元マフィアの一家がフランスの片田舎に引っ越してくるドタバタを描いている。イメージとしては永井豪氏『あばしり一家』。
ソツなくまとめている。
キャラクターは過剰だが行き過ぎてはいず、時折設定がひっくり返るが破綻しない程度に抑えている。
説明がなかったことは後で誰かが説明してくれるので、行間を読まなくていいから楽。
近所の上映会のシーンは笑った。ロバート・デ・ニーロが主役でスコセッシが製作だからできる遊び。
逆に言うと予定調和すぎて大きなカタルシスに欠ける、記憶に残らないが楽しい印象だけはあるヨーロッパ・コープいつも通りの製作映画だった。
「こんな映画を観た!」カテゴリーアーカイブ
【映画】 『X-MEN:フューチャー&パスト』:ユナイテッド・シネマとしまえんで鑑賞
【映画】『言の葉の庭』
雨の日、授業をサボって公園へ行く少年が女性と出会う話。
私小説的(?)な身の回りのことと、SF的なセンス・オブ・ワンダーが、『ほしのこえ』ではぴったり符合していたけれども、それ以降の作品はその二つがちぐはぐに分離していったように思える。『ほしのこえ』では思わず涙を流してしまった自分だが、それ以降の新海誠作品はあまり感心しない。
特にSF的なものの奥行きの浅さには「背景と同じくらい興味を持ってくれよ!」と叫びたくなるほど。
かと言って今作のような私小説的なものにも深みがあるかというとそうでもなく、背景(情感)への異常なまでの執着一点がこの人の欠点全てを目眩まさせている、と僕の中での結論。
本当にビックリするぐらい背景は繊細に描かれていて今まで僕が思っていたアニメのリアルさの分水嶺をひとつ越えたな、とは思ったが、逆に言えばこの映画から「そういう作画ができます」というプロモーション以上の価値を見出だせかった。
あと、そこまで繊細な割に色使いそのものはラッセンとかヒロ・ヤマガタを彷彿とさせるようなわかりやすさで、スタイリッシュさや侘び寂びからは秒速五メートルで遠ざかっているような印象。
【映画】『シュガーマン 奇跡に愛された男』
七〇年代初頭にアメリカでデビューしたが泣かず飛ばずで消えた歌手「シュガーマン」の曲が、何故か南アフリカで反アパルトヘイトのシンボルとして爆発的にヒットしていた……というドキュメンタリー映画。
まあ僕のことだったら知らないところで自分の漫画がヒットしていたらかなり複雑な気持ちになるだろうけど(経済的にもチヤホヤ度的にも)、そもそもアフリカでヒットしたこと自体が人生のおまけ(「シュガーマン」本人も人生を二度生きたようだと語っている)のようなものだから……いや、やっぱり僕のことだったらむかついてるかな。
いや、
「誰だ海賊版の金をパクった奴は! 伝説の俺をもっとチヤホヤしろ!」
ってわめくような人じゃないからああいう歌詞を書くことができて、ああいうところで聴いたからこそあの歌を心の糧にする人が生まれたってことで、やっぱりそれ自体が必然か。
僕も謙虚にならなければ……そしてそういう漫画を描いて地球の何処かでヒットしているかもしれないという幻想を胸にこれからを生きていこう。
【映画】『X-MEN:ファースト・ジェネレーション』
現在上映中『X-MEN: フューチャー&パスト』の予習で鑑賞。映画『X-MEN』シリーズそれまでの前日譚、プロフェッサーXとマグニートーの出会いから生き方の違いより決別する過程を描いている。
池袋の某映画館で観たとき、どういうトラブルかわからないけれども全編映像が二重にぶれていて(しかし3D上映でない)、腹立たしくて仕方なかった。
それを差し引いてもドキドキハラハラした印象だったから相当面白かったに違いない、と思い出補正がどうなっているのか確認してみたが、意外と派手なシーンばかりでなくメリハリを効かせてお金を節約している印象だった。
前回観たときは、プロフェッサーXがマグニートーの「一番美しい思い出」を蘇らせるシーンで思わず泣いてしまったのだが、それは控えめなのに効果的な演出でやっぱり今回も涙がボロボロ。
派手なシーンもあるが、そういう地味によく出来た演出を積み重ているから、全体的にメリハリがあっていい印象なのだろうな。
【映画】『英国王のスピーチ』
どもりの英国王が話し方先生にしゃべり方を教わる、実話をもとにした映画。
以前、「『英国王のスピーチ』の真実(性格なタイトルは失念)」というドキュメンタリーを観ていると、そのモデルになった先生に話し方を習った生徒がインタビューで当時を語っていたのだが、全員とんでもないどもりで何を言っているのかさっぱりわからなく
「治ってへんやん!」
と思ったものだった。
映画の中の英国王も、ある程度治ったとはいえスピーチ自体はどもり寸前、スリリングでとても危ういものだった。
(スピーチが見せ場ってのもすごい話だ。『スター・ウォーズ 帝国の逆襲』でいえば、ダース・ベイダーとルークがライトセーバーで戦うようなシーンだよ)
しかし同時に今回この映画を観て考えを改めた。
「きっと、ドキュメンタリーにでていた人たちはその先生に会うまでもっと凄まじい超弩級のどもりで、それでもまだマシになったほう」
だったのだと。
【映画】『ラッパー慕情』
ラッパーを目指す一男、草野球に熱中する二男、漫画家を目指している三男の三兄弟を中心に織りなす人間模様。
みんな駄目すぎて、刹那的で、目先のことしか見えなくて、ずっともがいているしかなくて、非現実的からまた現実に振り子がもどるように進行していく。
僕はこの映画に心を鷲掴みにされた。
ずば抜けた美男美女が出てこないから、自分が画面に取り込まれたような錯覚に陥るような地続き感。
セックスシーンも本当にその場で撮影しているかのようにリアル。
独特のカット割り。癖はあるが僕はスピーディーに感じる。
むしろ、こうしたい気持ち、僕はわかる!
(ような気がする)
特撮のいい加減さ、なのに回想シーンを作りこんだりふとカメラが引いて山の上から道を歩く主人公を撮影したり、金はないけれど時間をかける作り込みならどこまでもやるという気概を見せられたような、画面のどこまでも演出が続いているかのような……
僕がこの映画に対して強く感情移入したその対象は、映画の内容そのものよりこの映画に対してのスタッフの想いなのかもしれない。
【映画】『追憶』
【映画】『アルファヴィル』
【映画】『ペット・セメタリー』
【映画】『アマデウス』
「モーツアルトを殺したのは私だぁ〜!」と叫ぶ冒頭。しかし話が進むに連れミステリ的な殺人の話ではなく、そういう比喩だということがわかってくる。それを「自分が殺した」というにはお前、牽強付会過ぎるだろ。
『ムーラン・ルージュ』を観たときも冒頭でユアン・マクレガー自身は嘆き歌かもしれないけどお前の個人的な話でこちらには関係ないだろ!と思ったのだが、似た印象。
モーツアルトの才能を妬み羨む宮廷のベテラン音楽家が嫌がらせをするが、音楽の力によって打ち負かされる……の繰り返し。
つまらないかというとむしろそうではなく、『アラビアのロレンス』か!というぐらいの長さ一八〇分ディレクターズカット版だったが、長さを感じさせないほど面白くはあった。
【映画】『愛は霧のかなたに』
二、三年前からTSUTAYA DISCASを利用している。興味をひいた映画をスナック感覚でサクサク予約、観終わるたび新しいDVDが送られてきて探す手間いらずで重宝している。
しかし何でもかんでも予約し過ぎて溜まった未鑑賞の映画が二〇〇本ほど、もはや送られてきても何故自分がこれを借りようとしたのかわからなくない。
この映画も送られてくるまで恋愛映画と思っていて、パッケージの、マウンテンゴリラを抱きしめるシガニー・ウィーバー氏の写真を見てギャフン! 霊長類観察に命をかけた女性生物学者の実話を映画化したものだった……
危機に陥ったとき流れる音楽が電子音なのが八〇年代っぽい。ピコピコピコピコ♪
最初はどうしても主人公に感情移入してしまうから、自然保護区に住むゴリラを執拗に襲い続ける現地人に怒りが向けられる……が、よくよく考えてみると、どうして現地の人がそうせざるを得ないのか、という視点がすっぽり抜けているような。
ゴリラ狩りを禁止したり許可したりが行き当たりばったりの政府なら、現地人はゴリラを密猟することがいけない理屈もわからないだろうし、そもそも地元に産業がない。
この映画で描かれている白人は自分の気持ちを押し付けるだけで、どうして彼らがそんなことをするのか根本的に理解しようとしない。日本のイルカ漁に反対してシー・シェパードが和歌山の太地町で行っている活動みたいなもの。
「私のゴリラを返して!」ってお前のものじゃないよ!
行き過ぎた部分も含め彼女の行動をどちらかと言えばよきこととして描いている映画の姿勢に感情移入できない。
それはともかくとしてジャングルでシガニー氏が実際のゴリラの群れと触れ合うシーンはスリリングだった。映画の撮影それ自体をドキュメントとして観たい。
とくに威嚇して雄叫びをあげるボスゴリラの迫力ときたら……と思って調べたらこちらのほうは人が入ったぬいぐるみの特殊効果。これはこれですごい技術だ!