本を開き絵を見て大層驚いた。
新人かと思ったらそうでもないようだ。
達者とは言えない絵……どう捉えたらいいのか最初はわからなかった。
なのにこれだけキャリアがあるということはこの絵にも意味があるのだろう。
読んですぐ作品世界に引きずり込まれていく。

キャラクターが生きている。
設定がいまどきの子供受けするかはわからないけれども、これは紛れもなく少年漫画の面白さだ。
しかも子供向けで終わらず大人でも楽しめる、万人向けの、普遍性を持った面白さ。
絵は確かに達者でないけれども、きっちり描かれていないことによって補完させる想像の余地が生じる。
そういう意味ではこの物語にこの絵は合っている。

想像の余地と言ったが、この物語はまだ始まったばかりで描かれていないことがたくさんある。
しかし、その時点で伝えるべき情報を作者が惜しげも無く見せ、能動的なキャラクターが真実を探そうと動くので、読者にストレスを感じさせない。
読者が知りたいこととキャラクターが知りたいことがちゃんと一致している。

先が読みたいという衝動が湧いてくる、久々に(子供の頃思っていた)漫画らしい漫画を読んだ。
小学生のころ、H・G・ウェルズ『宇宙戦争』や ジョン・クリストファー『トリポッド』を読んだワクワク感を思い出す。

【本】【漫画】『シドニアの騎士(1~2)』弐瓶勉

一〇年ほど前、絵に惹かれて弐瓶氏の単行本『BIOMEGA』を表紙描いした。
スタイリッシュな絵、意味ありげなタイトルやキーワードに魅力を感じた。
しかし絵と物語の個性が強すぎて何が起こっているのか一読で把握しがたく、困惑した。

一〇年前振りにまた弐瓶氏の今作を読んで、僕にとって難解なことに変わりはなかった。
なかなか手のうちを見せてくれない。
それは絵も物語も同様で、絵は大きく俯瞰で見せてくれない、物語は進行中の情報しか見せてくれない。
情報を強力な弐瓶勉フィルタで厳しく取捨選択している。
僕の思う、絵とストーリーが比例しているタイプの作家。

こんな面白い設定かつ好きになりそうなデザインやガジェットで満ちているのに、作品世界に入り込めず悲しい。
その悲しみは、いまプレイ中のFF13に対して僕が思う気持ちと共通している。

【本】『エスケヱプ・スピヰド(2)』九岡望

今月初めに読んだ第一作目が面白かったので続きを読んでみる。
前作の物語設定をうまく膨らまして繋げている、今作も非常に達者な印象。

市販の材料から極上の創作料理を再構成できる凄腕料理人のようだ。
既成品を完璧に作る腕に長けている。
ワガママを言うことが許されるなら、さらに作家性みたいなものが見えてくればいいのだけれども。
既成品もいいけれど、この達者な作者が内面で醸造、発酵させたものも読んでみたい。

【本】『エスケヱプ・スピヰド』九岡望

【本】【漫画】『大好きが虫はタダシくんの』阿部共実

冒頭の『乙女心』『ドラゴンスワロウ』あたりはボケとツッコミがはっきりしたギャグ漫画。
ラスト表題作『大好きが虫はタダシくんの』あたりはガラリと作風が変わり、マイノリティーに属するキャラクターから見た生きにくい現実を描いた、比較的リアルな漫画。
一見すると作風が異なるけれども、細かく読んでいくと両方共コミュニケーションの齟齬についてが物語の主眼(および感情的な起点)なので、同じことを違う切り口で描いている同工異曲のようなものなのかもしれない。

【本】【漫画】『キーチVS(8~11)』新井英樹

先日ようやく最終巻を読む機会を得たのでさかのぼって読み返す。
結局、最後まで読んでも主人公のキーチが具体的に何をしたかったのかわからなかった。
僕にとって新井英樹氏の漫画は難しい……どう捉えたらいいのかわからない。

大学生の頃、後輩が僕にこう言った。
「漫画を描こうと思っていたんですが、『ワールド・イズ・マイン』を読んだらそういう気持ちがなくなるぐらいショックを受けました」

『ワールド・イズ・マイン』も『キーチVS』も抜群に面白い漫画だ。
新井氏は連続して興味を引く (プロットとしての) クリフハンガー的な面白さを熟知していて、読みだすと途中で本を手放すことができなくなる。
そしていつも主人公の破壊衝動のようなものや鬱屈した感情に圧倒される。
最後は、圧倒的な迫力の前に何が起こったのか把握できずに茫然としてしまう。

おそらく新井氏は物語中の「主人公が社会と対立して起こす化学反応」に興味があって、その過程の先に何が起こるかは目的としていないのだろう。
『キーチVS』のクライマックスは、震災やオウム信者の逮捕など時事ネタが取り入れられ、臨機応変に物語が変化していることがわかる。
作中の社会だけでなく現実の社会とも化学反応しているのだ。

結論を見るために描く、その行為自体が重要。
僕の文脈にはない思考だから捉えにくい。

【本】【漫画】『ASTRONAUTS(全3)』沖一 (作画) 史村翔 (原作)

おそらくロケット打ち上げが日常化している近未来の物語だが、宇宙でやっていることが今と変わることなく、実験や衛星のメンテナンスだけ、商業/冒険目的のミッションがない。
八〇年代初頭に宇宙飛行のリアルを描いた漫画と変わらない現代なんて、そんな未来(二〇一五年)なんてイヤ過ぎる!
……と昔から今に思いを馳せる。

【本】『大伴昌司《SF・怪獣・妖怪》秘蔵大図解』紀田順一郎

SFの章、「宇宙の秘境魔境50」にオオウケする。

(19)ゴリラうしの急襲
上半身がゴリラ、下半身がうしの巨大怪物。かに星雲の宇宙人にあやつられて宇宙船をおそう。

(36)けんかずきのねこ宇宙人
地球から3000光年離れたところに、ねこ宇宙人のすむ星がある。ねこ宇宙人は、体長2.5メートル、けんかずきで、いつも戦争をしている。

(44)子どもを産む星
生きている星の中には、子どもを産む星がある。子どもは、流れ星になって、ぞろぞろと親星のあとについて宇宙をさまよい、宇宙線をすって、500年経つと、親星より巨大になる。

絵とキャプションが傑作。
具体的な場所と、具体的な数字がリアリティを担保している。
……というかここまで具体的なウソをなぜ自信持っていうことができるのだろう?
想像力にブレーキがない強さ……僕は中途半端な自分の知識が邪魔をして、弾けることすらできない。
オオウケしているだけでなく反省することしきり。

【本】【漫画】『デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション(1)』浅野いにお

物語は巨大宇宙船が東京上空に現れ、それが日常化した世界。
大震災後、非日常が日常に変わった風景を巨大宇宙船に象徴して描く。

重厚なアナログ風タッチの背景。
どこまでがデジタルでどこまでがアナログか判別しがたい。
デジタルとアナログの新しいアプローチ、融合。

一方で擬音やタイトル、枠線など同時に漫画という構造を解体する作業も行っている。

物語、絵、表現……幾層のレベルの新しいことが絡み合って描かれたこの作品は、間違いなく現代漫画の最前線だ。

【本】【漫画】『廃墟少女』尚月地

自分のフェティッシュな嗜好に対して忠実に向き合う作者の姿勢に感動する。
決してひとりよがりでなく、商業的に抑えなければならない部分と折り合いをつけている。
漫画自体は僕の好みにドンピシャなわけではないが、独創的な画面作りに何度も本を開いては読み耽る。

描きたいことと、興味のないことのギャップが大きい。
物語的にも緻密な設定を作るところと描かないところの差が激しい。
描きたい背景と、手前のキャラクターの中間が全くの空白なのに違和感を覚えさせないテクニック……あるいはそういう画面作りの妙というべきか。
漫画家の絵と物語のこだわりは比例する……僕がいつも思うこと。

あとひとつ、デジタルで仕上げているのにアナログっぽい画面作りが素晴らしい。
ゲームの話に脱線するけれども、
FINAL FANTASY6から7へ移行するとき(スーパーファミコンからプレイステーション)、3DCG中心になって天野喜孝要素が消えていった。
今思うとハイスペックなマシンで何故2Dを極めるような方向に進化しなかったのか。
アナログ的な天野喜孝要素を活かす方向だったら、現在の日本のゲーム界でどんな表現を観ることができただろうかと夢想する。
あれが日本のCGの分かれ道だったと思う。

逆に、アニメ監督の高畑勲氏は『ホーホケキョ となりの山田くん』『かぐや姫の物語』で、(いかにもCGアニメらしい表現ではない)CGを使うことによって本来の絵の持ち味をより活かす、かえって新鮮な表現を創りだした。
それをこの漫画の中に見る。

【本】【漫画】『ウルトラヘヴン(1~3)』小池桂一

僕が高校生のとき、小池桂一氏の単行本『G』を購入していたが、ほとんど台詞のない物語で、好きな部分もあるが全体的にハードルが高く理解できなかった。
同じく僕が学生時代に好きだった漫画家板橋しゅうほう氏とタッチが似ている。
描線、ハッチングの先端が破線になって消えていくタッチ。
というより小池氏と板橋氏が共通して影響を受けているのがバンドデシネ(フランスの漫画)の作家メビウス氏ということだろうか。

漫画本流っぽくなくて、見慣れない表現(懐かしい表現、前衛的な表現)が入り交じる。
ずば抜けたコマ割り、絵の達者さ。
連鎖するイメージのスムーズさ……小池氏はおそらく絵の類似性に注意深いのだろう。
メビウス氏に似てはいるがベタがほとんどなく、白っぽい画面。
どちらかといえば大友克洋氏の漫画キャリア中期でSFを描いていた頃の画面と色味が似ている。
大友氏にくらべると質感の描き込みが多い。

【本】『うどん キツネつきの』高山羽根子

タイトルや表紙からして面白そうで、実際、読んでいて実に肌に合う読み心地。
書かれている言葉も難しいわけではなく筋も難しくない。
ところが、物語が閉じられたときになってはじめて自分が理解していなかったことに気づく。
いくつかある短編のすべて最後にはぐらかされてしまった。

ずっとお互い好きだと思っていた(つもりだった)女子に告白したら振られたような、悲しい気持ち。

付記:個人的には「母のいる島」が一番面白かった。

【本】【漫画】『うしおととら(全33+外伝)』藤田和日郎

一年前に初めて読んだとき、主人公が槍から手を離したら「とら」に食べられてしまうという設定に引っかかってしまい、どうしても読み進めることができなかった。
寝ている時もずっと槍を握っているということ? 
学校の授業中も握ったままっておかしいし、乗り物には持ち込めないだろ……
おなじ少年漫画の『DEATH NOTE』なら主人公が他人にノートを見られることに神経質になるがあまり、部屋のドアにシャーペンの芯を差してまで人の出入りを警戒するのに、よりによってずっと槍を持ったままって……それはない!

そんなこんなで放り出して一年、一五年年末にもう一度挑戦してみる。
読み進めるうちに、リアリティラインを低くすることで物語るやりかただということに気づく。
(子供の頃ならもっと素直に入り込めたのかもしれない)
おおまかな物語の設定や展開をこの範囲のどれかにするかというあたりぐらいはつけているのだろうけれども、おそらく最初から細かく設定しているとは思えない。
しかし、物語のアバウトさが隙間を埋める広さ(懐の広さ)になっている。
後半の怒涛の展開で物語の伏線が埋まっていくさまはテトリスで棒が次々と突き刺さっていくがごとく、このリアリティラインの低さが実に生かされている。
伏線を最終話までにちゃんと回収する、読者に誠実な作家の姿勢。

前回読んだときは絵に対してもリアリティラインの低さにも拒否反応を感じて入り込めなかったのだけれども、今回絵に関しても考え方を大幅に改めることになった。
「とら」がアバウトな造形だからこそ、想像の部分が広がるのだ。
この漫画は物語と絵のこだわりが正確に比例している……という好例で、絵に幅をもたせているから、(槍に巻かれている布や書かれている文字など)いろんな要素を後から入れることができる。
最初から設定をきっちりし過ぎると物語が進むにつれ、違和感が生じたりそれがしばりになったりする。

絵と物語のアバウト……逆に最初から変わらず強いものはなにか?
キャラクターだ。
つまりは、キャラクターから絵と物語を逆算して作るという少年漫画の王道に(小手先のテクニックに頼らることなく)この漫画がまっすぐだということ。

【本】『エスケヱプ・スピヰド』九岡望

非常に達者な印象。
ガジェットもキャラクターも申し分がない。物語も破綻がない。
こういうSF設定のラノベが好きな読者にドンピシャ、おそらく僕も小中高生時代に読んでいたらはまっていただろう。

そのぶんあまりに予定調和が過ぎて驚くような展開はない。
FF8のような、既存する概念の延長線上でこういうものとして(ツボは押さえているけれども)
そのままのものを作ったような感じだ。
しかしまだ作者のラノベ一作目、これ以降から深みのある世界観や強い作家性が生じていくのかもしれない、
しばらくは続編を追って読んでいくつもり。

【本】【漫画】『へうげもの(1~8)文庫』山田芳裕

弱肉強食度が有史以来もっとも高い戦国時代において、強さでない、価値観を別に求める強さという、価値転換に素直に感心。
連載開始直後に二巻まで買ってからは中断していたので、もっと早く読めばよかったと後悔する。
ラスト、まだ物語の途中なのにブツッと切れるように終わる。
いわゆる漫画の終わらせ方という既成概念にとらわれない衝撃的なラストに茫然とする。
しかし後で調べてみると、文庫本が出た段階では全八巻と書いていたのだが、連載はまだそれと関係なく続いているみたいで全然完結していなかった……
前衛的な表現を駆使するから、ラストもそういう感じで終わらせたのかと思った!

【本】『ニルヤの島』 柴田勝家

年末から読み始めたのだが、どうも設定や物語が飲み込みづらく、頭に入らず四苦八苦。
敷居の高さに挫けそうになるが、何度も途中から読みかえし理解しようと努力する。
五日ほどかけてやっと読了したけれども、結局、意味がわからない。
物語以前に、根底にある世界観、価値観、哲学のようなものが僕が普段見聞きしていることと共通項が少なく、とっかかりを見いだせなかった。
理解するためもう一度読み返すことも考えたが、とりあえず今の僕の読解力では歯が立たないことを素直に認め、また何年後かに再挑戦する……ことにする。